2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560201
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
渡辺 敬三 首都大学東京, 理工学研究科, 名誉教授 (20072134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小方 聡 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50315751)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 流体工学 / 抵抗減少効果 / バイオ繊維 / 円管内流れ |
Research Abstract |
抵抗減少効果の受動的な手法のうち,その低減量が比較的大きなもので高分子添加剤を用いるものはトムズ効果と呼ばれ,現在まで多くの研究がなされている.また,高分子と異なり機械的なせん断によって劣化しにくい界面活性剤は,近年工業的にも都市の熱エネルギー供給パイプラインシステムやビルの暖冷房空調システムに多く応用されている.しかしながら,高分子や界面活性剤の抵抗減少添加剤を用いた水溶液の廃棄、溶液が管端で解放され放出された場合に生ずる泡や液体の飛散は環境負荷や人体の健康への影響が大きく,その応用は閉回路のパイプラインシステムに限定されている.それゆえ,それらの影響を無くすことを考えるならば,今後は抵抗低減剤におけるバイオポリマーやバイオ繊維の応用が注目される. よって,本研究は従来ほとんど注目されなかった流体輸送管路の摩擦抵抗低減化に対して人体や環境負荷を与えないバイオ繊維に着目して,劣化特性を含めたそれら懸濁液のレオロジー特性及び抵抗減少効果の特性を実験的に明らかにし,その工業的応用を図ることを目的としている.すなわち,研究項目としては,抵抗減少効果の現象論的な把握,懸濁液のレオロジー特性の測定そして抵抗減少効果を支配する因子の特定などを3年間にわたって実施する計画である.研究初年度の平成23年度は供試バイオ繊維として絹糸を選定し,繊維直径と長さの比である(l/d)の調整,遠心ポンプと流量測定装置を含む圧力損失測定用管路の実験装置を設計・製作した.一方,バイオポリマーの抵抗減少効果の研究も申請者らの産学協同研究によって並行して実施され,2012年3月11に金沢工業大学で開催された日本機械学会北陸信越支部講演会の基調講演で報告された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は,本研究目的を達成するため(1)供試絹糸及び懸濁液の作成,(2)抵抗減少効果の測定,及び(3) 供試懸濁液のレオロジー定数の測定について研究実施計画を立て研究を行った.達成度に関する自己評価として,やや遅れている.その理由は以下の通りである. 上記項目のうち,(1)供試絹糸及び懸濁液の作成が十分でなく,その結果として(3)供試懸濁液のレオロジー定数の測定は実施されていないことに起因する. 供試バイオ繊維として絹糸,木綿糸及び麻糸を計画した.しかしながら,予算の制約もあり,絹糸のみを購入して一定の繊維長さに切断する方法が種々試みたが,絹糸の柔軟性と長さの絶対値が微小であることより適正切断による試料の製作ができなかった.そのため供試縣濁液の作成が十分達成されず,圧力損失及び物性測定の予備実験が実施出来なかった.一方,抵抗減少効果の確認は円管内の圧力損失測定より行う計画で,新しく口径50mmx40mmの遠心ポンプによる循環式のパイプライン装置を計画通り,設計・製作した.試験測定管路の管径は10,20,30mmで予備実験として水道水の管摩擦係数が測定された.その測定可能なレイノルズ数範囲は1,000<Re<1,000,000で予備実験の結果である水道水の管摩擦係数はブラシウスの式に良く一致することが分かり,基本的な実験装置の設計・製作は年度当初の究計画通り全て達成された.
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Strategy for Future Research Activity |
円管内流れの圧力損失測定装置が完成し,当初予定のレイノルズ数範囲における測定が可能であることが水道水を用いた予備実験で確認されたので,抵抗減少効果の現象論的な把握のために平成24年度はバイオ繊維縣濁液の流動実験を行う予定である.供試バイオ繊維としては,繊維のヤング率の抵抗減少効果に及ぼす影響を明らかにするために絹糸,木綿糸,麻糸の(l/d)=100~300を予定する.測定濃度範囲については200~1000ppmを予定し,圧力損失及び流れの可視化や速度分布測定などを行い,流れの流動様相を明らかにする計画である.圧力損失測定に関しては,管路内径は10,20,30mmの3種類で行い,抵抗現象効果に及ぼす管径の影響を明らかにする.また,流れの可視化や速度分布測定に関しては,管内径30mmの管で実験をする予定である. 一方,繊維の切断方法に関しては一定の(l/d)を揃えるところまでいくように種々の切断方法を試みる予定である.さらに,切断された繊維をふるいにかけ,長い繊維や短い繊維を選択的に取り除くことで,一定の(l/d)を揃える.縣濁液のレオロジー定数である粘度及び粘弾性特性の測定も並行して,自作の細管粘度計や回転粘度計を用いて行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に抵抗減少効果を明らかにするための円管内乱流の圧力損失測定用の実験装置が完成されたので,今年度は実験用消耗品費に関して供試バイオ繊維縣濁液の試料作製と流れの可視化実験用部品製作費に使用する. また,抵抗低減剤であるキサンタンガムやガァーガムを用いたバイオポリマー水溶液の研究結果がまとまりつつあるので,これらの結果を抵抗減少効果に関する国際的な情報交換の場である‘12 EDRFCM (2012年欧州抵抗減少効果と乱流制御会議)に学会出席してバイオ繊維縣濁液の抵抗減少効果に関する研究の情報交換と研究討論を行う予定である.
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Research Products
(1 results)