2011 Fiscal Year Research-status Report
親和性の高い雰囲気におけるレーザー誘起反応を利用した高硬度材料の加工
Project/Area Number |
23560115
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中本 剛 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30198262)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 鉄粉末 / レーザービーム / 親和性 / 除去加工 |
Research Abstract |
本研究では,鉄粉末中にダイヤモンドを入れて,レーザービームによって熱を加える.これにより,ダイヤモンドと鉄粉末との間に化学的な反応を誘起させて,鉄粉と接している部分のダイヤモンドを黒鉛化する.この黒鉛化した部分を除去することによって,ダイヤモンドに対して加工を施すことを目的としている.平成23年度は,レーザービームの照射条件や鉄粉末の量を変えて,ダイヤモンドの除去量について調べた. 照射するレーザービームの出力が小さいと,十分な熱量を供給することができないので,ダイヤモンドの除去量は小さい.一方,レーザービーム出力が大きすぎると,鉄粉末が蒸発してしまうので,鉄粉末を利用した加工を施すことはできない.適切なレーザービーム出力の範囲で加工すると,加工時間とともに除去量は増加する.一方,鉄粉末の厚さが小さいと,ダイヤモンドとの間で十分に反応が生じない.逆に,鉄粉末厚さが大きいと,レーザービームから供給される熱による温度上昇が小さいために,除去加工を施すことはできない.このように,本方法で加工を施すためには,適切なレーザービームの出力と鉄粉末厚さの範囲が存在する. ところで,加工後のダイヤモンド表面には,鉄とダイヤモンドの反応生成物が付着している.この付着物の除去をいくつかの方法で行った.その結果,反応生成物が付着しているダイヤモンドの表面にレーザービームを再照射する方法を採用することとした.ただし,再照射量を大きくすると,それによってダイヤモンドがさらに加工されてしまう.このため,適度な再照射量を検討している.この実験と並行して,ダイヤモンド表面にアルミニウム板でマスキングを施して,マスク形状を転写するための予備実験を行い,転写が可能であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
鉄粉末中にダイヤモンドを入れて,ダイヤモンドに対して除去加工を施すための条件を検討したことは,当初の予定通りであり,加工を施すことが可能であることを示すことができた.加工後のダイヤモンド表面の付着物については,除去するための方法をいくつか検討して,レーザービームを再照射することが適切であることを示した.しかし,鉄粉末による除去加工形状を保ちつつ,付着物を除去することができる最適条件については,現段階では,実験により,検討している途中である.当初は,平成23年度中に最適条件について実証する予定であった. 一方,ダイヤモンド表面上でアルミニウム板によってマスキングして,マスクパターンにしたがってダイヤモンドを除去加工する予備実験を行った.この実験を行ったことは,当初の予定以上である. 以上のように,ダイヤモンド表面の反応生成物を除去するための最適条件を明らかにする実験が途中であることと,マスクパターン転写の予備実験を行ったことを考慮して,「やや遅れている」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の結果から,加工後のダイヤモンド表面の付着物の除去方法としては,レーザービームの再照射が適切であった.平成24年度は,最適な再照射条件を検討する.ダイヤモンド表面をアルミニウムなどでマスキングして,鉄粉中でレーザービームを照射して,マスクパターンを転写することが可能であることは,平成23年度の予備実験で検討した.今後は,レーザービームの照射条件とパターンの転写形状および転写精度,加工深さ,加工穴形状の関係を調べる予定である.この実験では,転写したい形状のマスクをアルミニウムなどのダイヤモンドとの親和性が低い材料で製作する.転写加工では,どの程度の寸法や精度で除去加工を行うことが可能であるかを検証することを目的としているので,円や正方形などの検討しやすい形状のマスクを製作する.マスクはアルミニウム板から,円や正方形をくりぬいて,円形窓,正方形窓の形状とする.このアルミニウム板の窓に相当する部分をダイヤモンド表面の中央部分に置く.このように置いた後で,ダイヤモンドをマスクとともに鉄粉中に埋めて,鉄粉末表面からレーザービームで照射する. 一方,ダイヤモンドの周囲の鉄粉末の深さなどについては,マスクのない加工と同程度であるかを調べる.ところで,マスクパターン転写加工を行ったときには,ダイヤモンド表面の一部分が除去された形状となっている.このような形状のときにも,レーザービームの再照射によって反応生成物を除去することが可能であるか検討する.これらの実験に必要なレーザー発振器は,本申請者の研究室で所有しているYAGレーザー装置を平成23年度に引き続いて使用する.実験前後のダイヤモンドの形状は,千葉大学で所有しているデジタルマイクロスコープで測定する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,主に,マスクパターンをダイヤモンドの表面に転写する実験を行う.前述のように,鉄粉末表面上から,鉄粉末中のダイヤモンドにレーザービームを照射するために,位置決めしやすい器具を製作する予定である.この実験器具の材料費と製作のための工作機械に使用する工具,およびダイヤモンド単結晶に本研究費を使用する予定である. さらに,平成24年度も,サファイアについて,ガラスとの親和性を利用した加工を継続する予定である.この実験ための器具を製作する材料費と製作のための工作機械に使用する工具,サファイア単結晶も購入する予定である. なお,様式F-6-1において,次年度使用額が生じている.当初の研究計画では,ダイヤモンドの観察と測定のために顕微鏡を購入する予定であった.しかし,千葉大学で所有しているデジタルマイクロスコープを使用することができたために,顕微鏡を購入する必要がなくなった.この理由により,次年度使用額が生じている.平成24年度は,この使用額によって,当初の予定よりも多くの個数のダイヤモンドを購入して,より多くの実験を行いたいと考えている.
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