2011 Fiscal Year Research-status Report
格子ボルツマン法を用いたマイクロスケールの複雑流路内における固液混相流解析
Project/Area Number |
23560192
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉野 正人 信州大学, 工学部, 准教授 (00324228)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 固液二相流 / 粘弾性物体 / 格子ボルツマン法 / マイクロ流路 / 複雑流 |
Research Abstract |
平成22年度までに申請者らが構築した粘弾性皮膜物体(以下では単に物体とよぶ)の二次元モデルは,並進方向のバネ対する弾性力のみが考慮されたものであり,汎用性のある物理モデルを構築するためには改良が必要であった.そこで今年度は,まず並進方向に加えて回転方向の弾性力も作用するように,曲げを表現することができるバネを導入した.また,本モデルを三次元計算に適用できるように拡張し,力学的特性に関する妥当性の評価を行った. 計算結果の一例として,曲がり管内を流れる変形する物体の挙動シミュレーションについて述べる.正方形の矩形断面(W×W)をもち,曲率半径がWの曲がり部をもつU字管を考える.この管の入口に直径Dの球形の物体を置き,圧力差で駆動する流れ場における物体の挙動解析を行った.物体の挙動におよぼす管径比の影響を調べるために,管径比D/W=0.2, 0.3,入口の断面平均流速および矩形断面長基準のレイノルズ数を1.4 < Re < 140とし,各管径比に対するレイノルズ数と管出口における物体の位置関係を調べた.その結果,管径比が小さくなるほど物体はより外側を流れやすくなることがわかった.また,入口で管内側に配置された物体が,二次流れの影響を受けて管外側に流路を変える時のレイノルズ数は管径比に依存し,D/W=0.3ではRe≒5.3であることもわかった. 上記で得られた成果は他の研究例でも報告されているが,本研究の特長は,並進および回転といった単純な粘弾性モデルを既存の二相系格子ボルツマン法に組み込むことによって,流体中の物体が様々な形状に変形する複雑な現象をとらえることができる点にある.したがって,本研究の成果は,マイクロ流路内における粘弾性物体の複雑流動現象の解明へ大きな意義がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
変形やひずみを考慮に入れた粘弾性体に対して,球形物体に対する物理モデルの検討は予定通り実施することができた.結果はおおむね良好であり,本モデルの有効性についても確認することができた. しかしながら,楕円体や双凹面形状物体に対しては,モデルの構築は行ったが詳細な検討が必要である.また,PCクラスターなどの並列計算用のFORTARNコードの作成についても,まだ完成には至っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に残された課題(球状物体以外の楕円体や双凹面形状物体に対する検討ならびに並列計算用のコーディング)について,平成24年7月末を目途に早急に実施する予定である. その後,これまでに得られた結果を踏まえて,種々の物理パラメータに対する三次元数値シミュレーションを行い,せん断応力や抵抗係数,またせん断流の問題では変形度および傾き角などの物理量に関して,既存の実験データとの比較を行う.また,他の数値計算法(例えば粒子法など)との比較から,本手法の優位性について検討する. さらに,上記で得られた手法を用いて,マイクロチャネル内の粘弾性皮膜構造をもつ物体を含む混相流現象の解明に取り組む.種々のレイノルズ数に対して,物体の挙動と流れ場の時間的な変化を求め,内部壁面への物体衝突のダイナミクスについて検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本モデルを用いて三次元計算を実施するには,並列計算機(PowerEdge T310 インテル(R)Xeon(R)プロセッサー 3.06GHz, 8GBメモリ)が必要になる.また,得られた結果を可視化するためのデータ解析ソフトウエアを購入する予定である.なお,解析データ保存用のハードディスクも必要になる.
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