2011 Fiscal Year Research-status Report
高感度実用ジャークセンサの開発とジャークフィードバックによる超精密制振法の実現
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23560284
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
辺見 信彦 信州大学, 工学部, 准教授 (80256669)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ジャーク / 加加速度 / 制御 |
Research Abstract |
まず始めに有限要素法解析シミュレーションによりセンサ構造について検討した.つぎに実際にセンサの実機を試作し,実機にした場合の構造的な問題点や課題を確認した.円板状のバイモルフ素子の縁に内部質量体を接地した構造とした.周波数特性を調査し,フィルタを併用することによって数Hzから100Hz程度までのバンド幅を得ることができた.次に1軸テーブル運動に対する特性を調査した.また干渉方向の運動に対する特性を調査し,実機における問題点を洗い出した.その結果,高感度化したことによって多少の干渉計測があることがわかった.さらにハイゲイン計測回路を検討し試作した.センサ筐体内に回路を内蔵し,センサ素子から回路までの配線の物理的距離を短くすることによってトリボ効果による信号の擾乱を抑制した.回路構成の検討においては,電流検出回路のFET入力オペアンプおよび高速アンプの比較検討をし,FET入力の高入力インピーダンスのアンプが効果的であることがわかり,採用することとした.ノイズ除去のためのフィルタの検討とS/N比向上のための検討をし,カットオフ10Hzのローパスフィルタを併用し0.4V/Gという高ゲインが得られた.本研究の圧電式ジャークセンサの応用の一例(軸受診断への応用)を日本機械学会にて口頭発表した. さらに1自由度の運動制御を試み,位置に対する微分先行型のPI-D制御器とジャークの直接フィードバックを並行させた場合について実機による予備実験を試行した.その結果,ジャークフィードバックの効果が、通常のPID制御における微分要素と逆位相のフィードバック情報として働くことを明らかになり、ジャーク量のネガティブフィードバックとポジティブフィードバックの両方が成立可能であること、それぞれの場合の効果とその意味が異なることなどを明らかにでき,今後の検討に対する重要な課題を明らかにすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の目標であったセンサ素子および電子回路の試作が概ね終了した。検討の結果、電子回路のノイズ対策には多少の課題が残っているが、その一方で、試作センサ素子を用いて、24年度以降の検討課題である1自由度制御の検討につながる予備実験調査を展開することができた。その結果、ジャークフィードバックの効果が、通常のPID制御における微分要素と逆位相のフィードバック情報として働くことを明らかになり、ジャーク量のネガティブフィードバックとポジティブフィードバックの両方が成立可能であること、それぞれの場合の効果とその意味が異なることなどを明らかにできた。その結果、制御干渉という新たな課題も明らかとなり、今後の検討に有益な情報を得ることが出来ている。以上のことから「(2)概ね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に実施した予備実験によって,制御干渉という新たな課題も明らかとなった.このことは例えばロボットマニピュレータの変位と力のハイブリッド制御や,クレーン懸架対象物の位置のPTP制御における加速度フィードバックの併用などにも通じることであり,そのような干渉対応制御法を参考にしつつ,ジャークという特殊な物理量に対して考慮せねばならない.1自由度運動機構を製作・改造し,制御系設計ソフトとDSPボードを使用して,制御対象物の振動を抑制しつつ目標変位動作への追従性と,急峻な動作の指標であるジャークを抑制することとの並列かつ同時達成を目指す.特に24年度はジャークフィードバックの本質的意義を重点的に検討し,ジャークのネガティブフィードバックとポジティブフィードバックの両方が効果の詳細を明らかにする.追従性と振動減衰性能とのトレードオフについても最適設計解を検討する. なお,現在のところ研究計画の大きな変更はない.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究はジャークセンサの開発であるため設置特性や運動実験装置の構造振動問題を実験と並行しつつ高頻度で検討する.そのため,FEM解析ソフトの年間契約費用がかかる.また制御法について深く検討するため制御シミュレーション/実行ソフトのメンテナンス費用も必須でかかる.そのため,その他の項目としてそれぞれ予算執行を予定している.測定用の回路および1自由度運動機構の製作と改造が必要であるため,回路および装置製作のための電子部品,材料,工具,加工費用を物品費として予算執行する.これらソフトウェア契約料および電気系・機械系実験装置部位の増設追加工費は,本研究の恒常的な本質に関わる予算措置であるため,当然のことながら次年度以降も同項目で予算が発生する. また,24年度の実験解析ではジャークセンサ信号だけではなく,速度と変位,およびアクチュエータへの入力信号を同時計測して制御系特性の詳細検討をせねばならないため,現有のデータ記録計では対応できないため多チャンネル記録解析装置を設備品として予算執行を予定している. 精密工学会秋季大会(福岡市),超精密位置決めに関する国際会議(台湾),日本機械学会年次大会(金沢市)での成果発表と情報収集のため,旅費および参加費を予算計上する.翌年度以降は成果発表をさらに積極的にすすめることとなる.
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