2011 Fiscal Year Research-status Report
傾斜遠心顕微鏡を用いた血管表面の凹凸が好中球の挙動に与える影響に関する実験的研究
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23560183
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白井 敦 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (20302226)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 好中球 / 血管内皮細胞 / 傾斜遠心顕微鏡 / PTV |
Research Abstract |
平成23年度は,平成24年度以降の実験ための基礎データを蓄積することを目的とした.そのために,傾斜遠心顕微鏡を用いて,以下の2点について解析を行った.(1)画像処理によるPTVにおけるHL60細胞の速度計測誤差の低減.(2)種々の押しつけ力および駆動力下におけるHUVEC基板上のHL60細胞の挙動解析.これまで,傾斜遠心顕微鏡の回転むらやモータの振動等に起因して,PTV計測において血球の移動速度に誤差が含まれることが問題であった.そこで,ガラス平板にCrエッチングで十字線を描き,特徴点抽出手法の一つであるハフ変換を用いて十字線を抽出し,高精度で交点座標を計算する手法を開発した.しかし,本手法では線幅に起因して正確に各線の中心を抽出することが困難であり,PTV計測に誤差が残ることが確認された.そのため,基板上に静止している細胞を自動的に抽出し,これを用いて残存誤差を低減する手法を提案した.その結果,従来よりも非常に高精度で画像補整が可能となった.次に,HUVEC基板上においてHL60がHUVECの核を避けるように移動する挙動について,種々の駆動条件について詳しく解析した.駆動条件として,遠心力の基板接線方向成分FTを10,30,50pN,基板法線方向成分FNを30,47,94pNと変化させた結果,FNが大きいほど基板表面の凹凸の影響を強く受けることが明らかになった.また,FTに関しては,全体的な速度の大きさに影響を与えることが明らかになった.更に,HUVECに流れ負荷を与えて配向させた場合,その向きがHL60の挙動に影響を与えることが確認され,HUVECがFT方向に配向した場合は,HL60はより直線的に移動することが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していた研究は順調に消化され,以降の研究のための重要な基礎データを蓄積した.そこで,平成25年度で行う予定の科学誘因物質による刺激がHL60の挙動に与える影響に関する予備実験を行った.その中で,fMLPを用いて刺激した結果,予想と逆の結果が得られた.すなわち,好中球を用いた従来の研究では,fMLPによる血球の活性化により血管内皮細胞への付着が上昇することが明らかになっており,好中球のモデル細胞として広く用いられているHL60も同様の特性を示すと考えていた.しかし,傾斜遠心顕微鏡を用いた,HUVECを培養したガラス平板上における移動速度をfMLPで刺激していないHL60と比較したところ,刺激した細胞の方が,平均移動速度が大きいことが明らかになった.これは,HUVEC基板への付着率が低いことを表しており,先に述べた知見と逆の結果となった.そのため,当初は平成24年度には凹凸をつけたガラス平板を用いたHL60細胞の移動速度計測を予定していたが,先に好中球との差異を明らかにする必要があることが示された.
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」で述べたように,これまで用いてきたHL60細胞が,好中球と異なる反応を示す可能性ができたため,その原因を究明することを第一の目標とする.そこで,まず,全トランス型レチノイン酸(All-trans retinoic acid; ATRA)またはジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide; DMSO)を用いてHL60を好中球様細胞に分化させる技術を確立させる.そして,これを用いて,HUVEC基板上における移動速度計測を行う予定である.分化させたHL60が従来の研究と同じ結果になれば,以降の実験を予定通りに遂行するが,分化させていないHL60と同じ結果になった場合は,実際の好中球を用いて同様の実験を行う予定である.そして,分化させたHL60または実際の好中球を用いてガラス基板を用いた実験を行う予定である.また,これと平行して,平成23年度に行った実験についても再現を行う.HUVEC基板の凹凸が血球挙動に与える影響については,定量的には差があるものの定性的には同じ結果が得られると考えられる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したこと,および購入したセルカウンターの価格改定に伴い発生した未使用額,平成24年度請求額とあわせ,次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である.
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Research Products
(4 results)