2011 Fiscal Year Research-status Report
陰的ラグランジュ法に基づく複雑なマルチボディシステムの解析設計に関する研究
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23560269
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉村 浩明 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40247234)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 |
Research Abstract |
マルチボディシステムは,多数の剛体や弾性体がジョイントやボディ間のエネルギー的な相互作用によって接続された大規模かつ非線形な力学系であり,その解析設計には,計算機援用によるダイナミクスの定式化及び数値解析が不可欠である.マルチボディダイナミクスの数学モデルは,一般に,陰形式の非線形微分代数方程式によって記述されることが知られているが,流体中を運動する剛体,磁場中の荷電粒子の運動や多数の惑星間の運動など,複雑なマルチボディシステムの解析に必要な数学モデルの定式化さえ非常に困難となる.そこで,平成23年度は,現代的な解析力学理論の一つである陰的なラグランジュ法を用いて,複雑なマルチボディダイナミクスに対する合理的なモデリング法を確立することを目的として,(1) 部分システム間のエネルギー伝達機構の解明(2) ディラック構造の相互接続によるネットワーク化(3) 陰的ラグランジュ法の相互接続とマルチボディダイナミクスのネットワーク化の3点に絞って研究を実施した.ジョイントで接続された隣接する剛体ボディの運動のような複数の部分システムのエネルギー伝達機構をネットワーク構造としてモデル化するために,異なるディラック構造の相互接続の方法を数学的に定義した.特に,ディラック構造のテンソル積及び相互作用のディラック構造の概念を導入することで,これまでヴァン・デア・シャフト等によって提案された線形ディラック構造の合成法を一般化して多様体上のディラック構造の相互接続を可能とする方法を示した.また,ハミルトン・ポントリヤーギンの変分原理の観点からディラック構造の相互接続に現れる部分システム間のエネルギー・フローとそのネットワーク構造を数学的に解明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における第一の課題は,大規模かつ複雑なマルチボディシステムの接続関係をネットワーク構造としてどのように合理的に表すことができるかという点にある.申請者は,これまでに単一の力学系の接続構造をディラック構造によってモデル化できることを示し,さらに,そのダイナミクスを陰的なラグランジュ系として定式化することに成功している.平成23年度は,このアイデアを基に,多様体上のディラック構造間のテンソル積,また,それらを相互に結びつける相互作用のディラック構造の概念を新たに導入することで,複数のディラック構造及び陰的なラグランジュ系を相互接続する方法を開発することに成功した.これにより,大規模かつ複雑な力学系についてもモジュール化したモデリングに関する基礎理論が構築でき,今後,大規模力学系への効率的な数値解析へ向けて大きく前進したと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に開発したディラック構造の相互接続では,相互作用のディラック構造は,流通量の共通性に基づく最も基本的な場合であり,電気回路で言えばKCL・KVL接続に,また,力学系ではニュートンの作用反作用の法則に対応したものとなっている.今後,魚の運動に現れるような剛体と流体の相互干渉,剛体間の相互接続を与えるジョイント拘束,荷電粒子と磁場の相互干渉,さらには,小惑星ペアに現れる対称性を有するシステムの簡約化など,一般化した相互作用のディラック構造について考察する必要がある.特に,相互接続されたディラック構造の簡約化について考察することが重要な課題となる.平成24年度は,このような問題を課題として取り組む予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,研究協力者である大学院生とともに,これまでの成果の一部をマルチボディダイナミクスに関連する国際会議などで発表する予定であり,研究費の一部をそのために拠出することを考えている.また,外国人の共同研究者についても招聘したいと考えている.さらに,高速なコンピュータによる計算環境を整備するために,最新のワークステーションを購入する予定である.
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Research Products
(10 results)