2011 Fiscal Year Research-status Report
画像計測を用いた多軸制御工作機械の空間精度の「自己最適化」の方法論
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23560122
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
茨木 創一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80335190)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 工作機械 / 運動精度 / 測定 / 画像 / 画像認識 |
Research Abstract |
本研究の目的は,工作機械が自ら,自分自身の精度,及び加工物を含む加工環境をキャリブレーション(較正)し,それを最適に補正するという,工作機械の「自己最適化」という考え方を提案し,それを多軸加工機に適用する方法論を構築することである. その実現のために本年度は,CCDカメラを用いた画像撮影を基礎として,工作機械の2次元運動精度を自律的に測定する方法を構築した.本年度に試作した,測定装置の概要は以下の通りである.工作機械の主軸にCCDカメラを取り付け,テーブル上に撮影対象を固定する.撮影対象として,ガラスプレート上にグリッド(格子)状の金属線が蒸着されているガラス・グリッドを用いた.撮影された画像内の格子点の位置を,画像処理によって算出するソフトウェアを開発した.目標測定精度は,一般的なマシニングセンタの運動精度を考慮し,本年度では1マイクロメータとした. 開発した測定器の測定性能の評価実験を行った.最初に,工作機械送り系の静的な2次元位置決め精度,すなわち工作機械を指令位置に停止したときの位置精度の測定実験を行った.直定規と変位センサを用いた測定や,交差格子スケールなど,従来工作機械の精度検査に用いられている測定法と,同等の測定精度が得られることを示した. さらに,工作機械送り系の動的運動精度,すなわち運動しているときの軌跡精度の測定実験を行った.直進軸の運動精度の測定に加え,旋回軸の運動精度の測定も行った.従来の測定法では,旋回軸の様々な運転精度を測定するためには,それぞれ別の測定器を用いなくてはいけないのに対し,画像を用いた測定では,ひとつのセットアップで様々な誤差の測定が行えることを,実験で示すことができた.一回のセットアップで多くの測定が行えることは,工作機械自体が自動的に精度キャリブレーションを行う「自己最適化」の考え方を実現するために,必要不可欠である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,画像を用いた工作機械の運動精度測定器の開発を主に行い,目標とした測定性能をほぼ達成することができた.市販のCCDカメラとガラスグリッドを基本として,撮影された画像から位置検出を行うためのアルゴリズムとソフトウェアを構築した. また,開発した測定器の測定性能を調べるための実験を行った.静的精度を測定実験(停止したときの位置決め誤差の測定),動的精度の測定実験(運動時の輪郭誤差の連続測定),直進軸の運動精度の測定,旋回軸の運動精度の測定,をそれぞれ行い,直定規と変位センサ,2次元スケールなどの従来の測定器と測定結果を比較することで,本研究で構築した画像を用いた測定システムの測定不確かさの評価を行った.その結果,それぞれの測定において従来の測定器と同等の測定性能を持つことを実験的に示した.従来の測定器と異なり,これらの複数の測定を一度のセットアップで,安全に,効率的に測定することができることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度の研究成果を旋回軸の運動精度の計測に拡張することで,多軸工作機械の運動精度の自律的な測定法と,それに基づく自己最適化の方法論の構築を目的とする.日本の工作機械業界は,より付加価値の高い,マシニングセンタ型の5軸加工機や,旋盤型複合加工機に主力を移しつつある.このような多軸工作機械の旋回軸の運動精度を評価,最適化し,多軸加工における総合的な加工精度を工作機械が自律的に確保できるような方法を構築する.本研究では,このような多軸工作機械を主な対象と考えている. この段階の目的は,旋回軸の「誤差マップ」を作成する方法論を構築することである.本年度構築した画像を用いた測定法は,ミクロンオーダの精度で3次元計測することは原理的に難しく,ここではR-testや,タッチプローブを用いた測定法といった,様々な測定との組み合わせを検討する.R-testとは,主軸に基準球を取り付け,その3次元変位をテーブルに固定した3つの変位センサで連続測定するもので,主軸・テーブル間の相対変位を高能率に測定できる長所がある.タッチプローブとは,主軸に取り付けて使う接触式の変位センサで,加工物の機上計測などに用いられる.申請者は,これらの測定法を応用して多軸加工機の誤差診断を行う手法を研究してきた実績があり,それらのアルゴリズムがこの方法論の基礎となると考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究成果を踏まえ,多軸加工機の旋回軸の3次元運動精度を評価するための新しい測定器を試作するために主に研究費を使用する計画である.従来のR-test装置は接触式の変位センサを用いるのに対し,よりセットアップが容易で,安全で,より自動化に適している非接触式のR-test装置を試作するため,レーザ変位計,基準球,治具などを購入する. また,本年度の研究成果を,国内・国外の学会で発表することや,論文誌への投稿を予定している.
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