2011 Fiscal Year Research-status Report
生体組織レベルの凍結保存を目的としたキセノンガスの細胞生存率改善効果
Project/Area Number |
23560241
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
氏平 政伸 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (70286392)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 低温保存 / 凍結保存 / キセノンガス / 細胞損傷 / ヒト皮膚繊維芽細胞 / 保護効果 |
Research Abstract |
本課題では,生体組織レベルの試料の低温保存における低温自体のストレスとその試料に特有の凍結中の細胞間ストレスによる細胞損傷を低減するための,キセノン(Xe)ガスの有効性を明らかにすることを目的とした.本年度は,Xeガスの加圧添加が細胞に与える影響と代謝抑制効果,非凍結と凍結を伴う低温に対する細胞への保護効果を検討した. 試料として,培養皿に一定数のヒト皮膚繊維芽細胞を24時間単層培養(5%炭酸ガス, 37℃)したものを用いた.試料にXeガスを加圧添加するために耐圧容器を用意し,一定温度に保つために恒温水循環装置とリザーバを使用した.細胞生存の評価手段としてテトラゾリウム塩を用いて細胞活性を測定した. 始めに,Xeガスによる代謝抑制と回復を調べた.試料を容器に入れXeガスを圧力0.1, 0.5, 1.0 MPaに調節し37℃で1時間保持し,添加中の細胞活性を評価した.また,1時間添加後の細胞活性を評価した.対照として,窒素ガスでも同様の実験を行った.また,ガス添加しない試料をコントロールとした.その結果,Xeガスには代謝抑制効果があった.しかし,窒素ガスには無く,1.0 MPaの条件では細胞活性が回復しなかった. 次に,培養液中の試料を容器に入れ,Xeガスを0.5 MPaで添加したものと添加しないもので,非凍結条件の4℃で1~24時間静置し細胞活性を評価した.その結果,Xeガスの添加により活性の低下が抑制され,保護効果が明らかとなった. 更に,凍結保護液として10% ジメチルスルホキシドを含む培養液を加え,Xeガスを4℃で加圧添加した条件と添加しない条件おいて,試料を容器ごと約-0.4℃/minで凍結保存し,解凍後細胞活性を評価した.その結果,再現性は得られなかったが,添加有りの試料の方が無しのものよりも細胞活性が高い結果も得られ,今後保護効果が得られる感触を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の本年度の目標は,低温自体による細胞損傷と凍結による細胞損傷に対するキセノンガスの保護効果の有無について調べることであった.まず,低温自体の損傷に対しては,実験が順調に進みキセノンの効果を現す明確な結果が得られたため,目標以上の成果が得られたと考えられる.一方,凍結による損傷に関しては,キセノンガスの効果を現すデータは一応得られた.しかし,実験方法の確立が予想以上に難しかったため,キセノンガスの保護効果の有無を明らかとするためのデータの再現性が得られなかった.従って,目標よりもやや遅れていると考えられる.これらを合わせると,全体的にはほぼ予定通りでおおむね順調あると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本課題においては,低温自体による細胞損傷と凍結による細胞損傷に対するキセノンガスの保護効果について調べているが,本年度の研究により低温自体の損傷に対しては効果があることが分かった.このことから,凍結保存にこだわらず非凍結の条件(冷温保存)における細胞損傷の低減効果についても詳細に調べるのが有益と考えられる.よって,まずは非凍結の条件について最適条件を探ること,そして,培養液だけでなく代表的な保存液(University of Wisconsin SolutionやET-Kyoto液)を用いての保護効果の検討を考えている. 一方,凍結による損傷に関しては,キセノンの保護効果を示すデータの再現性を得るためには加圧実験後の減圧による泡の生成を克服する必要があることが明らかとなった.今後は減圧方法や条件について重点的に検討を加えるとともに,加圧条件(圧力,温度)についても不明な点が多いので更に検討を進める必要があると考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究により,実験装置は70%程度構築出来て研究自体も軌道に乗りつつある.次年度は,実験装置の改良や,細胞培養と細胞活性の評価に関する消耗品類が主な支出となる.また当初,バイオクリーンベンチ(約100万円)を設備として購入する計画となっていたが,予想以上に消耗品に費用がかかったため見送った.次年度も消耗品に多額の費用がかかることが予想されるため,残高を見ながら購入するかどうかを決めたいと考えている.
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Research Products
(1 results)