2012 Fiscal Year Research-status Report
急拡大部における製紙用パルプ液の流れと高濃度パルプ繊維の分散制御
Project/Area Number |
23560212
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
角田 勝 近畿大学, 工学部, 教授 (60113403)
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Keywords | 紙・パルプ / 急拡大流路 / パルプ繊維濃度 / 分散制御 / 抄紙機 |
Research Abstract |
製紙業界では、地球温暖化防止に関するCOP15の消費エネルギー削減目標によって、約束の2020年に向けてさらに脱水設備の小型化と省エネルギーが強く求められている。また、東日本大震災による電力消費の大幅削減の要請とも相まって、業界ではこれまでの0.5~0.8%の低濃度パルプ液から、高濃度パルプ液中でも繊維分散が可能となる抄紙機ヘッドボックスについての技術開発と、それに関わる学術的研究が一層急務となっている。そこで、本研究では報告者がこれまでに開発したパルプ繊維濃度評価技術や流れ中の繊維挙動に関する成果を発展させ、ヘッドボックス内急拡大部における流れ特性およびパルプ繊維挙動を解明して、そのフローメカニズムを用いた繊維分散の制御を図るものである。 初年度(平成23年度)に比較的低濃度(Cs=0.3~0.6%)のパルプ液を用いて行った研究の知見を基に、さらに高濃度(Cs=0.6~2.0%)の上質紙用クラフトパルプについて研究を進めた。その結果、以下のような知見が得られた。 (i) 急拡大後でのパルプ液は低流速の場合、パルプ繊維は太管路全体に拡がり、そのため流れ軸上での時間平均濃度Ctaは急拡大面では高い値を示すが、太管下流にいくにつれて低下していく。(ii) 中流速では細管内からの流体は太管路全体に拡がらずパルプ繊維も併せて流下するため、流れ軸上のCtaは太管内でも高い値を示す。(iii) 高流速では流れは乱流化して繊維分散は促進され、Ctaおよび濃度変動の値はほぼ一定となる。(iv)急拡大部における圧力の損失および圧力の相対的回復の度合いは、パルプ液濃度が高いほどが大きくなる。 以上、これらの研究成果は、当初掲げた平成24年度の目標を概ね達成できているとみなせるが、濃度むらの評価についてはデータ処理とその解析ならびに考察が滞っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「9. 研究実績の概要」でも報告しているように、初年度での比較的低濃度(Cs=0.3~0.6%)のパルプ液の場合、つづいて平成24年度での高濃度(Cs=0.6~2.0%)の場合と実験を行い、かなりのデータを取得できている。しかし、単相流の場合と異なり、速度情報と併せたパルプ繊維濃度の挙動は極めて複雑で、データの分析とパルプ繊維挙動の解明には相当困難さが生じている。この点から、「やや遅れている」と自己評価している。 しかしながら、本研究課題を進める中で基本的な流動特性を振り返ることにもなり、これらを含めたパルプ液の基本特性に関する研究成果を発表することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度および24年度の成果に見られるように、拡大後のパルプ繊維の挙動は上流の流路内での流れ状態に大きく依存している。したがって、急拡大後のパルプ繊維の分散促進を図るためには、さらに急拡大前後の繊維挙動の関係を調べる必要がある。また、拡大部直後の大規模渦はある条件下においては凝集力の強い繊維塊(フロック)を作ることにもなり、凝集した繊維塊が解けるのに要する時間(一種の緩和時間)も考慮する必要がでてきている。このような繊維フロックの形成・崩壊の過程について、レオロジー的な考察も求められる。これらの検討を進めながら、当初計画に従ってパルプ繊維濃度と流動条件に応じた分散制御法を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「該当なし」
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Research Products
(4 results)