2011 Fiscal Year Research-status Report
自己湿潤水溶液の沸騰伝熱特性の研究-限界熱流束向上と冷却デバイスへの応用-
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23560245
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
庄司 正弘 神奈川大学, 工学部, 教授 (00011130)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 沸騰 / 限界熱流束 / ブタノール水溶液 / 伝熱促進 / 冷却デバイス |
Research Abstract |
高度に集積化された電子機器やレーザ等光学機器の冷却のため、伝熱性能の高い水溶液の沸騰が注目されている。本研究では、マイクロ流路への応用も考慮して、伝熱向上のみならず、気泡の微細化も達成できるブタノール水溶液の沸騰伝熱特性について、当初の計画通り(1)飽和及びサブクール沸騰の熱伝達と発生気泡挙動の実験、(2)発生蒸気泡の蒸気成分の測定(成分の選択的蒸発の確認実験)、(3)発生気泡挙動、特に気泡の合体条件に関する実験研究、(4)流動沸騰伝熱特性の各実験を平衡して行うと共に、さらにブタノール水溶液の沸騰媒体としての有効性を示すための研究として(5)ブタノール水溶液を用いた非定常冷却実験(クエンチ実験)を行った。いずれもその成果が達成されたが、特に(2)の研究からは、一般に水よりもブタノールが選択的に蒸発し、これがサブクール特性と密接に結びついていること、(4)の研究から、飽和定流量下では必ずしも顕著な伝熱促進はないが、高流速流量下あるいは高サブクール下でブタノール水溶液は高い限界熱流束値を示すこと、すなわち沸騰媒体として優れていることが確認された。また、追加的に行ったクエンチ実験では、成分の選択的蒸発により、冷却曲線に2つのクエンチ点が現れること、つまり沸騰曲線に2つの極大熱流束が現れると言う興味深い知見がえられた。これらの成果は、所期の目標に匹敵する、あるいは一部凌駕するものであり、成果は国際学会及び国内学会において公表し、評価を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は高度に集積化された電子機器やレーザ等光学機器の冷却のため、伝熱性能の高い水溶液、特にブタノール水溶液の沸騰媒体としての有用性を実験的に明らかにすることを目的に計画し、都合5種類の基礎的実験を同時並行的に行った。その結果、伝熱促進ができることの確認、微細流路への応用を考え沸騰気泡が微細化すること、と言う当初の目的が達成された他、高温加熱面の急速冷却(応用)では2つのクエンチ点、2つの極大熱流束が出現するとの新しい知見が得られ、緩急冷却への応用が開ける可能性のあることなど予定外の成果も得られ所期の研究成果が達成されたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、新しい研究テーマのあること、実験条件が未だ十分ではないなど、今後に残された課題も多い。まず、ブタノール水溶液の沸騰媒体としての有効性は確認できたが、媒体は現段階では2成分水溶液に限られており、多成分系の検討、つまりブタノール水溶液に勝る混合液が存在しうる可能性が残っている。また急速冷却(クエンチ実験)はこれまでのところ加熱面の最高温度が300℃以下であり、得られた結果が普遍性の在るものであるか否かも定かでない。さらには、今回行った実験は、研究室で使用可能な電源容量を考慮して基礎研究には加熱細線を用いているが、用いる細線の大きさの影響(細線径依存性)を現在のところ完全には明らかに出来ていない。こうした課題の解明が今後の研究の目的となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、まず急冷実験(クエンチ実験)を高温の初期加熱温度から始めるための実験装置を製作する予定である。次に、基礎実験のための水平細線系の装置は現有のものを用いるが、加熱白金細線あるいはステンレスチューブは多数必要であり、消耗品としての材料費が必要となる。また、これまで得た研究成果を内外の学会で発表するための出張旅費として使用する計画である。現在のところ、特段高価な計測機器類の購入は予定していない。
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