2013 Fiscal Year Annual Research Report
傾斜遠心顕微鏡を用いた血管表面の凹凸が好中球の挙動に与える影響に関する実験的研究
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23560183
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白井 敦 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (20302226)
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Keywords | HL-60 / 傾斜遠心顕微鏡 / MPCポリマー / HUVEC |
Research Abstract |
平成25年度は,HL60の挙動に与える接着分子の影響とそれ以外の分離を行うとともに,血管内皮表面の凹凸と細胞の接着の影響の比較を行った. まず,細胞の接着を阻害するMPCポリマーでコーティングしたガラス基板上における分化したHL-60と未分化の細胞の挙動を比較した.その結果,MPCポリマーでコーティングした基板上では,分化の有無に関わらずHL-60の細胞の付着率が大幅に減少することが確認された.また,平均移動速度に関して未処理のガラス平板とは大きな差は見られないが,分化した細胞の方が速度が小さいことが確認された.このことから,好中球の粘着は付着率にのみ影響を与えること,分化による平均移動速度の変化は細胞の表面性状の変化に起因することが示された. 次に,ガラス平板にHUVECを培養した基板を用いて同様の解析を行った.ここで,血管内皮細胞は血流による剪断応力に曝されると流れ方向に配向することが知られており,配向の有無によるHL-60の挙動の比較も行った.その結果,未分化のHL-60では,配向により平均移動速度が上昇することが確認されたが,分化したHL-60では差は見られなかった.分化したHL-60は,HUVECの配向による物理的な抵抗が減少したものの,発現した接着分子の結合による抗力が増加したため,結果的に移動速度の変化が見られなかったと考えられる.また,HUVEC上においてHL-60は隣り合うHVUECの間を転がることが確認された. これまでの成果を総合すると,血管内皮の配向による血球のローリングに対する抵抗減少は,接着分子の発現に依る抵抗の増加と同程度であることが示された.また,P-セレクチンは血管辺縁部に特異的に発現することから,血管内皮の凹凸は,好中球の血管内皮に対する粘着を促進する働きを有するといえる.
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