2011 Fiscal Year Research-status Report
四節リンク,ワンウェイクラッチ,立体カムによる複合伝達機構型無段変速機の開発
Project/Area Number |
23560149
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
湯川 俊浩 岩手大学, 工学部, 准教授 (10347205)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 機構設計 / 無段変速機 / リンク / カム / トライボロジー |
Research Abstract |
無段変速機(CVT,Continuously Variable Transmission) は,原動機で発生する力やトルクを車軸等の出力側に伝える動力伝達機構である.従来のCVTは,主に摩擦ベルトや摩擦車によって伝達する方式がとられていた.本研究で扱う四節リンク,ワンウェイクラッチ,カムによる複合伝達機構型無段変速機(L-CVT)は,従来の手法とは異なり,摩擦伝動機構でないことを特徴とする.このL-CVTは,直動機構をもつリンクの伸縮によって,入力軸の回転角速度と出力軸の回転角速度の比を無段階に調整できる変速機構である.この変速比を連続的に可変できるようにするため,リンクの回転力および直動リンクの伸縮を連続的に変化させる.本方式はすべり等による伝達ロスがないため,伝達効率が高いと考えられている.その結果,効率や燃費が向上し,二酸化炭素の排出量が抑えられ,さらに,粉塵や磨耗による障害が発生しにくいという利点がある.平成23年度は,試作1号機のラチェット部の強度,耐久性,およびバックラッシュについて評価した.つぎに,試作1号機のラチェットをワンウェイクラッチに変更した試作2号機を設計,製作した.試作2号機は,1号機と同様,四節リンク機構を有する.クランクのリンクと,クランクと出力リンク(てこ)をつなぐ連結リンクは,スライドレールにラックギアとモータを取付けた構造であり,モータ駆動により連結リンクは伸縮する.回転するクランク上に搭載したリンク伸縮用モータへ電力を外部から常に供給するため,回転電極(スリップリング)を使用した.試作2号機については,各リンクの回転速度むら,伝達力,速度比を調べるための実験をし,軸受の強度や耐久性を評価した.ワンウェイクラッチのバックラッシュはほぼゼロであるため,L-CVTのバックラッシュもほとんど生じないことを確認した.そして,論文発表をおこなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発するL-CVTは,四節リンクの運動学の基本原理をもとに機構が成り立っており,本年度にその原理を利用した機構の妥当性が確かめられた.具体的には,L-CVTが,直動機構をもつ連結リンクの伸縮によって,入力軸と出力軸の回転角速度の関係を調整できる減速機構であることを実証するため,実験装置(試作2号機,コンピュータ,インターフェース(AD/DA変換,カウンター回路))によって,リアルタイムに入力軸の回転速度を変化させたり速度を一定にしながら,連結リンクは伸縮できることを確認した.また,出力軸の回転速度のデータをリアルタイムに取得し,四節リンク機構のシミュレーション結果と照合した結果,実験機がトランスミッション機構として成り立っていることを確認した.23年度では,実験機(試作2号機)の設計,開発,改良を施し完成した.そして次の24年度に向けて,試作3号機へ平板カムを搭載するための準備が整った.平面カムを搭載する予定の試作3号機は,原動機から入力軸に加わる回転力やトルクが四節リンク以外の平面カムを回転させ,このカムを介して連結リンクを伸縮させるため,別の伸縮用モータが不要で電源が不要となるだけでなく,クランクの回転,連結リンクの伸縮,平面カムの回転,および出力リンク(てこ)の往復運動が,機械的に歯車を用いて連動できるため,確実にトランスミッション機構としての機能を果たす.L-CVTは,トランスミッションとして伝達効率が高いだけでなく,摩擦や潤滑などのトライボロジー領域の問題を扱う必要がないので,開発,製造コストを抑制できると考えられており,今後はこれを実証するために,力・トルク伝達効率を厳密に測定する予定である.以上,23年度終了の時点では,本事業申請時の計画通りに進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,試作3号機の開発,シミュレーション,および理論の構築をおこなう.試作3号機の特徴は,入力軸(クランク)の回転力によって,歯車等の機械要素を介して,連結リンクを伸縮させる平板カムの回転動作が実現できることから,連結リンクを伸縮させるモータ等の動力源が不要となることである.試作3号機は,2号機と比較して,二個の四節リンクの配置が異なる.2号機は,対象に配置した二つの四節リンク機構の各リンクの伸縮と回転の方向が同一面上にある.これに対し,3号機は,二つの四節リンク機構の各リンクの伸縮と回転の方向が異なる二つの平行する面上にあることを特徴とする.これによって高剛性化と省スペース化を図る.3号機の入出力軸の回転数を機械的に制御するために,連結リンクの伸縮変動に対応したカム位相曲線を導出する.つぎに,CADソフトウェアを用いて,3号機に平板カムを搭載する設計をおこなう.そして,この平面カムを加工機を用いて製作する.数値解析ソフトウェアを用いて,四節リンク機構の出力リンク(てこ)が一定の往復角運動をするときの運動シミュレーションをおこなう.つぎに,CADソフトウェアの機構シミュレーションの機能を用いて,3号機の各リンクの動作範囲内で構造的に干渉等がないかを確認する.連結リンクを伸縮させるための他の方法として,四節リンクに新たにリンクを追加する方法もあるので検討する.3号機に平板カムを搭載し,連結リンクが伸縮する実験をおこない,実際の伸縮幅を把握する.入出力リンク間の角速度とトルクに関する入出力関係を実験で求める.そして,3号機の動作試験結果,シミュレーション結果,および解析結果を相互に比較する.四節リンク機構の幾何学と力学理論を導出する際,必要に応じて文献を収集する.論文を作成し,学会発表をおこなう.以上が,今後の研究の方策である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,試作3号機の開発,シミュレーション,および理論の構築をおこなう.研究費の主な使途は,試作3号機の開発に伴う部品購入費や部品加工費であり,測定システムを構成する上で必要な器具やセンサ等の購入費と設計開発費である.3号機は,入力軸(クランク)の回転力によって,歯車等の機械要素を介して,平板カムの回転動作が実現できることから,連結リンクを伸縮させるモータの購入は不要となる.本年度は,この平面カムの材料を購入し,既存の加工機で製作する際に,切削工具の消耗品を購入する.入出力軸の回転数を制御するために,連結リンクの伸縮変動に対応したカム位相曲線を導出する際には,既存のカム製作ソフトウェアを用いる.既存のCADソフトウェアを用いて,平板カムを3号機に搭載する検討をし,3号機全体の設計をおこなう.四節リンク機構の出力リンク(てこ)が一定の往復角運動をするときの運動シミュレーションでは,既存の数値解析ソフトウェアを用いる.現時点では,理論構築やシミュレーションをおこなうにあたり,過去にコンピュータを購入し,各種のソフトウェアを導入しているので,これらの費用は発生しないが,今後,高機能のソフトウェアが開発された際には購入を検討する.出力リンク(てこ)の等速性について調べるために,シミュレーション結果と3号機での動作実験結果を比較する計画である.今後の実験では,新たにセンサを購入するか,自作でセンサを開発するための費用が発生する可能性もある.四節リンク機構の幾何学と力学理論を導出する際には,文献を収集する費用がかかる.報告書や論文を作成する際には,論文投稿費が必要となり,学会発表時には参加登録費,交通費および宿泊費がかかる.以上が次年度の研究費使用計画である.
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Research Products
(13 results)