2012 Fiscal Year Research-status Report
高温超電導軸受を持つ磁気浮上電力貯蔵フライホイールの開発と動特性解析
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23560249
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
村上 岩範 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80292621)
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Keywords | 高温超電導 / 超電導応用 / 磁気浮上 / 運動制御 / 非接触 / 磁気軸受 / フライホイール |
Research Abstract |
本年度は前年度に実施した高温超電導磁気軸受の基本構造を利用し、高温超電導浮上および高温超電導を用いた非接触磁気軸受による完全非接触回転系に関する研究を実施した。 前年度までは2枚の円環状の永久磁石を、磁性材料円板を介し同極同士で密着させることで、その境界付近に磁束を収束し,透磁率の高い磁性材料円板からの飽和磁束による半径方向・軸方向への大きな磁気勾配の創出を行ったが、このような構成では高温超電導体のみでの磁気浮上力は約30[N]程度にとどまるため、開発しているロータに対して十分な浮上力を得るためには永久磁石による磁気浮上が不可欠となっていた。 そこで本年度は積層する円環状永久磁石を3枚とし、磁束収束箇所を2カ所とすることにより収束された磁束による磁気回路を構成させるとともに前年度に導入した円環状高温超電導体を用い、ピンニング力の増大を計った。この結果、浮上ロータ軸方向の発生力(浮上力)は200[N]以上と飛躍的に向上させることに成功した。これにより、ロータ内径部に設置した高温超電導磁気軸受によって、磁気浮上用永久磁石が存在しなくても磁気浮上が可能となりシステムの小型化に成功した。さらに磁束収束用磁石の積層枚数を増やすことによるロータ厚みの増大を利用し駆動用磁石部によって駆動コイルを挟み込めるような設計が可能となり駆動トルクの増大を実現した。 このように前年度に比した改善された部分を利用し、本年度は高温超電導浮上フライホイールを開発し、その諸特性の解析および実験による検証を実施した。この結果、ロータに蓄積された運動エネルギーを約79%の効率で引き出すことに成功した。 以上より高温超電導磁気軸受と、磁束集束法を用いたロータと併用することで安定した非接触高温超電導回転系を試作・制作し、これを用いたフライホイールの開発を行って実際にエネルギー貯蔵-放出が行えることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度は、前年度の成果を踏まえてアキシャル方向からの同期駆動系を付加し、単一のディスク型ロータに浮上・駆動・軸受の機能を付加した磁気浮上モータを実現することを第一の目的としていた。この際、アキシャル型同期駆動系はラジアル方向磁場にもある程度影響を与えるため、これの特性解析、およびこの影響を極小化するため、ロータの最適化の実施を行い、HTSC軸受を持つ磁気浮上モータの開発を実施し、その特性解析を行うことを目標としていた。 これに対し、前年度得られた磁束収束型ロータを改良し、収束部分による磁気回路構成を実現することにより飛躍的に軸方向力(浮上力)を向上させたHTSC軸受を用いてアキシャル型同期モータの開発を実施した。ここで軸受部の高さの増大を利用し駆動部の構成を永久磁石対向型とする事によって、駆動用界磁の増大とHTSC軸受部の磁気的分離を同時に実現することに成功し、基本的な当初目的を達成した。これらの結果に対し、HTSC軸受の半径方向復元力については軸方向力に比して増加率が小さい結果となってしまった。この結果に対しては磁束収束部の構成にさらなる改良が必要であると考えられる。この部分については多少の研究の遅れがあるといえるが、本来H25 年度に計画してた駆動部による発電を行うことにより電力貯蔵フライホイールとしての機能を確認しておりその特性を解明している。これらを実施した研究結果をまとめて学会発表及び論文投稿を行っており,全体としての進捗状況は概ね計画通りであると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度についてはH24年度に開発した高温超電導浮上同期型モータおよびこれを用いたフライホイールシステムを用いてフライホイールとしての性能向上を行うことを予定している。H24年度では同期モータとしての開発を実施したため、HTSC軸受の軸方向力の向上を利用しこれまでの永久磁石による磁気浮上の安定化を行う必要がなくなっていたが、フライホイールとするにはさらなるロータ質量の増大および慣性モーメントの増大が必要と考えられる。このため本来の形式である永久磁石による磁気浮上の安定化を実施し、フライホイールとしての性能向上を目標とする。この際慣性モーメントを増大させるためにロータ径の増大が必要となるがこれによるロータの触れ回り、ピッチングの発生が問題となると考えられる。これの制振方法の検討提案を行う。これらにはHTSC軸受改良も不可欠となるため導入済みの磁場解析ソフトによるシミュレーションを行う。これらを実施し、本研究のまとめを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度において、導入予定であった電力増幅器(NF回路ブロック社製EC1000S×2)に相当する機器を一時的に無償で借り入れることが可能となったため、これと従来ある電力増幅器を併用することによりH24年度に関しては研究を推進することが可能となった。このためH24年度に使用予定であった研究費を必要としなかったため当初計画に対して研究資金が大きく削減できた。しかしながら、現在、借り入れた機器はすでに借り入れ期限が過ぎ、返却済みの上、今後継続して借り入れする事は困難であるため当初H24年度購入予定を延期しH25 年度に購入する予定のためこれに充当する。 また、H24年度は諸事情により国際会議への参加ができなかったため出張旅費についても当初計画に対して、小さくなったことも使用した研究費が少なくなったことの原因であるが、H25年度はすでに国際会議への参加が決定しており、H24年度未使用分およびH25 年度計画分を合算し充当する。 これらにあわせ、本来H25 年度に計画していたフライホイールの開発、性能向上に使用する機器の購入及び試作開発のための機械材料,電気材料,制御及び信号処理用の電子部品,高温超電導体冷却用の液体窒素等の消耗品の購入,研究発表のための旅費,論文投稿料等に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)