2012 Fiscal Year Research-status Report
摩擦摩耗における多元情報の客観的複合解析技術の開発
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23560163
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
福田 応夫 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 客員教授 (90532333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 健敬 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70175636)
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Keywords | トライボロジー / 摩耗粉成長 / 慣らし運転 / 摩擦 / 摩耗 / 複合解析 |
Research Abstract |
平成24年度における本研究の実績は、当初計画どおり無潤滑状態での摩擦面凝着物の生成とその状態の解析に関するものである。試験機における測定系および摩耗粉解析技術の改良を研究分担者が行い、しゅう動現象解析技術の開発を代表者が行うという役割分担のもと、研究は良好に遂行された。結果として試験片の摩擦面垂直方向変位の測定精度、および、特にしゅう動試験初期の摩耗粉回収位置精度を向上することができた。また摩耗粉回収機構の駆動ドライバーを組み込んだ多元情報収集プログラムの開発も完了した。 改良された試験機を用い、①繰り返ししゅう動回数5回程度までの初期期間を対象とした詳細な多元情報解析、②大気中湿度を変化させた場合の凝着現象への影響解析、③オーステナイト系ステンレス鋼と高純度銅という性質の異なる材料における現象の違いの解析、などを遂行した。これらの解析により、しゅう動現象が、凝着物の成長や移着、脱落など、いくつかの要素過程に分類できることが示され、かつ、それぞれの要素過程における摩擦力や試験片変位のデータが特有の変化を示すことなどが明らかになりつつある。これらの現象の分類と、その多元情報解析を利用した判別方法の可能性が示されたことは、しゅう動現象の自動判定アルゴリズムを構築する上で有力な成果であると考えられる。 成果の公表に関しては、平成24年度以降年1回程度の頻度で国内学会での発表を予定していたが、予定を上回る成果をあげることができたため、平成24年度中にトライボロジー学会2件および機械学会1件の計3件の発表を行った。また、平成25年度のトライボロジー学会で2件発表申し込みを済ませており、2件の英文論文誌への投稿も準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、代表者らがこれまでに開発してきた摩擦・摩耗現象の解析方法を発展させてしゅう動の初期現象に適用することであり、しゅう動初期における不安定性の原因解明を最終的な目標とする。 これまでの研究により、提案する多元情報複合解析方法が、ごく初期のしゅう動現象変化を詳細に解析できることが明らかとなった。この方法による解析の一例として、ごく初期のしゅう動における大規模な凝着現象の発現形態が、雰囲気中湿度の影響を大きく受けることを示した。さらには、湿度の違いによって特徴的な多元情報の変化が観察されることを見出した。これらの発見は本研究が提案する解析手法により新たに見出された成果である。 また複数種類の情報の複合解析という課題については、オーステナイト系ステンレス鋼と高純度銅という異なる性質をもつ材質が、それぞれ特有の多元情報間の関係を持ち、かつその時間変化も材質に特有であることを明らかにした。 現象解析を自動化するためのアルゴリズムの開発に関しては、各要素過程と多元情報の関係を明らかにする必要がある。これまでに、凝着摩耗を主体とするしゅう動現象において、表面吸着物の影響が大きい過程、凝着物が集められている過程、凝着物が移着する過程、凝着物が転がる過程、などそれぞれの過程が特有の多元情報変化を持つことを明らかにしつつある。 以上のように、本研究の今年度までの目的に対する進捗は、おおむね順調に達成されたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで通り複数種類の材料を対象に無潤滑状態での実験を継続すると共に、次年度に関する当初計画どおり、潤滑油を用いた実験を遂行する。 しゅう動初期における影響の調査に関しては、雰囲気湿度以外のパラメータである荷重などの試験条件に着目して、現象のバラツキに及ぼす影響の調査を発展させる。多元情報変化の解析方法については、要素過程の補遺を行うとともに、各要素過程における情報変化の特性が普遍性を持つかどうかについて、異なる材質間の比較により調査を進める。また、試験片材質、しゅう動試験条件などの入力パラメータと、摩擦力や試験片変位などの出力パラメータのマッピングから得られる指標パラメータの関係について整理し、本研究の成果と課題を整理する。 次年度は本研究が提案する研究の最終年度であるため、本研究により得られた成果について4件程度の学会発表を行うと共に、2件以上の査読付き論文として投稿する。また、開発した解析方法の普及の可能性について、他研究機関のトライボロジー研究者や試験機メーカー担当者などとの意見交換を通して検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、潤滑油を使用した試験を開始するので、その新たな条件で必要となる測定系の改良を予定している。無潤滑時よりも小さな摩擦力の測定を行う必要があるため、より高感度なセンサーを作成する。また、潤滑剤と試験片の調達、試験機において消耗した機械・電気部品の交換などに関する費用が発生する。 次年度は、学会における研究成果発表のほか、研究成果の普及を目的として他研究機関研究者や試験機メーカー担当者との意見交換を行うこととしており、そのための旅費、学会参加費などが発生する。
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