2011 Fiscal Year Research-status Report
摩擦摩耗における多元情報の客観的複合解析技術の開発
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23560163
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
福田 応夫 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 客員教授 (90532333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 健敬 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70175636)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | トライボロジー / 摩耗粉成長 / 慣らし運転 / 摩擦 / 摩耗 / 複合解析 |
Research Abstract |
平成23年度における本研究の進捗は,当初計画を達成した上で,計画外であった試験雰囲気中の湿度制御方法についても成果をあげるなど,良好に推移している.試験機の設計・制作,試運転及び試運転データに基づく解析アルゴリズムの概念設計は当初計画を上回るペースで進行しており,問題は無い.これらの研究進捗における研究代表者と研究分担者の役割分担および連携も良好に行われ,今後の計画上も問題は予想されない.立ち上げ試験における試験データは,摩擦力や摩耗量など既設試験機で獲得可能なデータにおいて過去のデータとの整合性に問題は無く,かつ,新規機能による試験片変位データと摩耗粉の大きさの相関などの情報は,現象解明の観点から十分に学術的に意義のある物であった.このため,当初計画よりも前倒しで平成24年春の学術講演会における成果発表を行うこととしている.当初計画からの変更点は,計画時以降の情報収集の結果を反映したもので,研究当初の主たる試験片材料を軸受鋼からオーステナイト系ステンレス鋼に変更したことである.この変更は,研究目標にとってより適切な材料への変更であり,円滑な研究の進行が期待される.また,研究の進捗により摩耗粉の回収方法・装置の改善の方向が示されたのも大きな成果と考えられる.予算執行上も問題は生じておらず,翌年度に新たに予定する摩耗粉回収装置の改善のための費用は,平成23年度の試験装置製作において合理化により節約できた予算を充当することができる.そのため,全体計画については変更の必要はない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では最初の1年間で摩擦試験機と摩擦・摩耗計測装置の試作・検証を行う計画となっている。現在までに試験機本体と摩擦・摩耗計測装置の概念設計,詳細設計,作成,試運転を完了しており,当初計画に対する遅延は生じていない.さらに,本研究を特徴づける新しい機能である摩耗粉の時系列回収装置についても当初計画通りの機能を有することを確認している.また,1年目最終四半期より2年目にかけて行う予定としている測定データの解析アルゴリズム開発も,試運転時のデータを用いて概念設計を開始するなど,順調に進展している.さらには,摩擦・摩耗現象に大きな影響を与えることが知られている大気中湿度について,新しい制御方法を考案して試験機の機能として組み込むことができたのは,当初計画以上の進捗と考えられる. 試験機については,当初予定通りのピン・オン・ディスク型とし,ディスク摩擦位置をロータリーエンコーダーにより特定しながらのデータ収集を実現するハードウエアとソフトウエアを開発した.収集するデータは,計画時より予定していた摩擦力,荷重,試験片摩擦面垂直方向変位,試験片間接触電位に加え,雰囲気ガスの温度と湿度を採用した.試運転を行い,既存の試験機で得ることのできる摩擦力,摩耗量に関して従来試験機と同等の結果を得られることが確認されている. 摩耗粉の回収機構に関しては,摩耗粉の落下位置を制限する機構と,その下を制御された速度で移動する摩耗粉回収板により構成し,摩擦開始時からの時間経過による摩耗粉の大きさや外観の変化が捉えられることを確認した.摩耗粉の大きさと,その摩耗粉が発生した時間帯における試験片変位のデータを比較検討し,両者に相関があることを確認し,摩擦力のデータを複合して処理することができる解析アルゴリズムの検討を開始した.これらの成果は「トライボロジー会議2012春」講演会にて発表することとしている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に関しては,当初予定通り,無潤滑での試験を行い,解析アルゴリズムを発展させる.実験対象としては,当初,軸受鋼を計画していたが,オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316に変更する.これは,新エネルギー媒体として期待されている水素機器においてSUS316系ステンレス鋼が多用されるため,また,オーステナイト系ステンレス鋼の摩擦・摩耗試験結果のばらつきが大きいことが明らかになりつつあり,本研究の目的に合致していると判断されるためである.軸受鋼あるいは軟質金属については,開発した解析アルゴリズムの検証段階で用いることとする. 解析アルゴリズムについては,摩擦条件を変化させて収集した幅広い摩擦摩耗現象に対応するデータの解析と,現象の思考実験に基づき概念設計を完成する.その際,特に摩擦初期における摩耗粉回収の位置精度が重要であることが分かったので,摩耗粉回収機構の改善を図る.具体的には,摩擦初期における摩耗粉回収板の移動速度を速くし,摩擦進行とともに当該移動速度を遅くするように機構を改善する.これらの回収板駆動ドライバーを組み込んだ摩擦情報収集プログラムを開発する.これらの成果については,学術講演会における講演と,国際誌への論文投稿による発表を予定している. 最終年度となる平成25年度については,予定通り,開発したアルゴリズムをより幅広い摩擦条件への適用を行う予定である.これらの摩擦条件には,油潤滑なども含まれるが,まずはベースオイルにおける現象の把握に注力する予定し,十分な知見を得た上で,添加物等の影響に発展させることとする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの研究成果により,摩擦試験初期の摩耗粉回収位置精度の向上が重要な課題であることが分かったので,平成23年度に装置構成の合理化などで節約できた予算を摩耗粉回収装置の改善及びその観察用治具の開発に充当する.摩耗粉回収装置の改善に関しては,自然落下方式,吸入方式,など複数の方式について検討中であり,技術的妥当性を吟味して決定する.その他の研究費使用については,当初計画通り,試験片及び消耗品の購入費,摩耗粉の分析費用,学会参加費及び旅費に充当する計画としている.
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