2012 Fiscal Year Research-status Report
ボールエンドミルによる硬脆材料の切削加工に関する研究
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23560145
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
大野 威徳 九州産業大学, 工学部, 講師 (70509083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 隆 東京電機大学, 工学部, 教授 (20199855)
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Keywords | ガラス切削 / 脆性破壊 / 切れ刃稜線形状 / 山頂間隔 / 傾斜切削 / 材料除去過程 / 工具経路 / 工具姿勢 |
Research Abstract |
・単結晶ダイヤモンド製バイトの切れ刃稜線粗さにおける山頂間隔、および傾斜切削時における傾斜角による脆性破壊への影響を切削試験により検証した。切れ刃稜線に粗さが存在する工具で切削を行う場合、稜線粗さの各山頂が接近するとこれらに近接する材料内部で発生する応力が互いに干渉し、この分布が変化することで切削中に発生する脆性破壊の特性が変化すると考えられる。一方、傾斜角はエンドミル切削における工具の捩れ角に対応し、その特性を明らかにすることでエンドミル切削の実験に先立ち捩れ角の影響について検討を行うことができる。以上挙げた影響を明らかにする目的で、稜線形状の各山頂間隔を変化させた数種の単結晶ダイヤモンド平バイトを用いてソーダライムガラスに対し形削りにより傾斜切削を実施した。その結果、山頂間隔の接近とともに延性モード切削の限界切込量が減少すること、また傾斜角の変化に応じてき裂が切削溝の片側端部に集中して発生することが明らかになった。今回の実験結果について原因究明のためには今後詳細に検討を加える必要があるが、山頂間隔による影響については前述した応力の干渉によるもの、また傾斜角による影響については切削時に先行する山頂が生成した仕上げ面上に残留応力または脆性破壊が発生し、その近傍で後続の山頂が材料を除去する際にこれらと干渉して1次もしくは2次的に発生した亀裂の進展が応力干渉に応じて変化したためと推測される。 ・前年度開発した切削厚さ解析プログラムについて改良を施した。前年度に開発したプログラムでは、送りに対し工具の姿勢を固定した状態で切削中の材料除去過程を計算していた。本年度は、工具経路とともに工具姿勢が変化する場合の除去過程を計算しうるものに変更している。計算の結果、各時刻ごとに工具経路に応じて工具姿勢を算出し切れ刃各点の切削厚さを算出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に立案した研究計画の内本年度分の課題についてはほぼ実施できており、本試験研究はおおむね順調に推移しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
・円弧状切れ刃の曲率による影響および粗さの各頂点を偏差させた場合の偏差量の影響について実験を実施する。まず、稜線に粗さがない状態でノーズ曲率半径が異なる円バイトを用いて一定の切削条件で形削り切削を行う。次に、各工具の主切れ刃稜線に同一寸法の正弦波形状をFIBにより成形し、稜線の曲率と粗さによる影響を観察する予定でいる。工具の選定と実験は実施中であり、測定試験を経て7月末までには結論をまとめる。 ・粗さ形状の各頂点を偏差させた場合の偏差量の影響について実験を実施する。正弦波状の粗さ形状に対し、各頂点をその中央から一定の方向に偏差させた場合、偏差量に応じて亀裂の進展が変化すると予想される。これを明らかにする目的で、平バイトの主切れ刃稜線に同一の振幅と周期で偏差量が異なる正弦波形状をFIBにより成形し、偏差量による影響を観察する予定でいる。前述の課題と同様工具の選定と実験は実施中であり、これについても測定試験を経て7月末までに結論をまとめる。 ・現在までの試験結果に基づき、ボールエンドミル切削における脆性破壊特性を検証する。単結晶ダイヤモンド製ボールエンドミルを用いて、粗さの諸特性による脆性破壊への影響について検証する。切削中に発生した切削抵抗の変化および仕上げ面に進展したき裂の観察結果と、開発した数値計算プログラムによる材料除去過程の解析結果とを比較し、ボールエンドミル切削における切れ刃稜線形状の影響を解明する予定でいる。以上を観察試験を経て11月末までに結論をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
*繰越金の発生について: 前年度において計画していた一部の切削試験について成果を達成するために試験条件の再検討を行うことにしたため、使用する工具について選定を次年度までに延長することにした。そのため、これを購入する予算を繰り越し本年度で購入をすることとする。 ・物品費: 切削試験用工具(単結晶ダイヤモンド製ボールエンドミルなど)を購入予定。 ・旅費: 学会発表(海外:10月、翌3月、国内:9月、翌年3月)を予定。 ・謝金: FIB使用料(九州工業大学)としての出費を予定。 ・その他: 雑誌投稿(海外)、松村教授研究費として出費を予定。
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