2012 Fiscal Year Research-status Report
生体組織レベルの凍結保存を目的としたキセノンガスの細胞生存率改善効果
Project/Area Number |
23560241
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
氏平 政伸 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (70286392)
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Keywords | 低温保存 / 凍結保存 / キセノンガス / 細胞障害 / ヒト皮膚繊維芽細胞 / 保護効果 |
Research Abstract |
本年度は,キセノン(Xe)ガスの添加圧力と細胞の低温障害の低減効果の関係と,非凍結と凍結を伴う低温に対する細胞への保護効果について検討した. 昨年度同様,培養皿に一定数のヒト皮膚繊維芽細胞を24時間単層培養したものを試料として用いた.試料を耐圧容器に入れXeガスを加圧添加し,恒温水循環装置とリザーバを使用し一定温度に保った.テトラゾリウム塩を用いて細胞活性を測定した. 始めに,Xeガスの添加圧力と細胞の低温障害の低減効果の関係を調べた.試料を容器に入れXeガスを圧力0~1.0 MPaに調節し4℃で24時間保持し,復温1時間後の細胞活性を評価した.その結果,0.5 MPaで最も効果が高いことが分かった.このことから,Xe添加の設定圧力を0.5 MPaに設定した. 次に,市販保存液(University of Wisconsin solution(UW液),ET-Kyoto液)に浸した試料を容器に入れ,Xeガスを0.5 MPaで添加したものと添加しないもので,非凍結条件の4℃で0~72時間静置し細胞活性を評価した.その結果,どの液でもXeガスを加圧添加した試料が添加しないものよりも長時間高い保護効果を示した.そして,培養液(昨年度のデータ)やUW液よりもET-Kyoto液を用いたXeガス添加の場合が最も高い保護効果が得られた. 更に,凍結保護液として10% ジメチルスルホキシドを含む培養液を加え,Xeガスを4℃で加圧添加した条件(加圧保持または加圧後除圧)と添加しない条件おいて,試料を容器ごと0.1,0.3,1℃/minで凍結し,解凍後細胞活性を評価した.その結果,Xeを加圧後除圧した条件において,この細胞の凍結保存の最適条件(0.3℃/min)よりも低い冷却速度である0.1℃/minにおいてXeガス添加試料の方が無しのものよりも解凍後の細胞活性が高くなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の本年度の目標は,低温自体または凍結による細胞障害に対するキセノンガス添加の最適加圧条件と保護効果,即ち細胞障害低減効果について調べることであった.まず,低温自体による細胞障害の低減効果に対しては,昨年度同様実験が順調に進みキセノンの保護効果に関する明確な結果が得られたため,目標以上の成果が得られたと考えられる.一方,凍結による細胞障害の低減効果に関しては,昨年度同様に実験方法の確立が難しく試行錯誤も多かったが,加圧後除圧した条件において限られた冷却速度でキセノンガスの効果を現す有効なデータを得ることが出来た.従って,ほぼ予定通りと考えられる.これらを合わせると,全体的にはほぼ予定通りでおおむね順調あると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本課題においては,低温自体による細胞損傷と凍結による細胞損傷に対するキセノンガスの保護効果について調べているが,昨年度と本年度の研究により低温自体の細胞障害に対してはキセノンガス加圧添加の効果が高いことが明らかとなった.このことから,来年度も凍結保存だけでなく非凍結の条件(冷温保存)における細胞損傷の低減効果についても更に調べるのが有益と考えられる. 一方,凍結による細胞障害の低減効果に関しては,凍結後の減圧方法の工夫によってキセノンガス加圧後除圧の条件で非加圧時の最適冷却速度よりも低い速度で効果があることが明らかとなった.今後は低冷却速度の範囲においてデータを増やす必要がある. また,保護効果のメカニズムを探るためクラスレート生成の有無や,これまで用いた圧力条件でクラスレートが生成しないガス(窒素,空気)を用いて圧力と細胞損傷の関係についても確認する必要があると考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究により,実験方法は90%以上構築出来たと考えている.これまでは,実験装置の改良や,細胞培養と細胞活性の評価に関する消耗品類が主な支出となった.来年度は,消耗品の出費を抑えて設備購入する計画となっていたバイオクリーンベンチ(約100万円)を購入して細胞培養と実験試料の無菌操作を分けて実験を円滑に遂行したいと考えている.
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Research Products
(2 results)