2011 Fiscal Year Research-status Report
マイクロチャンネルにおける分子交換流を用いた気体分離法の開発
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23560196
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉元 宏 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50222055)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 気体膜分離 / 熱遷移流 / 希薄気体力学 / Knudsenポンプ / マイクロ流体 / MEMS / 分子流体力学 / 熱拡散 |
Research Abstract |
1. 大気圧下における熱遷移流の誘起試験:本研究で開発する気体分離装置の特徴は,マイクロチャンネル内部において,希薄気体の効果による熱遷移流を発生させることである.熱遷移流を大気圧下で発生させる方法には多くの提案があるが,その中でもセルロース混合エステル(MCE)膜を用いる方法が有効であると考え,MCE膜を用いた熱遷移流発生装置の試作研究を行った.この装置は,申請者が以前に提案した多層膜を用いた方法を組み合わせることにより,気体分離装置として発展させることができると思われる.また,次年度以降に行う,大気圧下における気体分離実験に向けて,四重極質量分析計を用いた計測システムを構築した.2. 気体分離装置の概要設計:上記1.で実現した熱遷移流発生方法を考慮して,混合気体分離の試験装置の概要設計を行った.設計においては,分離装置内部の混合気体の濃度を模擬するモデルを構築して利用した.このモデルは,チャンネル内部の混合希薄気体の質量流量データベースを質量保存則に応用し,装置内部の混合気体の濃度分布を高速に得ることができるものである.このモデルの正当性を評価するために,混合希薄気体のボルツマン方程式に基づくDSMC法による数値シミュレーションも行い,計算時間が1万倍ほど違うにもかかわらず,定量的にかなり近い結果が得られることを確認した.これらの研究では,マイクロチャンネル内部の流れを,当初計画に記載してある分子交換流に制約せず,様々な状況について分離シミュレーションを行い,本研究で開発する気体分離方法の特徴を明らかにした.この結果は,2012年の国際希薄気体力学会において発表する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大気圧下における熱遷移流の誘起については,予想以上に進展し,既に希薄気体分離試験装置はほぼ完成したといえる.次年度に予定していた実証試験も既に開始している.気体分離装置内部の気体挙動のシミュレーションは,モデルの構築には成功したという点では,計画通りである.しかし,実験装置内部の流れを予想し,設計に応用するという点には,次の問題が残されている.(1)非線形系となるために,結果の系統的な整理が困難である.(2)マイクロチャンネル内部の希薄気流のデータベースが2次元チャンネルのままであり,定量的には実際と大きく異なる可能性が高い.これらの問題点を考慮して,「(2)おおむね順調」と評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として,次の3点の研究を進める.1.気体分離試験:試作した気体分離試験装置を用い,気体分離の実証試験を進める.2.大流量気体分離装置の提案:今年度の研究成果では,現在試作している装置のままでは,装置で得られる濃度変化を大きくすると,出力流量が減少することが明らかとなった.ただし,本装置は,積層することにより,濃度の変化量を保ったまま出力流量を増やすことができると期待される.このアイデアについて,数値シミュレーションによる解析を進める.3.3D効果の解析:気体分離装置内部の気体の流れには,MCE膜内のマイクロチャンネルにおける三次元性の効果や,膜の表裏の温度差を維持するための装置構造による,膜面に沿った流れの三次元性の効果が大きく表れると予想される.これらの影響を評価する数値シミュレーションを実施する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.気体分離試験:現在試みている気体分離実験を継続する.申請時の計画では,圧力計(150千円)を導入する予定であったが,電子式IC圧力計(4千円)に変更,ダイアフラムポンプ(200千円)の代わりにマスフローコントローラ(10千円)を導入する予定である.この他,実験用ガスなどを購入する.2.大流量気体分離装置の提案・3D効果の解析:現有の並列計算機システムを利用して研究を進める.研究の進展状況に応じて,計算ノードのパーツ更新,および,上記1の試験装置の改造費用が発生する.3.研究成果発表:2012年国際希薄気体力学会に参加し,研究発表を行う.
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