2012 Fiscal Year Research-status Report
格子ボルツマン法を用いたマイクロスケールの複雑流路内における固液混相流解析
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23560192
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉野 正人 信州大学, 工学部, 教授 (00324228)
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Keywords | 固液二相流 / 粘弾性物体 / 格子ボルツマン法 / マイクロフルイディクス / 赤血球 / 複雑混相流 |
Research Abstract |
平成23年度までに申請者らが構築した粘弾性皮膜モデルをさらに拡張して,変形やひずみを考慮に入れた物体モデルを考案し,球形のみならず楕円体や赤血球などにみられる双凹面体形状の皮膜物体を扱えるように改良を行った.また,計算手法としては,円管など曲がった境界をもつ管内流れにも適用できるように,格子ボルツマン法に埋め込み境界法を導入した手法(IB-LBM)を構築した. 上記の物体モデルおよび計算手法を用いて,双凹面形状物体に対して,赤血球が血漿中を流れる際の挙動をどの程度正確に模擬できるかを確認するために,ヒトの血流の物理パラメータを用いて円管内ポアズイユ流の計算を行った.得られた物体形状の時間変化ならびに終端速度と変形度との関係を既存の実験および計算結果と比較したところ,良好に一致することがわかり本手法の妥当性が確認できた. 次に,血管狭窄部における赤血球の挙動を調べるために,中央付近に狭窄部をもつ円管内を圧力勾配によって流れる双凹面形状物体の挙動解析を行った.本研究では特に,狭窄部の長さおよび大きさが物体の挙動に与える影響について調べた.いずれのケースも,物体の終端速度および初期の長径基準のレイノルズ数がRe=0.10の条件で計算を行った.前者のケースでは,狭窄部の長さが短くなるほど,流路幅が急激に変化するために物体の変形度は大きくなる結果となった.また,狭窄部の出入口において物体は加速するが,狭窄部内での移動速度は小さいことがわかった.一方後者のケースにおいて,狭窄部の最小径が大きくなるほど変形度は線形的に減少し,また流れ方向の流速は指数関数的に増加することがわかった. 以上の結果に基づく考察から,本手法は微小血管内における赤血球の挙動解析に適用可能であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に構築がやや遅れていた楕円体や双凹面形状の物体モデルがほぼ完成し,種々の物理パラメータに対する三次元数値シミュレーションを実施することができた.また,得られた変形度などの物理量に対して既存の実験データや他の計算結果と比較し,良好な結果が得られている.さらに,狭窄部をもつ円管内ポアズイユ流に対して,双凹面形状物体の挙動解析も実施することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本手法の適用例としてヒトの血流を取り上げ,粘性係数や密度などの物性値として標準的なヒトの血液データを入力することによって,狭窄部を含む血管内における固液混相流解析を実施する.特に,マイクロスケールの血管狭窄部における閉塞現象の解析を行い,その現象がどのような物理条件(例えば,血液の粘性やヘマトクリット値など)のもとで発生しやすいのかについて考察を行う.さらに,現行では剛体壁として構築した血管に弾性を組み込むことによって,その性質が血管内を流れる赤血球の挙動にどのような影響を与えるかについて調べる予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
シミュレーション結果を可視化するためのソフトウエアを購入する予定である.また,解析データ保存用のハードディスクやメインメモリの増設,さらには高性能なグラフィックボードもあわせて必要になる. なお平成24年度においては,学会や研究会への参加件数が当初の計画に比べて少なく,64,000円程度の次年度繰越金が生じる結果となった.平成25年度は,これらの繰越金を成果発表を目的とした学会参加費用に充てたいと考えている.
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Research Products
(5 results)