2012 Fiscal Year Research-status Report
波動吸収原理によるスマート柔軟アームの試作と設計法に関する研究
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23560273
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
西垣 勉 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (80251643)
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Keywords | 圧電フィルム / 波動吸収制御 / 柔軟アーム / スマート構造 / 振動制御 |
Research Abstract |
本研究では,構造物の境界からの反射波を吸収する波動吸収制御法の実現が,薄肉構造物の場合特に難しいという問題に対し,薄い圧電フィルムの利用によって実現させることを目的としている.制御対象モデルとして,柔軟回転アームなどにも適用可能な片持ばりをとりあげ,平成23年度はまず,適切に形状を設計された圧電フィルムセンサとアクチュエータがその表面に貼付されて一体化されたスマート片持ばりを作製し,センサおよびアクチュエータの形状は,長方形状および三角形状として,これらの基本特性の測定を実施し,自由振動制御実験を試みたが,センサに混入する電磁ノイズが制御効果およびシステムの安定性に大きく影響し,これに対処するため新たにフィルタを導入し検討したが,波動吸収制御効果を得るには至らなかった.また並行して,理論解析モデルの構築と,数値解析の実施により,圧電フィルムを貼付したはりの自由振動応答までを求めた.平成24年度はこれを受けて,まず波動吸収制御を適用した場合のはりの周波数応答を数値解析によって求め,長方形状フィルムと三角形状フィルムの組合せにより,複数の振動モードに跨る広い周波数範囲で制御効果が期待できることを確認した.次いで,実際に圧電フィルムセンサおよびアクチュエータの貼付された片持ばりを用いて制御実験を実施し,はりの基礎部に強制調和変位励振入力が加わる場合について,はり先端変位振幅で制御効果を評価した結果,1次振動モードを中心とする低周波数ほど理論解析結果に相当する効果が得られ,3次モード以上の高周波数になるに従って,種種の物理的影響によって実験による制御効果が理論解析結果よりも低下することが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は,圧電フィルムが貼付されたスマート片持ばりについて,周波数応答解析を実施し,はりが基礎部に強制調和変位励振される場合について数値解析および実験を実施できたが,センサおよびアクチュエータ形状について,長方形状および三角形状の場合についてしか検証できておらず,また非定常入力の場合についてもテストを実施できていない.以上より本研究は,実験および数値解析による具体的な制御効果を検証できているものの,センサおよびアクチュエータの形状設計,および非定常励振入力形態についての検討が,当初実験計画に沿っては進んでおらず,進度がやや遅れていると考えられる.しかし,センサアクチュエータ形状設計に進むためのスマート柔軟はりシステムの理論解析モデルや数値計算方法,圧電フィルムを貼付した柔軟片持ばりの製作などの研究基盤およびノウハウは蓄積され,最終年度に向かって大きく展開できるものと考えられ、今後上記の形状設計および励振形態の2点に絞って最終年度の研究を遂行することで,研究の進度は修正され,当初計画に沿った研究課題の検討項目を網羅できる状態にできると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度にあたる平成25年度は,ディジタルおよびアナログ回路による波動吸収制御コントローラを完成させた上で,種種のパラメータをもつスマート片持ばりの波動吸収制御実験を実施し,さらに,シンプルな速度フィードバック制御と整合性が高く,かつ実験において高次振動モードの不安定化を誘発しにくいロバストなセンサ/アクチュエータ形状の設計指針を導く.以上で構築されたスマート片持ばりについて,非定常入力の場合の制振実験に展開する.すなわち,はり先端に衝撃入力が加わる場合の過渡応答の制振実験,ならびにはりの基礎部にモータを結合した回転アームモデルの位置決め時の制振制御への適応実験を試みる予定である.以上により,一般的な振動計測および操作用のセンサやアクチュエータでは重量や拘束の強さなどから対応できないような,非常に薄肉・柔軟なフレキシブルアームに対する波動吸収制御機能を有する構造システムとして,圧電フィルムセンサおよびアクチュエータの形状設計ならびにこれらとマッチングの図られたシンプルな制御コントローラの組合せによる,スマート柔軟アームの構築方法を提案し,本研究により得られた知見をまとめる予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度までにスマート片持ばりの圧電フィルムセンサ信号を精度よく測定し,圧電フィルムアクチュエータを基本的入力電圧で駆動させるまでのハードウェア的環境は整えられたと考えられる.そこで,平成25年度は,種種のパラメータを持つ片持ばりの制御実験において,従来より長い柔軟アームの場合ではアクチュエータへの入力電圧が不足するような場合が想定され,高出力増幅器の購入を計画する.ここで,従来機器ではアクチュエータに入力する電圧は150Vまでしか実現できないので,購入の場合は300Vから600V程度の入力を可能とする増幅器を想定しているが,十分に当該研究費の範囲内で購入可能である.また,研究の進展によるもう一つの可能性としては,柔軟アームの変位をより微細に測定する必要が生じる可能性もあり,その場合は,渦電流式非接触変位センサあるいはレーザー変位センサを購入することでこれに対処することを考えている.この場合,既存の機器では10ミクロンオーダーの変位測定が限界であるが,購入機器により1ミクロンオーダーの変位測定を可能とすることを考える.また,以上を除く残りの研究費については,基本的にスマート柔軟アーム製作用材料費,成果発表用旅費などに充てることを計画している.
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