2012 Fiscal Year Research-status Report
強磁性粒子を用いた磁場援用セミアクティブダンパに関する研究
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23560259
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
井門 康司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40221775)
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Keywords | 振動制御 / ダンパー / 磁気機能性流体 / 磁性流体 / MR流体 / 粒状体 / 減衰力 |
Research Abstract |
強磁性を有する鋼球を粒状体として使用した粒状体ダンパーを一定振幅で強制加振した際の減衰力特性について,印加磁場強度とストロークを変えてその影響を調べた.その結果,印加磁場下でストロークが小さい場合には,振動の死点近傍で急激に減衰力が増大するが,ストロークを比較的大きく取ると変位と共に減衰力が増加する漸硬型の特性が現れることが分かった.これは粒状体ダンパーを使用する際に,ある程度の振幅がある場合には変位に応じて減衰力を発せすることを示しており,実用化を考える際に重要な知見である. 一方,粒状体ダンパーを傾斜させて設置した場合,設置角によって減衰力への重力の影響が顕著に現れることが実験によって明らかにした.また,このような条件での粒子挙動と減衰力との関係を明らかにするため,個別要素法を用いた数値解析を行った.数値解析によって得られた減衰力特性は実験と良く一致し,内部粒子の挙動を示すと共に,減衰力の発生メカニズムを明らかにした.さらに,この傾斜による重力の影響を低減する方法として,バネを有する機構を提案し,その有効性を実験的に確認した.また,別の重力効果低減方法として印加磁場を利用する方法を提案し,その効果を実験的に確認した.前述のような方法により,ダンパーの設置状態に依存せず,同様の減衰力特性を示すダンパーを提供できることになり,実用化において重要な結果である. 磁気機能性流体を用いた減衰力可変ダンパーについては,作動流体となる磁気機能性流体を新たに作製して減衰力特性を実験的に調べた.その結果,ナノメートルサイズの針状鉄粉とミクロンサイズの球形磁性粒子を混合した磁気機能性流体は,磁気混合流体の場合とは異なり,針状鉄粉の混合割合を増やすと減衰力が増加することを示した.また,磁性エラストマーを粒状体として用いたダンパーについても実験的にその減衰力特性を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に示したもののうち,(3)粒状体ダンパー減衰力の印加磁場依存性の解明,(4)粒状体ダンパー内粒子挙動の数値解析と減衰力発生メカニズムの解明,(7)印加磁場下における磁気混合流体ゲルダンパーの減衰力特性の解明,(8)粒子の特性が粒状体ダンパーに与える影響の解明,については基本的に予定通り達成できた.ただし,磁気混合流体ダンパーに関する研究については,現在当初計画とは若干異なる方向に展開している.すなわち,当初計画では既存の磁気混合流体を用いたダンパーの特性解明について計画していたが,これまでにない新しい磁気機能性流体を作製し,その上でその流体をダンパーの作動流体として用いた場合の知見を明らかにする方向に修正している.こちらの方が新規の知見としてインパクトがあるものと考える.磁気混合流体ダンパーならびに粒状体ダンパーの現象論的モデル構築については,当初計画よりも若干遅れ気味である. 以上の理由から「おおむね順調に進展している」ものと判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,磁気機能性流体を用いたダンパーおよび粒状体ダンパーについて,それぞれの現象論的モデルの構築を試みる.そのために必要な条件での実験を追加で行う.ダンパーや実験装置の大型化は概ね達成できていることから,実機に近い形での実験も行い,磁気機能性流体ダンパーおよび粒状体ダンパーの減衰力特性を詳細に調べる.特に,磁場を用いた減衰力制御や,粒状体ダンパーについては設置角依存性をキャンセルする機構についてさらに詳細な実験を行い,実用化に向けて必要なデータの蓄積を行う.磁気混合流体ゲルを用いたダンパーについては,当初計画から若干の修正を加え,粒状体ダンパーの粒子として使用する方法を採用する.可能であれば,実際の地震波のデータによって作成した強制変位を入力し,応答を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に得られた研究成果を国内外の学術会議において発表するための旅費として使用する.また,実験装置などに必要な材料の購入や,研究成果発表のための論文投稿料として使用する.
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