2011 Fiscal Year Research-status Report
高分子鎖コイル-ストレッチ遷移における非アファイン性に着目した抵抗低減機構の解明
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23560188
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀内 潔 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10173626)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 抵抗低減 / 高分子添加 / 界面活性剤 / 粘弾性流体 / ブラウ二アン力学 / Elastic dumbbellモデル / 反変・共変ベクトル / エネルギーカスケード |
Research Abstract |
本年度は,高分子鎖の動力学を直接計算して流れ場との相互作用を取り入れる解析により,非アファイン粘弾性流体における抵抗低減機構の解明を目指した.先ず,非アファイン性が最大の場合の顕著な抵抗低減の壁乱流における検証のため,高分子応力のJohnson-Segalman (J-S)構成方程式を用いた管内流のDNSを行い,Virkの最大低減漸近を超える低減が起きる事を示した.次に,高分子鎖を連結粒子系として扱いdumbbellモデルによって近似するBrownian dynamics simulation (BDS)と乱流のDNSとの結合法(BDS-DNS)のためのコードを,一様等方乱流を対象として開発した.2個のbeadsをバネで結合したbeads-springにFENE補正を導入したdumbbellモデルを用い,beads間ベクトルRと重心ベクトルr の運動方程式の時間積分による追跡を行った.DNSでは,外力注入により平衡状態を実現し,BDSではslip velocityを導入することにより,非affine性を考慮したBDS-DNSを実現し,R から得られる高分子応力をDNSにフィードバックを行わないone-way couplingと行うtwo-way couplingを行った.次に,dumbbellの配向を検証し,非アファイン性が最小の場合,dumbbell は反変ベクトルとして運動し,渦管の軸方向に並列して配向して渦管の伸長が抑制され,抵抗低減が生じる事を示した.非アファイン性が最大の場合,dumbbell は共変ベクトルとして運動し,渦層の法線方向に並列して配向し,渦層に張力を及ぼして渦層の伸長を抑制し,渦層-渦管遷移の発生そのものを抑制するため顕著な抵抗低減が起きる事を明らかにした.この結果は,J-S方程式により得られた機構およびde Gennes の仮説と整合している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書を作成した段階では想定されていなかった新しい結果が得られたため,(1)とした.特に,非アファイン性が最小と最大の場合における抵抗低減機構の相違が,dumbbellの端末間ベクトルの反変性と共変性に起因する事が示された.即ち,最小の場合,dumbbell はmaterial line element と相似な反変ベクトルとして運動するのにたいして,最大の場合はmaterial surface element と相似な共変ベクトルとして運動する事が明らかにされた.共変性を示す端末間ベクトルの配向は,界面活性剤で見られる親水性と疎水性分子が形成するミセル構造に類似である点に着目し,界面活性剤添加におけるVirkの最大低減漸近を超える顕著な抵抗低減が,この共変性に起因するという仮説を立て,その検証のため管内流の構成方程式を用いたDNSを行い,仮説の妥当性を示した.過去の界面活性剤の研究においては,反変性を仮定した解析が多く,共変性を考慮した抵抗低減の研究はほとんど無いように見受けられるが,反変性を仮定した場合の予測制度は低いものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は,基本的に研究計画に基づいて進める.本年度行ったBDS-DNSでは,dumbbellの端末間ベクトルから算出された高分子応力をDNSに体積力としてフィードバックするtwo-way coupling法を用いているが,得られた高分子応力の強度が,対応する構成方程式で得られた応力に比べて小さめに評価されるため,one-way couplingによる結果との相違があまり見られない結果が得られている.平成24年度は,特に,この過小評価の要因の解明と,より予測制度の高いBDS-DNS法の開発を目指す.この計算から得られたデータを用いて、Dumbbellの伸長と非affine性強度の相関を考察し,coil-stretch遷移での非affine性強度を示す.高分子応力から法線応力差とせん断応力を算出し,伸長粘度とせん断粘度を求める.更に,高分子応力の異方性と高分子鎖の配向との相関を示し,弾性効果が発生している領域を特定する.次に,BDS-DNSの一様等方乱流から壁乱流への拡張を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高分子添加溶液の特性は、Weissenberg数とdumbbellの最大伸長長さ等に大きく依存するために,多数ケースの計算が必要となる。この計算の実効には,大阪大学サイバー・メディア・センター設置のベクトル・並列型スーパー・コンピュータSX-9を利用する予定である.研究費の一部は、この使用料に充てられる.更に,計算結果のデータは,DNSの速度,圧力,高分子応力の他に,dumbbellの位置情報から成るため,それらのデータのストレージのための周辺機器を購入する予定である.
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