2011 Fiscal Year Research-status Report
ゴム切削における切りくず分離過程のインプロセス観察を基にした加工誤差のモデル化
Project/Area Number |
23560111
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
寺本 孝司 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40252605)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ゴム切削 / エンドミル加工 / 加工誤差モデル / 直接観察 / 高速度カメラ |
Research Abstract |
本研究課題は,エンドミル加工による複雑形状ゴム部品の小ロット高精度加工の実現を目的としている.平成23年度においては,直刃を用いた2次元切削を対象として,切りくず分離プロセスのインプロセス観察装置のハードウエア試作と,基本となる切削モデルの検討を行った.具体的なインプロセス観察の方法として,エンドミルの自由端方向に高速度カメラを設置することにより切屑分離過程を記録した.さらに,工作物側面に画像処理用マーカーとなる印を塗布し,各フレームにおけるマーカー位置を画像認識することによりマーカーのトラッキングを行った.トラッキングした結果をもとに,切削中の工作物挙動を定量的に計測した.また,工作物取り付け部に配置した水晶式小型切削動力計により,加工時の切削力の計測を行った.加工中の切削力と工作物挙動を比較することにより,従来,金属のエンドミル加工で用いられている瞬時切削モデルを,ゴム切削に適用することが困難であることを明らかにした.具体的には,工作物挙動と切削力の位相遅れの発生が観測されたことから,粘性効果を考慮した動的な工作物挙動のモデル化が不可欠であることが明らかになった.また,加工中の観察結果により工具刃先丸みの影響が大きいことが明らかになったことから,工作物の大域的な変形挙動の分析とともに,切りくず生成プロセスのモデル化についても検討を行う必要があることが明らかになった.切りくず分離時の工作物挙動のモデル化については,金属切削において実績のある切削加工シミュレーションソフトによる推定の可能性を検討したが,金属に比べて剛性が極端に低いゴムの切削においては,通常の使用方法では数値的に不安定な結果となることがわかり,次年度以降,対応を検討することとした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では平成23年度においては,「直刃を用いた2次元切削を対象とした切りくず分離過程のインプロセス観察装置のハードウエア試作と基本となる切削モデルの検討を行う.」としていた.インプロセス観察装置については,高速度カメラによる切削加工の直接観察システムの実装が行え,加工中の工作物挙動の計測が行えた.また,平成24年度に予定してた画像処理による変位計測の一部も達成している.一方,切削モデルの検討については,当初,使用を予定してた切削加工シミュレーションソフトウエアをそのまま使用するだけでは適用が困難であることが明らかになったため,別途モデル化の検討を進める必要が生じた.汎用FEMソフトウエアに適用可能なモデルの検討を合わせて行う必要があることから,切削モデルの検討については当初の予定を完全に達成しているとは言えない.以上のように,ハードウエアについては当初の計画以上の進展をしているものの,ソフトウエアについては,新たな問題の発生による若干の遅れがあることから,総合的には,おおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては,前年度の成果を踏まえ,ゴム切削におけるシミュレーションシステムの基盤的な実装を行う.具体的には,汎用FEMソフトウエアを用いた大域的な工作物挙動の動的なモデル化を行うとともに,非線形特性の簡便な同定方法について検討する.さらに,切りくず分離プロセスののモデル化につて,金属切削用切削加工シミュレーションソフトウエアののカスタマイズと,汎用FEMソフトウエアによる切りくず分離プロエスのモデル化を並行して行う.また,平成23年度に構築した直接観察システムにズーム機能を付与することにより,切りくず分離プロセスの詳細な観察と工作物挙動の定量化を試みる.以上述べた,工作物の大域的な挙動と切りくず分離プロセスの解析結果と観察結果を総合することにより,ゴム切削における加工誤差のモデル化を完了し,シミュレーションシステムとして実装する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度当初時点で購入を予定していた,高速度カメラ用画像解析ソフトウエアについては,汎用FEMソフトウエアの導入が不可欠となったことと,研究代表者によるソフトウエア開発によりある程度の機能代替が可能であることが明らかとなったことから購入を見合わせることし,汎用FEMソフトウエアの年間ライセンスの購入を行うこととした.当初から予定している切削加工シミュレーションソフトウエアおよび汎用FEMソフトウエアの年間ライセンスで約60万円の支出を予定している.そのほかは実験用工具および被削材と研究成果発表のための旅費として支出する予定である.
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