2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560203
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
加藤 健司 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10177438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇本 辰郎 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10254385)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 表面・界面物性 / 接触角 / 動的ぬれ / 毛細管 / マイクロマシン |
Research Abstract |
毛細管内液柱の挙動ならびに速度に対する接触角の変化について,実験装置を作成して計測を行った.毛細管開放側の空気圧力を様々な値に調整し,管内液柱の挙動をCCDカメラにより観測した.本実験で対象とする毛細管流れでは,慣性力の影響は表面張力や重力に比して小さく,液柱先端の液体メニスカス表面形状は,軸対称静止液体に対するラプラスの方程式でよく近似できることを確認した.管壁におけるメニスカス高さの測定値を用い,メニスカス形状に合うような理論曲線を求め,その壁面での勾配から接触角を求めた.数種類の管内径および供試液体に対し,種々の設定圧力時における液柱高さの時間変化と動的接触角の測定を行った.毛細管内液柱の運動に対し,従来のLucas-Washburn方程式に接触角の速度依存性を考慮した修正を行い,液柱高さの時間変化を求めたところ,様々な条件下における毛細管流れが正確に説明できることを示した. 壁面上を有限速度で移動する固気液3相の接触線の挙動を,Front-Tracking法を用いて数値シミュレーションを行った.壁面上の境界条件として,Navierのすべり長さに加え,接触線上での過剰応力を考慮に入れた境界条件を提案した.滑面上に周囲とぬれ性の異なる円形の欠陥が存在する系を対象に計算を行ったところ,接触線の一部が欠陥領域にトラップされ変形した後,急激に解放され元の直線形状へと回復する挙動を表現することができた.接触線の運動に伴う粘性摩擦仕事,欠陥通過の際の気液界面変形仕事ならびに壁面を乾かすのに必要な仕事量を求めた.その結果を用い,変形仕事の動的接触角に及ぼす影響について考察を行ったところ,動的ぬれ挙動に対して無視できない寄与のあることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要な目的である,毛細管内の液柱の運動を対象とした動的接触角の値を測定し,誤差1°程度と従来の報告に比して精度のよいデータを取得することができた.毛細管の材質・管内径,ならびに供試液体を変化させた場合について,開放側の種々の圧力における動的接触角の広範な測定を行った.その結果,毛細管内の液柱の挙動が動的ぬれを考慮したLucas-Washuburn方程式で正確に記述できること,ならびに動的接触角の値は粘性力と表面張力の比であるキャピラリ数のみでは整理できず,壁面性状に大きく依存することを示した.また,欠陥を通過する接触線の挙動について,新たな計算モデルによるシミュレーションを行った.その結果,欠陥部を通過する接触線の挙動が再現でき,気液界面の変形の動的ぬれ挙動に及ぼす影響を示すことができた.これらの結果は,従来明らかにされていない動的ぬれ挙動のメカニズムの説明に新たな知見を与えるものであり,本研究は当初の目的に沿っておおむね順調に進展しているものといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
数値計算において,接触線の移動速度や欠陥の幾何学的寸法・形状を様々に変化させ,欠陥部を通過する際の接触線の変形エネルギーの計算を行う.また,接触線の変形挙動について実験的に観測を行う.シリコン基板上に,分子レベルで平滑な撥水性のSAMs(自己組織化単分子膜)を施した試料表面を用意して,本学が所有する収束イオンビームナノ加工顕微鏡装置により,局所的にSAMs膜をはぎ取り,数10μmから数100μm程度の円形状の欠陥を施す.この欠陥部を接触線が通過する際の,局所的な接触角の変化について測定を行う.20μm程度に集光したレーザースポットを接触線近傍の液体表面上に照射し,試料板ならびにレーザー光源をステッピングモータにより同じ速度で引き上げる.引き上げ速度は接触線の移動速度に等しく,その値を様々な値 (数mm/s~50mm/s)に変化させて実験を行う.レーザー照射位置の液体表面傾斜角度の変化(接触角の変化)に応じ,レーザー反射光スポットは受光板上を移動する.その変位の時間挙動を,ハイスピードビデオカメラにより観測する.スポットの変位の測定値を用い,単純な幾何学的関係より局所の接触角変化が検出できる.接触線が撥水性の基板から欠陥部に達すると,接触角が徐々に減少する.一定値に落ち着いた後,欠陥部を外れる瞬間において急激なジャンプが生じ,基板の接触角へと回復する.このような変化が生じる時間Δtにおいて,接触線は欠陥部にトラップされていると考えられる.測定を数多く繰り返して統計的な処理を行うことにより,接触線の変形スケールLを,L=UΔt(U:接触線の速度)より求める.この実験結果ならびに同じ欠陥を通過する接触線の挙動に対する数値シミュレーション結果より,動的ぬれ挙動のメカニズムを考察する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記今後の研究の推進方策に則り,主に実験に用いる備品購入・消耗品費および試料加工費,ならびに数値計算に用いるPC等に研究費を使用する予定である.
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Research Products
(8 results)