2012 Fiscal Year Research-status Report
金属ろう材でダイヤモンドを固定したマイクロソーワイヤによるハイブリッド加工
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23560113
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
神谷 修 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60113891)
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Keywords | ダイヤモンドソーワイヤ / 固定砥粒 / 金属ろう材 / ハイブリッド / 超音波 / 放電加工 / ジェット流 |
Research Abstract |
本研究者が開発した固定砥粒型のダイヤモンドソーワイヤを用いて、切削による切断に加えて、パルスジェット流と超音波を付与して切断を試みた。即ち、通常の切削による切断に加えて、第2のパラメータを与えてハイブリッド加工することにより、切削性能を向上させることが本研究の目的である。研究者らは、これまでタングステン線にダイヤモンド砥粒を金属ろう材で接合した直径100μm以下の固定砥粒型のソーワイヤを開発して特許を取得してきた。切断試料としては、タングステンカーバイドを主体とする超硬を用いている。ワイヤの太さは100μmでありダイヤモンド砥粒の直径は約10μmである。基本的な切断加工条件は、張力4Nで試料への押し付け圧力を1.35Nとしている。この状態でワイヤを1000m走行させると、10mm厚さの超硬を約1.5mm切断加工することが出来る。初めに、歯科用のパルスジェット流を付加したが、ほとんどプラスの効果は見られなかった。一方で、超音波を付加することで加工性能を改善できる事が確認された。超音波は、試料に対して切断加工する正面に振動子を固定して発生する。クーラントやワイヤに超音波を付与しても効果はない。試料に加える超音波出力は1Wとし周波数2.3MHで照射したところ、切断速度は約30%程度速くなった。その理由は2つ考えられる。1つは、切削面をSEMで観察すると、超音波により微細な切削屑が排除されていることから、超音波による切屑の排除効果が上げられる。ふたつめは、高速で試料表面が振動することにより、ダイヤモンド砥粒の切り込みが増した事による考えられる。この成果を踏まえて、今後は超音波条件を最適にしてさらに切断効率を改良してゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、われわれが開発した金属ろう材でダイヤモンド砥粒を固定したソーワイヤによる切断特性を放電、超音波およびジェット流による条件を加えることにより切断特性を改善することである。この目的と照らし合わせて、3つの観点から自己評価する。1つは、ワイヤそのもの出来映えである。最小径で80mμmから最大径で200μmまで、異なったダイヤモンド砥粒を用いて製造することが可能であった。何れも、これまでに無い長寿命のワイヤであるためほぼ目的を達成することが出来たので達成度は80%と言える。次に、ハイブリッドとして実施できたかどうかである。当初の計画であった放電加工に関しては、設備の理由からアークが飛ぶことを確認するに留まった。超音波とジェット流の2つについては実験を実施したので、達成度は70%と考える。最後に、ハイブリッドにすることによって、どれだけの切断効率の改善があったかという点である。加工速度の数値目標を200mm2/minとしていたことと比較した場合、現状はその10分の1程度である。著音波とのハイブリッドで30%程度の改善はされたがとうてい目標には到達していない。従って第3の観点では達成度は30%程度である。3つの観点から総合的に判断した場合、到達度は60%と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
格段に切断効率を改善するために次のような2つの手法を実施する。また、これらの手法に関しては、既に予備的な実験を開始した。 1つには、ダイヤモンドソーワイヤの性能そのものを改善するものである。先ず、ダイヤモンド砥粒をこれまでのクラッシュタイプ(粉砕)から自然な14面体形態の結晶を用いることである。これにより、格段に切断速度が格段に改善されることを確認した。また、複数のワイヤを束ねて撚り線として張力を上げるものである。 2つには、放電加工のとのハイブリッド性の確認をするものである。しかしながら、ダイヤモンド砥粒の用いるというリスクから、各種の施設から放電加工機の使用許可をもらうことが出来なかった。このため秋田大学に放電加工機を早急に導入して、目指す実験を実施することが必要である。放電できることは既に確認しているが、切削と放電のハイブリッドを確実に実施することが最終年の目標である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度である平成25年度は、主に実験場所の確保と消耗品の購入が主になる。先ずは、タングステンワイヤである。これまで使用していた直径80μmのワイヤ太くして切断速度を上げるために直径200mμmのワイヤを5000m購入する。また、ダイヤモンド砥粒に関しては、クラッシュ材に変えて、長寿命で切断効率の優れた自然結晶としての14面体ダイヤとする。そのため、直径20μmで14面体のダイヤモンド500カラットを購入する必要がある。また、実験設備としてのワイヤ製造装置が大型であるため、通常の研究室に収りきれないので大学共同利用設備であるベンチャーインキュベーションセンターを借りるための経費として使用する。以上のように、次年度はこれまで整備した設備を用いて、消耗品のみの購入で実験が遂行可能である。
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Research Products
(2 results)