2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560109
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
西村 太志 徳山工業高等専門学校, 機械電気工学科, 教授 (70189314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森野 数博 徳山工業高等専門学校, 機械電気工学科, 教授 (90099870)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 球状黒鉛鋳鉄 / 疲労 / 高サイクル疲労 / ラジカル窒化 / 摩耗特性 / 残留応力 |
Research Abstract |
本研究では高強度・高じん性であり、静的特性に優れている球状黒鉛鋳鉄に対してラジカル窒化を適用し、その疲労特性に対するラジカル窒化の効果を把握し、ラジカル窒化による球状黒鉛鋳鉄の疲労強度、耐摩耗性向上を実現し、高強度で高信頼性を有する球状黒鉛鋳鉄を開発することを目的に研究を行っている。平成23年度はJIS B型Yブロックに鋳込んだYブロック底部から試験片を加工し、アンモニアと水素混合ガス中において530℃で10時間のラジカル窒化処理を施し、改質層の評価、摩耗試験および高サイクル疲労試験を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 ラジカル窒化を施すことにより、拡散層は表面から150μm程度の深さまで生じており、表面には2~3μmの化合物層が生成されていた。また、窒化はフェライト部のみに関与しており、表面の化合物層はHV740と硬く、拡散層は200μm程度内部まで傾斜的に硬化しており、表面直下ではHV500と母材の約2.5倍の硬さであった。 球状黒鉛鋳鉄は片状黒鉛鋳鉄に比べると鋳放し状態でも摩耗特性に非常に優れている材料であるが、摩耗試験の結果、ラジカル窒化を施すことによる摩耗特性の変化はみられず、窒化が摩耗特性に悪影響を及ぼさないことが明らかとなった。 小野式回転曲げ疲労試験機を用いて高サイクル疲労試験を行った結果、ラジカル窒化材の疲労強度は大きく向上し、球状黒鉛鋳鉄の疲労強度改善方策としてラジカル窒化が効果的であることが明らかとなった。また、疲労強度が向上した理由は、窒化による表面硬化および圧縮残留応力の存在により表面き裂の発生が抑制されたことに加え、低応力域ではき裂発生位置を内部に移動させたためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画のうち、ラジカル窒化処理が間に合わなかったため窒化層厚さを変化させた試験を実施できなかったが、それ以外は計画通り進展している。また、平成24年度に実施する予定であったYブロック上部より切り出した試験片を用いた実験をすでに開始しており、鋳造欠陥の大きさを念頭に置いた検討を行っている。そのため、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、本年度実施できなかった窒化層厚さを変化させた疲労試験を実施し、き裂の発生・伝ぱに着目し、微視的観点から破壊機構を解明するとともに、疲労および耐摩耗性、耐はく離性に対する最適窒化条件を明らかする。 また、鋳造欠陥の大きさを変化(大きく)させるため、Yブロック上部50mmの位置で幅25mm、高さ30mm、長さ190mmに切り出した材料に関してアンモニアと水素混合ガス中において530℃で10時間のラジカル窒化処理を施し、改質層の評価、摩耗試験および高サイクル疲労試験を行う。その際、鋳造欠陥の大きさと窒化層厚さの関係を念頭に置き、平成23年度と同様の検討を行う。 さらに、下部材と同様に、窒化層厚さを変化させた疲労試験を実施し、き裂の発生・伝ぱに着目し、微視的観点から破壊機構を解明するとともに、上部材における疲労および耐摩耗性、耐はく離性に対する最適窒化条件を明らかする。 研究成果は材料学会および機械学会にて発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度研究費は、試験片を製作するためのラジカル窒化処理代、エメリーペーパ、ダイヤモンドペースト代として使用する。また、ラジカル窒化の効果を評価するための摩耗、スクラッチ試験および残留応力測定の機器使用料を計上している。さらに、データ取得用のデータロガーを購入予定である。 平成23年度の次年度使用額は、本年度の研究計画で間に合わなかった窒化層厚さを変化させた研究に用いる試験片の研磨に使用するエメリーペーパ、ダイヤモンドペースト代およびラジカル窒化処理代として使用する。 学会発表用の国内旅費も計上している。
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