2012 Fiscal Year Research-status Report
希薄気体力学効果を利用した新しい気体潤滑システムの開発
Project/Area Number |
23560184
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米村 茂 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (00282004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹野 貴法 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00451617)
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Keywords | トライボロジー / 気体潤滑 / 希薄気体力学 / DSMC法 / 流体工学 |
Research Abstract |
研究代表者は、微細加工した表面と平坦面を摺動させることにより、両面間に挟まれた空気に高圧力が発生して、気体潤滑となることを数値解析により示し、また、この圧力発生が希薄気体力学的な効果により引き起こされ、ナノスケール流れ独特の現象であることを明らかにしている。本研究では、この現象を応用して、新しいタイプの気体潤滑システムを提案・開発することを目的としている。 これまでに研究代表者が明らかにした気体潤滑機構は、摺動方向に1次元的な表面形状パターンを持つ摺動面に関するものであり、潤滑領域は2次元的であった。つまり、摺動方向(x軸)と両面に対して垂直な方向(y軸)を含むxy平面の2次元場に対して理論を構築し、この平面に垂直な奥行き方向(z軸)には同じ形状の流路が無限に続いているものと仮定して、奥行き方向の流れは考慮していなかった。しかし実際には、奥行き方向に流路があり大気に開放されているのであれば、奥行き方向から空気が漏れ、期待したような高圧力が得られない可能性が高い。そこで平成24年度は数値シミュレーションを3次元化し、奥行き方向への空気の側方漏れについて検討を行った。3次元数値シミュレーションの結果、側方漏れが起こることを確認したが、それをほぼ完全に抑制する方法を見出した。 本研究で用いたDSMC法は、ここで取り扱うような分子速度に比してずっと小さい流速の流れを取り扱う場合には統計誤差が大きくなり、それを抑制するために、多くのサンプル分子を扱う必要があり、計算負荷が非常に大きくなる。この問題は3次元場で特に問題となる。平成24年度には、計算空間を分割し、並列化する効率の良い計算コードを構築し、前述の3次元シミュレーションを実行した。これにより、2次元的な表面パターンの摺動面が作る3次元的な潤滑領域の解析も可能となり、今後の理論構築およびシステムの開発に役立てることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で記した通り、数値シミュレーションによる理論構築は順調に進んでいる。一方で、摺動面の試作による検証実験は遅れている。 実験に用いる摺動面には、平坦面に微細な形状の穴を加工する必要があるが、この加工が遅れている。数値シミュレーションで予測された最適形状にあわせて加工するためには、微細な穴の切削加工が必要であるだけでなく、穴以外の部分でもナノスケールの平坦度を実現することも数値計算に基づく設計から求められている。一方で、摺動面の接触により微細構造が壊れないようにするためには、高硬度の材料を用いる必要がある。以上のことから交付申請書に計画した通り、基板上にダイヤモンド膜を蒸着しレーザー加工することを考えていた。しかし、ダイヤモンド膜を蒸着する際には密着性向上の観点から表面をわざと粗くする必要があることからナノスケールでの平坦度の確保にはマイナスである。この問題点を補うためには、蒸着したダイヤモンド膜を研磨して、高い平坦度を実現すればよいが、そのためにはダイヤモンド膜にある程度の厚みを持たせなければならない。ダイヤモンド膜に厚みを持たせると、応力が残留してしまい、やはり密着強度の課題が出てくる。この課題を解決できず、検証実験が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度まではダイヤモンド膜を用いて、摺動面の試作および検証実験を行うことを試みたが、「現在までの達成度」欄に記載した困難さから、今後はダイヤモンド膜ではなく、やや硬度は劣るがダイヤモンドライクカーボンの膜による摺動面の試作を検討する。 ミラー面を有する単結晶シリコンの表面にレーザー加工により微細形状を持つ穴を加工した上で、ダイヤモンドライクカーボン膜を作製すれば、原子レベルの平坦度を実現できると考えられる。これを用いて摺動試験を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、上述したように24年度に高価なレーザー加工の段階にまで至らなかったことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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