2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560109
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
西村 太志 徳山工業高等専門学校, 機械電気工学科, 教授 (70189314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森野 数博 呉工業高等専門学校, その他部局等, その他 (90099870)
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Keywords | 球状黒鉛鋳鉄 / 疲労 / 高サイクル疲労 / ラジカル窒化 / 残留応力 / 硬さ |
Research Abstract |
本研究では高強度・高じん性であり、静的特性に優れている球状黒鉛鋳鉄に対してラジカル窒化を適用し、その疲労特性に対するラジカル窒化の効果を把握し、ラジカル窒化による球状黒鉛鋳鉄の疲労強度、耐摩耗性向上を実現し、高強度で高信頼性を有する球状黒鉛鋳鉄を開発することを目的に研究を行っている。平成23年度は表面に2~3μmの化合物層を生成する条件でラジカル窒化を施し、球状黒鉛鋳鉄の疲労強度改善方策としてラジカル窒化が効果的であることを明らかにした。 平成24年度は23年度に比べて厚い化合物層(6μm)を生成する条件でラジカル窒化を施し、改質層の評価を行うとともに、ラジカル窒化を施した球状黒鉛鋳鉄の高サイクル疲労強度に及ぼす窒化層厚さの影響について検討を行った。その結果、従来より厚い窒化層を有する球状黒鉛鋳鉄(6μm窒化材)でも鋳放し材に比べて疲労強度は向上するもの、従来の条件で窒化した材料(2μm窒化材)に比べると疲労強度は低いものとなった。6μm窒化材では表面の硬さは2μm窒化材より1.3倍硬くなっていたが、疲労においては硬い窒化層が脆性的に割れてしまうため疲労強度の低下を招いたものと考えられる。 さらに、両窒化材が鋳放し材に比べて疲労強度が向上する理由を明らかにするため、き裂の発生・伝ぱに着目し、微視的観点から検討を行った。その結果、窒化材の疲労限が鋳放し材に比べて向上した理由は窒化による表面硬化および圧縮残留応力の存在により表面き裂の発生が抑制されたためであることが明らかとなった。また、有限寿命域での疲労強度の向上にも圧縮の残留応力が有効に働いているためであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
従来のラジカル窒化条件(化合物層厚さ2μm)より窒化層厚さを厚くした材料(化合物層厚さ6μm)の高サイクル疲労試験は実施することができ、ラジカル窒化効果を明らかにすることができたが、窒化層を薄くする条件(化合物層を生成しない条件)は処理条件を決定するのに手間取り、高サイクル疲労試験、摩耗試験を実施できなかった。そのため平成24年度までの計画から遅れているが、それにかわり、平成25年度に実施予定であった小野式回転曲げ疲労試験機による超高サイクル疲労試験はすでに実験を開始している。そのため、研究の達成度としては「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までの研究によりラジカル窒化が球状黒鉛鋳鉄の疲労強度改善方策として効果的であることが明らかとなった。その際、化合物層厚さが厚くなると強度が低下したため、平成25年度は化合物層を生成しない条件でラジカル窒化を施し、高サイクル疲労試験を実施し、き裂の発生・伝ぱに着目し、微視的観点から破壊機構を解明するとともに、次の点について明らかにする。 (1)ラジカル窒化により球状黒鉛鋳鉄の疲労強度をどの程度向上できるか。(2)球状黒鉛鋳鉄に対する最適窒化条件。(3)表面硬さが高サイクル疲労強度に及ぼす影響。(4)残留応力が高サイクル疲労強度に及ぼす影響。(5)強度を上昇させる因子の解明。(6)表面処理材の疲労破壊機構の検討。 研究成果は機械学会にて発表し、論文として投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、学会発表用の国内旅費および論文投稿費として使用する。また、学会発表原稿や論文に掲載する工学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で撮影した写真を処理するためのソフトを購入する予定である。 平成24年度の次年度使用額は、本年度の研究計画で間に合わなかった窒化層を薄くした条件(化合物層を生成しない条件)の試験片研磨に使用するエメリーペーパ、ダイヤモンドペースト代およびラジカル窒化処理代として使用する。
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Research Products
(1 results)