2013 Fiscal Year Research-status Report
固気混相熱流動のためのメニーコアプロセッサを用いた超高速解析エンジンの開発
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23560238
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山口 朝彦 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00284711)
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Keywords | 固気混相流 / 格子ボルツマン法 / 数値シミュレーション / 離散粒子法 / 並列計算 |
Research Abstract |
本研究の目的は,固気混相流の数値シミュレーションのための離散粒子法に,現在の高性能コンピュータの主流となっている並列計算に適したチューニングをほどこし,数値解析の規模と速度を向上させることである.その方法としては,並列化に難のある分散相の計算に,並列化が容易でスピードアップ率の高い格子ボツルマン法を用いることを提案し,数値計算を実施してきた.平成24年度までに,格子ボルツマン法による連続相の計算コードを作成し,平成25年度は分散相との運動量とエネルギーのカップリングについて検討し,研究を終了する予定であったが,連続相の数値計算法を検討する過程で,連続相として気液二相流を扱うことが可能となり応用範囲が大きく拡張したため,連続相として気液二相流を扱うことのできる離散粒子法を研究するよう計画を変更した.本年度は,Inamuroらによる格子ボルツマン法の非熱二相流モデルを採用し,境界の計算に外挿法を導入し,また粘性係数の補完法にHeらの修正を加えることで,複雑形状に容易に対応でき,密度差の大きい気液二相流を安定してして計算できる計算コードを作成し,数値計算の結果を得ることができた.成果は,日本で開催されたICNMM2013,英国で開催された13th UKHTCおよび9th UK-Japan SMPFで発表した他,平成26年度に北京で開催のIHTS2014および京都で開催の15th IHTCで発表する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
連続相として,当初は気体単相を想定していたが,最終的には乾燥プロセスへの応用を意図しているため,計画にはなかった気液二相流の計算にチャレンジしたところ非熱モデルの数値解析ができるようになった.連続相として気液二相流を扱うことができれば,バイオチップの乾燥や粒子への薬液の塗布など応用範囲が広がるため,当初の計画を変更して,分散相との運動量およびエネルギー交換と本格的な並列化に移る前に,連続相を気液二相流にまで拡張することにした.格子ボルツマン法による気液二相流モデルは,気液の密度差が大きくとれないのが欠点であるが,実際に最も身近なのは水と蒸気,まはた水と空気であり,密度差が大きいことが問題となる.本研究ではInamuroらが提案したポアソン方程式を厳密に解くモデルを採用し,さらに境界の外挿と粘性補完法に関する改良を加えることで,複雑形状に対応しながら密度差の大きい気液二相流について安定した計算が行なえるようになった.当初の研究計画を拡張し,研究期間の延長を申請して認められたため,残りの1年の計画は交付申請書に記載した内容に合致し,現時点での研究の達成度としてはおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の計画を以下に列記する.(1) 連続相として気液二相流を想定し現状の非熱モデルを熱モデルへ拡張する.現在採用しているモデルの熱モデルが提案されているので実装を試みる.(2) 分散相と連続相の間の運動量およびエネルギーの交換について検討し結論を得る.One wayおよびTwo wayについて検討する.(3) プログラムの並列化を進め,計算のコストパフォーマンスを向上させる.日進月歩の分野なので継続的な改良を試みる.(4) 研究内容をWebに公開する.昨年度からWebサーバを用意しているのでコンテンツを整備する. 研究を遂行する上での課題としては,申請者が採用している格子ボルツマン法の熱モデルは未発達の分野であり,現時点で確立された方法がないことが上げられる.また,計算ができても,その妥当性の検証が難しいことも課題として上げられる.対応策として,申請者が所属する研究グループで行なっている固気混相による熱流動の実験的研究の結果を利用することができないかを検討している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は固気二相流の並列計算エンジンを開発して平成25年度に課題研究を終える予定であったが、平成24年度から平成25年度にかけたNottingham大学との共同研究の成果を本研究課題の成果に併せることで、シミュレーションモデルにおける連続相に気液二相流を考慮できる可能性が見えた。そのため、計画を変更して、並列計算エンジンの固液気三相流モデルへの拡張を検討することとしたために、未使用額が生じた。 計算機性能は年毎に大きく向上し、導入コストも年毎に改善されるため、最終年度の計算機環境の整備を次年度に行なうこととしたい。また、これに併せて、成果発表も次年度行なうこととし、未使用額はこれらの経費に当てることとした。
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