2012 Fiscal Year Research-status Report
創生した高じん性軽合金(SS-ECAP材)による超薄肉角型筺体成形プロセスの研究
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23560142
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
田中 達也 同志社大学, 理工学部, 教授 (70434678)
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Keywords | 塑性加工 / 半凝固軽合金 / ECAP超微細加工 / インパクト成形加工 / 加工硬化 / サーボプレス機 / Liイオン電池用筐体 / 薄肉軽量化 |
Research Abstract |
SS-ECAP 材(半凝固鋳造後にECAP加工)のインパクト成形における成形性を明らかにすることを目的に,肉厚を0.5mm→0.3mm と変化させた金型を用い,A3003(焼鈍材),F 材(AC4CHの熱未処理),SS 材(AC4CH半凝固),SS-ECAP 材の4種類で計5種類(ECAP加工Pass回数が4と8の違い)を供試材として,円形薄肉筐体の成形実験を行った.成形性の評価方法は,外観観察,肉厚分布測定,加工時の押出荷重の測定,組織観察,機械的特性の評価として,引張り試験,ビッカース硬さ試験である.結果として以下のことが分かった. ①外観観察から,全ての材料種類でインパクト成形可能であったが,薄肉化するほど成形負荷は上昇し不良率は増加した.②F材とSS-ECAP材を比べると,引張強さが約2倍,破断ひずみが約4倍向上した.③SS材のECAP加工による違いを見るとPass回数の増加と共に,押出荷重は減少した.そして,引張強さを維持したまま破断ひずみが大きくなった結果,薄肉化による割れ率は減少した.④ECAP加工により伸びが大きくなった理由として,半凝固組織が初晶と共晶が別々に微細化され材料伸びが改善されたためと推測されるが,ビッカース硬さの結果からもインパクト加工による加工硬化は見られず,上記の推測を裏付ける結果となった. 以上の結果から,従来は高硬度・高強度材(降伏応力が高い材料)でのインパクト成形は困難であり,割れ防止のため焼き鈍しにより硬度(強度)を下げた後にインパクト成形していた.しかし,SS+ECAP加工のような強ひずみ加工によって延性部分の組織を微細化し,大きな伸びが確保できる材料に改変すれば,インパクト成形のような急激な塑性変形を伴う加工においても,加工硬化による伸びの低下は生じず,高強度の材料特性を維持しつつ割れを抑えることが可能であることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SS(半凝固材)+ECAP加工材での丸形筐体のインパクト成形に関しては0.3mmの薄肉化の成形実験までは終了し,高強度でありながら割れの無い良成形品を得ており,インパクト成形にとって如何に伸びを確保した材料を用いるかが最も重要であることを明らかにしている.一方,A3000系の半凝固の固相率を20~40%と変化させた材料の試作は,トライ中でああるが良サンプルの試作には至っていない.さらに,最終目的の超薄肉化を目指した0.2mm薄肉用の金型準備は終えているものの,良成形品を得るには至っていない.一方,角形筐体の実験において,標準の試験材料となるAC4CH合金SS+ECAP加工材の試作は順調に進んでいるものの,①薄肉化に伴うインパクト成形時の成形負荷(押出し荷重)の増加による金型耐久性の問題,②成形品厚さを決定するパンチとのクリアランスの精度,および③パンチの座屈変形等の考慮不足による金型設計の不備が先の丸形筐体の成形実験から想定された.その結果,角形筐体金型の設計に対して再検討が繰り返され,製作開始時期に遅れが生じた.そして現状,角形筐体のインパクト成形は,本年度末において金型製作が終了し,成形実験を開始する準備が終了した状態で留まっている.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,丸形筐体において今年度は肉厚0.3mmの筐体が限界であったが,次年度以降で超薄肉0.2mmにトライする.続けて,角形筐体のインパクト成形を実施する.いずれの場合も,金型構造・形状の再検討は不可避であると考えられるので,それに伴い有効に研究費を支出し,無駄の無い改良を加えていく.固相率の異なる半凝固材料の試作は,自らが所有する高温炉での攪拌実験では,引け巣の除去を克服できておらず,ECAP加工後に健全なスラグを得るには至っていない.そのため,外注先での半凝固材料の試作も含めて検討していく. 本研究で使用するSS+ECAP加工材の出願特許が審査請求の結果,2012年度に登録特許となった.この結果を有効に利用し,アルミ合金材はもちろんのこと,マグネ材でも確認すると共に,現状インパクト成形が不可能とされている鉄鋼材料やステンレス合金への展開を視野に入れて,次年度以降の研究を進めていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
丸形筐体および角形筐体の金型改造費を研究費の主な使用項目とする予定である.また,インパクト成形用の材料試作においては,A3000系アルミ合金による半凝固材の固相率の異なる材料の試作方法を早急に確立し,ECAP加工へ供試する.それと共に,マグネ半凝固合金の使用を検討する計画を申請時に挙げており,固相率とECAP加工Pass回数異なるスラグ材料を試作し,その後インパクト成形に対して,最適な条件の把握に努める.そして,難加工材を易加工材とするための加工条件を把握する.そして,本研究テーマは25年度が最終年度となるため,他の合金材料,例えば鉄鋼材料やステンレス合金鋼等の高融点で高強度・高硬度の材料の本プロセスへの適用の可能性についても検討したいと考えている.
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Research Products
(2 results)