2012 Fiscal Year Research-status Report
自己湿潤水溶液の沸騰伝熱特性の研究-限界熱流束向上と冷却デバイスへの応用-
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23560245
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
庄司 正弘 神奈川大学, 工学部, 教授 (00011130)
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Keywords | 沸騰 / 核沸騰 / 限界熱流束 / サブクール沸騰 / 流動沸騰 / 急速冷却 / ブタノール水溶液 |
Research Abstract |
自己湿潤液体としてのブタノール水溶液の沸騰伝熱特性に関し、まず基礎的特性を探るために水平加熱細線を用いた飽和並びにサブクール沸騰実験を行い、核沸騰伝熱特性、特に限界熱流束の伝熱性能を詳細に調べた。その結果、純水の場合に比べ、熱伝達特性は劣るものの、限界熱流束は最大で3~4倍程度向上するため、ブタノール水溶液は冷却媒体として優れたものであることを明らかにした。この研究の過程で、限界熱流束のサブクール特性は特異な挙動を示すこと、つまりサブクールの増加と共に始めは減少し、最低値をとった後、増加に転じることを見出した。また、低濃度溶液の場合、1次気泡が合体しにくく、その結果、微細な気泡が多数発生する様相になり、これがミニチャネルなどへの応用上、大変有効となることが判明した。次に、冷却デバイスへの応用を念頭に、ミニチャネルでの流動沸騰実験及び加熱平板の急速冷却実験を行って、ブタノール水溶液の沸騰伝熱特性を調べた。ミニチャネル内での強制流動については、サブクール下の高流量では高い伝熱性能が得られ、ブタノール水溶液の冷却媒体としての有効性が確かめられた。また、急速冷却の実験からは、成分である水及びブタノールの選択的な蒸発に起因すると思われる2つの最大 熱流束が現れるなどの新しい知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期の目標はおおむね達成できている。しかし、実用上データの必要な、加熱平板上の定常沸騰特性については、飽和沸騰については一応の結果が得られているものの、サブクール沸騰特性については実験継続中である。また、急速冷却実験については、実験中の溶液の濃度の変化があるためか、必ずしも統一性のあるデータが得られておらず、現在研究を継続中である。最終年の平成25年度中には、これらの実験を終了し、初期の目的が達成できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の成果に基づき、次年度は①水平加熱面を用いた飽和並びにサブクール沸騰の伝熱特性、および②急速冷却における信頼性のあるデータの取得、の2つの実験を集中的に行う予定としている。 ①の実験では、従来用いていた加熱面の直径が30mmとやや小さく、加熱面の周辺の沸騰伝熱特性に及ぼす影響が懸念されることから、大口径(50mm)する予定であり、必要試験部の設計は終え発注済である。また②の実験に関しては、昨年度は加熱面の初期加熱温度が300℃と低かったため、高濃度水溶液の場合に蒸発時間との関連で、初期加熱温度の影響が出てしまった可能性が否定できないことから、高い初期加熱温度からの冷却を試みる計画であり、必要装置の設計は終え、製作済の状態である。最終年の次年度は、これまでの成果を総括し、自己湿潤液体としてのブタノール水溶液は沸騰媒体として有効なものであることを明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、実験装置の改良を行った他は、既存の実験装置を使用し、また実験に必要な消耗品はストックしていたもので十分まかなえたため残高が発生したが、この残高を含め次年度は、上に述べた2種類の実験を行うための新たな試験加熱面部の製作費に経費の大半を用いる予定である。また、ブタノールやヒータ、熱電対など消耗品や、データの解析に必要なコンピュータ並びに記憶媒体等の消耗品の購入に充てる。これまでの研究の成果を内外の学会で発表するため、学会参加費や旅費としても経費の一部を使用する計画である。
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Research Products
(8 results)