2011 Fiscal Year Research-status Report
メカノケミカル砥粒砥石による高能率次世代研磨加工技術の確立
Project/Area Number |
23560143
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山口 智実 関西大学, システム理工学部, 教授 (10268310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 尚一 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (20029317)
古城 直道 関西大学, システム理工学部, 助教 (80511716)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 超精密加工 / 超砥粒砥石 / 超仕上 / メカノケミカル / 複合砥粒砥石 / 酸化セリウム / 硫酸バリウム / ダイヤモンド |
Research Abstract |
1.周知のように,SD(ダイヤモンド)砥粒でSi(シリコン)を加工すると炭化物の生成による摩耗が顕著であり,一方,BaSO4(硫酸バリウム)砥粒は軟質なので,機械的ではなくメカノケミカル(MC)反応による化学的除去が起こる.そこで,Siの超仕上に対するSD単体砥石,BaSO4単体砥石,およびBaSO4-SD複合砥石の性能評価を行った結果,次の3点が明らかになった.i)BaSO4単体砥石は,最も損耗し易く除去能力も低いが,最もよい表面粗さを形成する,ii)SD単体砥石の除去能力は最も高いが,複合砥石に比べ摩耗し易く超仕上比では複合砥石に劣る,iii)複合砥石は除去能力ではSD単体砥石に劣るが,摩耗し難いので,超仕上比では最もよい.以上のことから,MC砥粒砥石とMC複合砥粒砥石を組合わせることで,効率のよいSiの超仕上/研磨の実現可能性を示すことができた. 2.一般に,MC砥粒は被削材に比べ軟質であるので,機械的除去ではなくMC反応による化学的除去を行うと言われているが,MC砥粒砥石の超仕上における除去機構は明らかになっていない.そこで,軸受鋼を対象とし,結合度の異なるCeO2砥粒砥石を用いて超仕上実験を行い,次の3点が明らかになった.i) CeO2砥粒砥石には,仕上機構に変化が生じる砥石圧力の境界が存在する,ii) 結合剤の破砕や脱落が生じる高い圧力において,結合度が高い砥石を用いると,仕上速度,仕上面粗さが向上する,iii)結合度が低い砥石では,砥石作業面における結合剤の脱落が著しく,砥石の摩耗と脱落とを繰り返すことで,さらに仕上げ速度と仕上面粗さが向上する.以上のことから,MC砥粒砥石は,硬質砥粒砥石とは異なる仕上機構を有し,この実験から得られた結果をうまく利用すれば,元来,問題であったMC砥粒砥石の除去能率の低さを解決し,能率良く平滑な仕上面粗さを実現できることを示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,MC砥粒砥石およびMC複合砥粒砥石を用いて,シリコンやガラス等の硬脆材料の超平滑化加工として従来適用されているラッピング/ポリシングの遊離砥粒加工に取って代わる固定砥粒超平滑化加工技術の確立を目的とし,本年度は、MC砥粒砥石・MC複合砥粒砥石の超仕上特性の解明とMC反応の解明を課題とした. 前者については,硬脆材料の超仕上として一般に使われるSD(ダイヤモンド)砥粒砥石とシリコンに対する超仕上特性を比較することで,MC砥粒砥石は平滑化の面で,MC複合砥粒砥石は製造コストも加味した加工能率の面で,SD砥粒砥石に対して優位な超仕上特性を示したことで,本研究の最終目的の実現可能性があることを示すことができた.また,後者に関しては,化学反応理論からは,MC砥粒が被削材を酸化し軟化させることは予想され,化学反応生成物の採取・分析等の直接的検証はなし得なかったものの,超仕上特性から間接的に示すことはできた. 以上のように,当初の計画に比べ,超仕上特性では,加工対象がシリコンとガラスの両方からシリコンのみになった,MC反応に関しては,直接的検証ではなく間接的検証になった、という点はあったものの,本研究の最終目的がかなりの高確率で実現可能であることを示せたという点を考慮すれば,概ね研究は順調に進め得たと評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も本年度と同様,MC砥粒砥石・MC複合砥粒砥石の超仕上特性の解明を行っていくが,特にガラスに対する超仕上特性の解明に取り組む.本年度,加工面の評価については表面粗さのみで評価していたが,ガラスの超仕上においては,表面近くの材料内部に亀裂(subsurface damage)が生じると言われており,これも評価対象としなければならない.しかし,この評価方法は未だ確立されていないため,従来の超仕上特性の測定と併せて,subsurface damageの評価方法を考案することも重要な課題となる.現時点では,フッ酸を用いてガラス表面を溶解し,内在するsubsurface damageを観察することを考えているが,他の方法を新たに考え出す必要があるかも知れない. 一方,もう一つの課題であるMC反応の解明については,直接的データでもって説明できるような実験方法を考案する.MC砥粒砥石による超仕上では,除去物はMC反応によって生じたものと考えられるので,加工時に除去物を採取できるのが理想であるが,湿式の加工であり除去量が微小であることを考えると,この方法は容易ではない.そこで,例えば,加工とは別に具体的な反応生成物が生じるような実験方法を考え,反応生成物を採取・分析するなどの実験方法を考案することも考えられる. 上記2つの課題の進展次第で,MC砥粒砥石とMC複合砥粒砥石を組合わせたガラス/シリコンの超平滑化に対する加工工程の設計に取り組んでいく.具体的には,加工条件(加工時間も含む)の設定である.本年度の結果から推測するに,従来の遊離砥粒方式に比べ加工能率で上回ることは確かなので,遊離砥粒方式と同等の(subsurface damageをも考慮した)表面粗さを得るため,各々の被削材に対する具体的なMC砥粒砥石・MC複合砥粒砥石の選定,および各砥石における加工条件を求める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で用いる主たる加工様式は超仕上であり,それを実現する加工機である超仕上盤は,すでに用意されており,加工面や砥石作業面を観察・測定するための粗さ計,SEMなどの基本的な装置もすでにある.したがって,次年度の予算の用途としては,ガラス,シリコン,鋼(比較対象として)などの加工実験に使用する被削材,および,同じく加工実験に工具として使用する各種砥粒/砥石の購入費が主となる.また,特にsubsurface damageの計測・観察に絡んでの表面処理等の処理費や手元に無い他の計測装置の使用費用がそれに加わる予定である. なお,次年度への繰越金59,170円は,平成23年度において,研究分担者である島田が計画したメカノケミカル砥粒砥石を用いた超仕上実験のための実験用試料(治具等も含む)の購入費用であり,当初,平成23年度内に支払う予定であったが,計画時期が年度末近くであったことから平成23年度内での支払いが間に合わなかったため,その費用を繰り越して平成24年度に支払うものである.
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Research Products
(2 results)