2012 Fiscal Year Research-status Report
四節リンク,ワンウェイクラッチ,立体カムによる複合伝達機構型無段変速機の開発
Project/Area Number |
23560149
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
湯川 俊浩 岩手大学, 工学部, 准教授 (10347205)
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Keywords | 機構設計 / 無段変速機 / リンク / カム / トライボロジー |
Research Abstract |
本研究で提案する四節リンク,ワンウェイクラッチ,カムによる複合伝達機構型無段変速機(L-CVT)は,従来の手法とは異なり,摩擦伝動機構を用いない方式であることを特徴とする.前年度(23年度)までに開発した無段変速機 (L-CVT)の基本的な仕組みは,二つのてこクランク機構を対称に配置し,てことクランクを結ぶ連結棒の長さを連続的に変化させて,四節リンク機構の早戻り機構の運動を速度制御し,これにより入力の回転数と出力の回転数の比を連続的に変化させるものであった.本方式は,すべり等による伝達ロスがないため,伝達効率が高いと考えられている. 当該年度(24年度)は,主に次の二項目(1,2)について開発をおこなった. 1. L-CVTにおける新たな方式を提案した(並列配置型L-CVT).この機構は,複数のてこクランク機構を“並列に”配置し,てこの往復角運動を,てこと連結する出力回転部品に伝えることにより,回転するクランクを入力,てこから力を受ける回転部材を出力とする変速機である.この機構を検証するために,入出力回転数の実験値を取得し,これらの値と理論値およびシミュレーション結果との比較をおこなった. 2. 前年度(23年度)に開発した試作2号機の改良をおこなった.試作2号機は,1号機と同様,四節リンク機構を有し,入力リンク(クランク)と,クランクと出力リンク(てこ)をつなぐ連結リンクは,スライドレールにラックギアとモータを取付けた構造であり,モータ駆動によって,連結リンクは伸縮する.当該年度(24年度)は,連接棒を伸縮するためのカムの形状について解析し,解析結果を基に設計したカムを搭載した試作3号機を開発した.そして,解析結果と試作機の実験値を比較し,検証をおこなった.試作3号機は,伝達効率が高く,さらに,磨耗や粉塵等による障害が発生しないというメリットがある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究のL-CVTが,四節リンクの基本原理をもとに無段変速機として機能していることは,前年度(23年度)に確認できた.当該年度(24年度)は,二種類の製作したL-CVT(1,2)について基本原理を確認した. 1. L-CVT新規開発機(並列配置型L-CVT)は,四つのてこクランク機構を並列に配置したCVTである.これに対し,機構解析,構造設計,動作シミュレーション,機構開発,実験および考察をおこなった.この並列配置型L-CVTは,最低二組のてこクランク機構があれば機能するが,てこクランク機構を四組用いることによって,リンクの伸縮をしなくても,早戻り機構に起因する回転速度むらを緩和でき,出力軸の回転速度がある程度一定となり,その結果,減速比は一定となる.この機構を検証するため,入出力回転数の実験値を取得し,理論値との比較をおこなった. 2. 前年度(23年度)に製作した試作2号機は,コンピュータ,インターフェース(AD/DA変換,カウンター回路)を用い,リアルタイムに入力軸の回転速度を変化させて,出力回転速度を一定にしながら,連結リンクが伸縮できることを確認できた.当該年度(24年度)は,平板カム搭載型L-CVT(試作3号機)に対し,包絡線を用いた溝カムの設計,構造設計,てこクランク機構の運動解析,実験および考察を遂行した.平板カム搭載型L-CVT(試作3号機)は,原動機から入力軸に加わる回転力・トルクが四節リンクを動かすだけでなく,平面カムを回転させ,このカムを介して連結リンクを伸縮させるため,別の伸縮用モータが不要となり,クランクの回転,連結リンクの伸縮,平面カムの回転および出力リンク(てこ)の往復運動が,機械的に歯車を用いて連動し,確実に機能を果たす. 以上,当該年度(24年度)終了時点で,新たな実績1が本事業申請時の計画2に加えられ,当初の計画以上に進展した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(25年度)は,2.平板カム搭載型L-CVT(試作3号機)を発展させ,立体カム搭載型L-CVT(試作4号機)を開発するため,試作3号機に立体カムを搭載する予定である. 立体カム搭載型L-CVT(試作4号機)は,クランク(入力軸)を回転させ,つぎに,立体カムの回転軸方向にカムスライド機構を動作させることで,カムローラと接触したリンクが伸縮することにより,無段変速が実現できる.この実験機を開発して,リンクの回転と伸縮により実現される減速比および無段変速の確認をおこなう.連結リンクを伸縮させるための立体カムは,位置的拘束を伴った確動カムとして動作させるために,従動節の構造に工夫を要する.一例として,カムと従動節を磁石と鉄にし,磁力によって拘束する方法がある.しかし,磁力による抵抗力が発生し,この力が伝達効率を低減させる可能性があるため,この方法で開発するのではなく,昨年度に提案した,2.平板カム搭載型L-CVT(試作3号機)の平面カムを立体カムに変えて,モータ等の動力源が不要となる機構を提案する.ただし,伸縮するリンクは連結棒から入力リンク(クランク)に変更する.試作4号機は,二組もしくは四組の四節リンク機構の各リンクの伸縮・回転面が平行している構造をもつ.これにより,高剛性化と省スペース化を図る.具体的には,立体カムの設計,全体構造設計,てこクランク機構の運動解析,実験および考察を遂行する予定である.文献(論文,特許)の情報を収集し,実験結果を考察して論文を執筆し,学会発表をおこなう. 次年度(25年度)に開発する立体カム搭載型L-CVT(試作4号機)は,従来のトランスミッションと比較して,摩擦や潤滑などの問題を取扱う必要が少ないため,伝達効率が高いので,今後,製品化に向けた可能性を見い出す予定である.そのため,正確な実証試験をおこなうように心掛ける.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(13 results)