2012 Fiscal Year Research-status Report
メカノケミカル砥粒砥石による高能率次世代研磨加工技術の確立
Project/Area Number |
23560143
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山口 智実 関西大学, システム理工学部, 教授 (10268310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 尚一 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (20029317)
古城 直道 関西大学, システム理工学部, 助教 (80511716)
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Keywords | 超精密加工 / 超砥粒砥石 / 超仕上 / メカノケミカル / 複合砥粒砥石 / 硫酸バリウム / サファイア / コロイダルシリカ |
Research Abstract |
1.BaSO4(硫酸バリウム)単体砥石,およびBaSO4-SD(ダイヤモンド)複合砥石による単結晶Si(シリコン)基板の超仕上において,BaSO4砥粒によるMC(メカノケミカル)反応の解明と両砥石の組合わせによる平滑化性能の検討を行い,次の2点が明らかになった.i) BaSO4はSiを酸化させる作用があることを実験的に示すことができた.これにより,BaSO4砥粒がSi表面凸部と高温接触しSi表面が酸化されて除去されることが明らかとなった.ii) BaSO4-SD複合砥石でSi表面の粗さをおよそ12nmRaまで超仕上した後,MC反応を促進するため加工液温度313Kとやや高温に設定し,BaSO4単体砥石で2分間超仕上することで,約1.5nmRaまでSi表面を平滑化することができた.以上のことから,BaSO4砥粒砥石とBaSO4-SD複合砥粒砥石を組合わせることで,従来のラッピングに代わるSiの固定砥粒研磨加工技術の可能性を具体的に示すことができた. 2.LEDの需要にともない,その製造工程において下地基板となるサファイア基板の超平滑化が関心を集めている.この基板の最初の平滑加工工程においては,加工ダメージの少ない高精度・高能率な研削加工が求められる.そこで,従来のSD砥石に代わり,SD砥粒に従来サファイアの遊離砥粒研磨に用いられているSiO2(コロイダルシリカ)砥粒を複合した新たな砥石を開発し,サファイアの超仕上性能をSD砥石と比較調査した結果,以下のことが明らかになった.SiO2-SD複合砥石は,除去能力ではSD砥石に劣るものの,適当な砥石圧力ではSD砥石よりもスクラッチ傷の少ない仕上面を生成できる.以上のことから,サファイアのような高硬度難削材の超仕上においても,加工条件を最適化すれば,従来のSD砥石に取って代われる可能性を示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,MC砥粒砥石およびMC複合砥粒砥石を用いて,シリコンやガラス等の硬脆材料の超平滑化加工として従来適用されているラッピング/ポリシングの遊離砥粒加工に取って代わる固定砥粒超平滑化加工技術の確立を目的としている.本年度初頭は,i)単結晶Siに対するBaSO4砥粒砥石・BaSO4-SD複合砥粒砥石の超仕上特性の評価とBaSO4とSiとのMC反応の解明,ii)ガラスに対するCeO2砥粒砥石の超仕上特性の評価とsubsurface damageの評価方法の考案を課題とした. (i)では,真空の坩堝内でSi基板とBaSO4粉末を接触加熱実験を行い,無酸素状態でもSi基板が酸化されていたことから,BaSO4がSiを酸化するMC反応を直接的に解明することができた.また,MC反応を促進する加工条件を整えれば,短時間で従来の粗研磨加工並みの平滑面を得られることも示せた.一方,(ii)では,有効なsubsurface damageの評価法を見出すには至らず,各種ガラスに対するCeO2砥粒砥石の超仕上性能のデータを蓄積するに留まった.しかし,LED製造で注目されているサファイア基板の平滑加工用に開発していたSiO2-SD複合砥石が予想以上に早く実現化でき,当初予定外であったサファイヤ基板に対するSiO2-SD複合砥石の超仕上特性評価を追加した.サファイアはSiやガラスに比べ硬く,今までの超仕上条件を流用できず手探り状態での加工実験となったが,それでもSD砥石に比べスクラッチ傷の少ない仕上面を生成できることが明らかになり,今後の展望が見込まれる結果を得ることはできた. 以上のように,ガラスにおいては計画どおりとはいかなかったが,Siとサファイヤに対する有効性は得られたことで,基板材料に対する本研究の最終目的の実現可能性を示せたという点を考慮すれば,概ね研究は順調に進め得たと評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度の結果を踏まえ,以下の課題に取り組む予定である. 1.単結晶Siに適したMC砥粒砥石の開発:BaSO4とSiとのMC反応が理論どおり酸化反応であることが実験的に実証されたことから,理論上より大きな酸化反応を示す物質を求め,それによる固定砥粒化でより効果的な超仕上加工を目指す.物質の選定は,ギブスの自由エネルギを利用すれば絞り込むことは可能であるので,あとは,固定砥粒化が可能な物質の特定を,製造を担う砥石の製造企業であるミズホと協議することでMC単粒砥石を実現化し,超仕上性能の評価実験を行う. 2.SiO2-SD複合砥石によるサファイア基板平滑加工の有効性の確認:本年度は,SiO2-SD複合砥石によるサファイア基板の超仕上を行ったものの,最適な加工条件を得るまで十分な実験を行えたわけではなく,また,砥石の仕様パラメータの最適値も求められてはいない.現状では,SD単粒砥石の方が,除去能力も平滑化能力も上なので,この性能を上回ることのできるSiO2-SD複合砥石の仕様パラメータと加工条件を求める. 3.各種ガラスの超平滑化に対するCeO2砥粒超仕上工程条件の検討:一般にMC砥粒は軟質であり除去能力は高くないため,加工特性は,加工条件のみならず,加工前の被削材表面の粗さの影響も受けることになる.特に,ガラスでは各々の種類により材料特性が大きく異なるため,所定の平滑面を得るには,前工程時での表面性状も含めた種々の条件設定が必要となる.そこで,本年度積み残したsubsurface damageの課題も含めて,各種ガラスに対するCeO2砥粒超仕上で超平滑面を得るための工程条件を求めていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で用いる主たる加工様式は超仕上であり,それを実現する加工機である超仕上盤は,すでに用意されており,加工面や砥石作業面を観察・測定するための粗さ計,SEM,AEセンサなどの基本的な装置もすでにある.したがって,次年度の予算の用途としては,ガラス,シリコン,サファイアなどの加工実験に使用する被削材や工具材の購入費,および加工機械等の使用機器のメンテナンス費用が主となる.また,それに加えて,各測定機器から得られた出力データをまとめるためのデータロガー,およびsubsurface damageの計測・観察に絡んでの表面処理等の処理費や手元に無い他の計測装置の使用費用がそれに加わる予定である.
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Research Products
(2 results)