2013 Fiscal Year Research-status Report
膜厚方向の冷媒溶解濃度分布測定による潤滑膜内濃度変化モデルの実験的検証
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23560154
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 真二 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40313332)
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Keywords | 冷媒 / 潤滑 / 計測 / 共焦点顕微鏡 / レーザ誘起蛍光法 / トライボロジー |
Research Abstract |
今年度は開発した“潤滑膜内濃度分布計測システム”の潤滑膜内における膜厚方向の空間分解能と冷媒溶解濃度の測定精度について詳細な検証を行った. 本システムの空間分解能は共焦点顕微鏡の対物レンズの焦点深度で決まる.そこで,冷媒雰囲気下潤滑膜観察装置の観察窓の外表面及び内表面近傍でのレーザ反射光の輝度値を共焦点顕微鏡の冷却CCDカメラで測定して,ピーク輝度値の半値幅から焦点深度を得た.その結果,観察窓の外表面では半値幅は0.9μmであり,これは共焦点顕微鏡の理論分解能(0.891μm)と同等であった.しかし,潤滑膜が形成される側の観察窓の内表面では半値幅は14.0μmと大きく,また複数の輝度のピークが測定された.これは球面収差が生じているときに見られる現象であり,対物レンズと焦点の間にサファイアの観察窓が存在することが原因と考えられる. また,冷媒溶解濃度の測定精度の検証は以下のように行った.蛍光剤(クマリン30)を溶解させた潤滑油(POE)に既知の濃度(0~12.5wt%)で冷媒ガス(HFC134a)を溶解させて,観察窓と回転鋼球の間に潤滑膜を形成した.これにレーザ光(405nm)を照射して,励起された蛍光の強度を膜厚方向に共焦点顕微鏡の焦点位置を変えながら冷却CCDで測定した.その結果,冷媒溶解濃度が0~2.0wt%では冷媒溶解濃度が増加すると,蛍光強度は線形に減少した.また,冷媒溶解濃度に対して,蛍光の強度も十分にあることがわかった.しかし,2.0wt%以上では蛍光強度は極端に低くなり,冷媒溶解濃度が変化しても蛍光強度は変化しなかった.これはブリーチと呼ばれる現象で,レーザの励起光が強すぎたために,蛍光剤が低蛍光性の構造になり,蛍光強度が低下したためと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
・“潤滑膜内濃度分布計測システム”の空間分解能がまだ14μmと大きく,予定した分解能(1μm)を満たしていない.そのため,潤滑膜内の冷媒溶解濃度分布の測定がまだ実施できていない.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最初に以下の実験装置の改良を行う. ・“潤滑膜内濃度分布計測システム”の空間分解能を向上させるために,光路中のサファイア観察窓による球面収差を補正して光学設計された対物レンズを用意して,空間分解能の検証を行い,予定した分解能を満たしていることを確認する. ・冷媒溶解濃度の測定の際に蛍光剤がブリーチしないように,励起レーザの先にNDフィルターを追加して,レーザ光の強度を弱める. ・蛍光強度の測定誤差が±10%程度あるので,出力変動が小さいレーザに変更する. ・測定中に冷媒雰囲気下潤滑膜観察装置の重量でZテーブルが徐々に下がり,共焦点顕微鏡の測定位置がずれるので,観察装置の重量をばねで支える. 実験装置の改良後,潤滑膜内における膜厚方向の冷媒溶解濃度分布測定を行う.また,冷媒溶解濃度分布の測定結果は,冷媒溶解濃度変化現象の解析モデルに基づいた計算結果と比較して,提案した解析モデルの妥当性を検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
補助事業期間を1年間延長して研究を実施するため. 次年度の研究費は冷媒溶解濃度分布測定に必要な試験片,試料油,実験装置の一部改良に使用する計画である.
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