2012 Fiscal Year Research-status Report
固気混相熱流動のためのメニーコアプロセッサを用いた超高速解析エンジンの開発
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23560238
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山口 朝彦 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00284711)
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Keywords | 固気混相流 / 並列計算 / 数値シミュレーション / 離散粒子法 / 格子ボルツマン法 / 格子気体法 |
Research Abstract |
昨年度は連続相の計算に格子気体法を用いて分散相と連続相の相互作用の検討を行なったが、本年度の前半はその検討を続け、計算および検討の結果を学会で発表した。連続相と分散相の相互作用について、連続相が分散相に及ぼす力を一定の時間間隔での積分により求める方法を採用した。その結果、流体中の粒子の移動は経験式による結果とよく一致した。二相間の相互作用を適切に設定することにより、連続相の計算にセルオートマトン法が適用できることがわかったので、次に、より実際への応用が容易な格子ボルツマン法による連続相の計算プログラムの作成に着手した。格子ボルツマン法には計算対象となる流体の相や物質の数によっていろいろな方法が提案されているが、まずは、最終的な応用を考えて非熱モデルであるが密度差の大きい二相流を扱うことのできるInamuroらのモデルを採用し、3次元の気液二相流を計算することのできるプログラムを作成した。また、境界条件が複雑になることが予想されるため、Chenらの外挿境界条件を組み込んで、複雑な境界条件を比較的容易に設定できるように改良した。この成果は次年度、国際会議で発表予定である。 一方、ハードウェアについては、計画当初は本年度8ノードの追加を予定していたが、予算削減のために昨年度の報告書に沿って4ノードの追加を行なった。本年度導入したノードは、CPUの性能は昨年度に導入したノードよりもやや低いが、別のプロジェクトで導入した高性能のGPUを組み込んだのが特徴である。また、Webサーバを構築し、成果公開用のWebページの準備を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実施計画書によると本年度の研究計画は4つに分類することができるので、それぞれについて達成度を評価する。 (1) 並列計算機の構築: 年度当初に4ノードを追加し計8ノードの並列計算機環境を構築した。プログラムの作成およびコンパイル用にノートPCを導入したので、ディスクサーバとしても使用する1ノードを加えると計9ノードとなる。よって、計画の通りに進展していると評価できる。 (2) 計算モデルの構築と両相のカップリング: 年度最初に格子気体法により連続相を計算するプログラムを作成して計算結果を得たが、格子ボルツマン法を利用した熱モデルの構築には至っていない。また、格子ボルツマン法による連続相のプログラム開発に注力したため、分散相とのカップリングや計算コードの並列化には至っていない。よって、計画よりもやや遅れていると評価する。 (3) 連続相の計算コード: 格子ボルツマン法により、非熱に二相流に対する3次元解析コードを作成して計算結果を得た。よって、計画の通りに進展していると評価できる。 (4) 数値計算: 連続相については複雑流路内の気泡の挙動など、密度差の大きい二相流の3次元解析が行なえるようになった。この点は計画よりも進展していると評価できる。一方、分散相とのカップリングは格子気体法のみで、格子ボルツマン法については実施していないので、計画よりもやや遅れていると評価する。 (1)、(3)と(4)の一部については計画通りか計画よりも進展しているが、(2)および(4)の一部については計画よりもやや遅れている。総合的には計画よりもやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画遂行のために残る課題について列記する。 (1) 計算ノードの追加: 新たに4つの計算ノードを追加する。ただし、昨年から本年にかけて、CPUやGPUに関して大きな進展は今のところ見られないため、2ノードの追加として、ストレージスペースなど周辺機器の追加に変更する可能性もある。 (2) 連続相の熱モデルの開発: 格子ボルツマン法による連続相の解析コードを熱モデルで構築する。現在利用している自由エネルギーモデルの熱モデルを利用することで、熱移動にも対応できるようプログラムを作成する。 (3) 分散相と連続相のカップリング: 離散粒子法の分散相と格子ボルツマン法熱モデルによる連続相をカップリングして、固気混相流の熱流動解析コードを開発する。これまでにも格子ボルツマン法による移動物体を含んだシミュレーションが他の研究者らによって発表されており、それらを参考にする。 (4) 計算コードの並列化とサンプル計算: ノード間のデータ交換の他、GPUに対応した並列化を行なう。GPUプログラミングやMPIの単独利用は可能であるが、その同時利用が難しいと予想される。並列化したコードを用いて、分散相と連続相の間で熱と物質の移動がある粒子の乾燥のような例について、シミュレーションを行なう。最も困難が予想されるのはこの部分であるが、重点的に取り組むことで計画を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画はほぼ当初の計画通りであり、内容も本年とほぼ同様である。支出は主に並列計算機の構築および情報収集と成果発表のための旅費である。並列計算機の構築については、市場に出回っている計算機や周辺機器の状況に応じて、最もコストパフォーマンスに優れた計画となるよう、研究計画に大きな変更や支障のない範囲で随時更新する。具体的な内容を以下に列記する。 1. 計算プラットフォーム充実のために、計算ノードとして平成24年度と同様にメニーコアCPUを1個と2枚のGPUボードで構成されるノードを追加する予定である。ただし、昨年から本年にかけてCPUやGPUに関する大きな進展が今のところ見られないため、場合によっては、ノードの追加数を減らして、開発環境やストレージスペースなど周辺機器の追加に変更する可能性もある。 2. 熱流体の数値シミュレーションに関する情報収集のために国際会議に参加する。この他、成果発表のために国内会議にも随時参加する。 3. 並列計算プログラム開発のための資料として書籍を購入する。 4. 並列計算機の組み立て、搬入、設置およびプログラミングの補助のために必要な人件費を用意する。
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Research Products
(2 results)