2012 Fiscal Year Research-status Report
プラスチック射出成形におけるバリ発生評価金型の開発
Project/Area Number |
23560133
|
Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
村田 泰彦 日本工業大学, 工学部, 教授 (00200303)
|
Keywords | プラスチック / 射出成形 / 金型 / 計測 / 成形不良 / バリ |
Research Abstract |
プラスチック射出成形における成形不良の一つであるバリは、一旦発生すると、除去するための後加工が必要となるため、生産効率の低下を招き、また、金型の破損を引き起こすために深刻な問題となっている。 本研究では、バリの発生しやすさが定量的に評価できるバリ発生評価金型を開発し、本金型を用いて、様々な種類の樹脂や成形条件下においてバリ発生状況の評価を行うことで、バリが発生しない最適成形条件の探索や、さらに、金型の設計、樹脂の開発を行うための指針を得ることを目的としている。 平成23年度は、まず、金型内に可動ブロックを設置して、油圧シリンダを用いてこのブロックを微少量駆動させることで、成形行程中にキャビティ末端部に数十から数百μmの隙間を生成させることができるバリ発生評価金型の設計・製作を実施した。そして、本金型を用いて、汎用樹脂であるポリスチレンとポリプロピレンにおけるバリ発生状況を計測し、射出率や保持圧力などの成形条件を変化させた場合の、隙間への樹脂の流入状況を明らかにすることができた。しかし、その一方で、金型内に設置した変位センサの耐熱温度や可動ブロックの駆動機構の制約から、70℃以上の金型温度、80MPa以上の樹脂圧力条件において使用が困難であることが明らかとなった。 そこで、平成24年度は、高温・高圧条件下で成形が行われているポリカーボネートやナイロンなどのエンジニアリングプラスチックのバリ発生評価に対して、本金型が適用できるように、耐熱温度の高い変位センサへの変更や、高圧条件下でも駆動できる金型構造への改良を行った。そして、改良した金型を用いて計測実験を行い、金型温度120℃、保持圧力120MPaまでの高温・高圧の成形条件下において、本金型が使用可能であることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度では、バリ発生評価金型内に設置した変位センサの耐熱温度や可動ブロックの駆動機構の制約から、70℃以上の金型温度、80MPa以上の樹脂圧力条件において本金型の使用が困難であることが明らかとなった。そこで、平成24年度は、高温・高圧条件下で成形が行われているポリカーボネートやナイロンなどのエンジニアリングプラスチックのバリ発生評価に対して、本金型が適用できるように、耐熱温度の高い変位センサへの変更や、高圧条件下でも駆動できる金型構造への改良を目標に掲げていた。 そこで、200℃までの耐熱性を有する渦電流式変位センサを新たに購入し、本センサを金型内に設置するための金型改造を行い、また、高い保持圧力が負荷されても、可動ブロックが円滑に駆動するようにバネの変更およびそれに対応した金型の改造を併せて行った。さらに、キャビティ内の樹脂温度を計測するための赤外線放射樹脂温度センサを金型内に設置した。そして、ポリカーボネートを用いて計測実験を行い、金型温度120℃、保持圧力120MPaまでの高温・高圧の成形条件下において本金型が使用可能であることを明らかにした。しかし、今年度は、ポリカーボネートによる計測実験を行うに止まり、ナイロンなどのその他のエンジニアリングプラスチックの計測データ収集を始めるまでには至らなかった。これに関しては、平成25年度に遂行を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
高温・高圧の成形条件下で使用可能な計測金型が完成したので、今後は、生産現場においてバリの発生が問題となっているナイロンやポリブチレンテレフタレートなどのエンジニアリングプラスチックにおいて、隙間量や成形条件をそれぞれ変化させながら成形実験を行い、成形品末端部に生じるバリの長さや厚さなどのバリ発生形態の計測、ならびに、キャビティ内における樹脂圧力・温度の計測を実施する。そして、得られた計測データに基づき、隙間量および樹脂粘度、キャビティ内樹脂圧力・温度状態とバリ発生形態との相関関係を検討する予定である。さらに、得られた成果を論文にまとめて、学会誌に投稿する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、隙間量の可変範囲をこれまでよりも大きくするための新しい可動ブロックの製作費やその他金型の部品費、成形実験に用いるナイロンやポリブチレンテレフタレートなどの成形材料の購入費にあてる予定である。また、研究成果の公表、研究内容に関する意見やアドバイスなどの情報収集を目的とした精密工学会秋季大会への参加費ならびにその出張旅費にあてる。さらに、プラスチック成形加工学会誌への論文投稿費にあてる予定である。
|
Research Products
(1 results)