2011 Fiscal Year Research-status Report
ピッチ差を有するボルト・ナットによる緩み止め性能と応力集中緩和効果に関する研究
Project/Area Number |
23560164
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
高瀬 康 九州工業大学, 工学部, 技術専門職員 (30508445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 尚昭 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40172796)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 連続体力学 / 破壊 / 疲労 / 機械要素 |
Research Abstract |
平成23年度の研究実績は以下の通りである.・研究計画[1]ボルト・ナットのピッチ差(α:0~8μm)による緩み止め効果の関係の解明 ここでは,通常ボルトの締付けトルクを求める式(1)を利用する方法で緩み止め効果の検討を以下の手順で行った(ボルト・ナット間にはすき間(クリアランス)がないものと仮定).Ts=(d2/2)Ftanρ+(d2/2)Ftanβ+(dw/2)μF(1) 有効径の基準寸法d2=0.01472m,ボルト軸力FN,ねじ間の摩擦角ρ=arctan(μ),ねじのリード角β=0.043°,座面の有効径 dw=0,座面間の平均摩擦係数μ=0.3(1)微小α(2,4,6,8μm)を付与した条件で有限要素法により軸力を求め,次に,式(1)より,プリベリングトルクTS(締結力が生じるまでに,ナットの回転挿入に要するトルク)を求める.このTSは実験結果とほぼ一致することを確かめており,簡便にプリベリングトルクを評価できることを確認した.(2)αに対するTs値は,α=2[μm]:Ts=20.3[kN・m]から,α=8[μm],Ts=82.4[kN・m]と,ピッチ差に比例して増加することがわかった.(3)TSが13.5N・mの場合にねじ締結体は十分な緩止め性能があることを緩み試験機を用いて確認できているので,α=2μm以上で緩み止め効果があると評価できた.・研究計画[2]ビッチ差(0~8μm)と応力集中緩和効果の関係の解明 αを変化させてボルト・ナット締結体の応力集中効果を,荷重条件を変えて有限要素法により解析し,各荷重条件に対する最適なピッチ差の範囲を求めた[解析条件:αの範囲0~8μm,ボルトサイズM16,ナットのねじ山数8山,静的荷重20,30kN,変動荷重±1.5,±3.0 kN].この結果,各荷重条件に共通して,α=2~3μmが強度上の最適条件であることが分った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題を大きく2つに分けており((1)ねじの強度,(2)ナットの緩み),それらは相反する面をもっているので,双方共に最良になる条件を見出すには,なお検討を要する.しかし,予定していた1年目の(1)の解析と(2)の実験は,お互い矛盾することなく,共通する条件を求めることができ,順調と判断した.しかし,解析モデルを実施適用の可能性の視点からみると,ねじとボルト間にすき間(クリアランス)のない理想モデルでの検討には問題があるとの見解も出てきた.したがって,今後はモデルを大幅に修正する必要があるため,達成度を(1)にできなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初のモデルは,ボルト・ナット締結体の初期条件を接触部ですき間(クリアランス)がないことを前提にした,理想(仮想)モデルを対象にしていた.しかし,将来の実用化を想定すれば,現実に存在するクリアランスを有するモデルを対象にすべきであるとの結論に達し,2年目以降の研究は,23年度(1年目)とは,この点で大きな変更となる.この変更点を前提として,改めて,ピッチ差αとねじ底応力,緩み止め効果との関連を検討していくことにする.(1)そこで24年度は,(1)クリアランス存在下でのねじ底応力とピッチ差αの関係,それを裏付けるための疲労試験,(2)同じく,緩み止め効果とピッチ差の関係を主として緩み評価試験機を用いて評価し,クリアランス存在下のαの最適範囲を究明していく.(2)また,25年度は,24年度において目標とした疲労強度や緩み止め効果の向上の達成水準を見て,未達部分を補強する方法の検討,その1つとしてボルト外径の特殊テーパー化(既存技術であるCDボルトとは異なる)による効果を究明していく.尚,当初の計画に含めていた「植込みボルト」に対する研究は,クリアランス条件の導入といった大きな変更点が生じたために,本研究には含めないことにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費:合計800,000円(1)旅費(調査・成果発表旅費等):小計500,000円[内訳・代表者調査旅費:50,000円・代表者成果発表旅費:75,000円・分担者調査旅費:175,000円・分担者成果発表旅費:200,000円](2)謝金(実験費用):小計260,000円[内訳・ボルトの疲労試験費用: 160,000円・ゆるみ,トルク試験費用:100,000円](3)その他(試験片製作費):小計40,000円[内訳・ボルトの疲労試験片製作費: 30,000円・ゆるみ,トルク試験片製作費:10,000円]
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