2012 Fiscal Year Research-status Report
高感度実用ジャークセンサの開発とジャークフィードバックによる超精密制振法の実現
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23560284
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
辺見 信彦 信州大学, 工学部, 准教授 (80256669)
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Keywords | メカトロニクス / センサ |
Research Abstract |
昨年度までに試作したジャークセンサ素子についてノイズ対策とフィルタ処理の適切化を検討した。センサ筐体に内蔵した計測回路を改良し、ノイズの軽減を図った。次にエアスライドテーブルのジャーク量と変位量のフィードバックする場合について検討し、ジャークのフィードバックゲインの調整範囲が狭いこと、ジャーク量を状態変数に取り入れた状態フィードバックの必要性について明らかにした。この成果については 精密工学会にて口頭発表した。次に、テーブルの位置決めとテーブル上に搭載した柔軟構造物の振動抑制の同時制御を検討するための装置の製作に着手した。電磁石の駆動アンプを電流制御型に変更し、電磁力を操作量とすることができる構成に、装置を改良した。テーブルの位置はリニアエンコーダにより計測し、テーブルの位置制御のためのフィードバック信号とした。搭載した柔軟構造体はアルミニウムプレートを板ばねによる平行ばね機構で懸架した構造物とした。プレート上にジャークセンサを搭載する。また、ジャークセンサと同構造で製作した加速度センサ素子を並列搭載し、ジャークとともに加速度をフィードバックする場合の効果を比較検討した。その結果、位置のフィードバックに加えて、ジャーク信号のみフィードバックする場合は柔軟構造体の最大ジャーク量が抑制できるが位置決め動作がやや振動的になること、ジャークと加速度を同時にフィードバック信号として併用することによって柔軟構造体の最大ジャーク量だけでなく位置決め動作の応答にも減衰効果が得られることを明らかにした。従来はジャークセンサがなかったため、ジャーク量を直接計測してフィードバック信号に利用することが行われていなかったが、本検討によりその効果の有効性が明らかになった。また本研究の圧電式ジャークセンサの応用例(軸受診断への応用)についても検討し日本機械学会と位置決めに関する国際会議にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の実施目標であったセンサ筐体への電子回路の内蔵化を実施し、ノイズに対する対策を検討し、センサシステムの構築を終了させた。運動方向の多少の干渉が発生する課題が残っているが、その一方で、25年度の検討課題である柔軟構造体と位置決めテーブルの同時制御について、装置の製作に着手し、それを使って実施した予備実験から、ジャークと加速度の両方の信号を利用することの有効性を示す新しい知見を得ることができた。以上のことから「②概ね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に実施した予備実験によって、位置フィードバックとジャークフィードバックの非干渉化の必要性の問題を超え、状態フィードバック制御による多入力多出力システムの構築の必要性が明らかとなった。このことは例えばハードディスクドライブのシーク制御などで応用されている制御方式などにも通じることであり、そのようなMIMOシステムの制御法を参考にしつつ、ジャークフィードバックの特殊性と効果を明らかにする。そのため1自由度運動機構を柔軟構造機構の試作装置を改造し、制御系設計ソフトとDSPボードを使用して、制御対象物の振動を抑制しつつ目標変位動作への追従性と、急峻な動作の指標であるジャークを抑制することとの並列かつ同時達成を目指す。特に25年度は搭載された柔軟構造体の振動減衰性能とジャークフィードバックの関係について重点的に検討する。なお、現在のところ研究計画の大きな変更はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究はジャークセンサの開発であるため設置特性や運動実験装置の構造振動問題を実験と並行しつつ高頻度で検討する。そのため、FEM解析ソフトの年間契約費用がかかる。また制御法について検討するため制御シミュレーション/実行ソフトのメンテナンス費用も必須でかかる。そのため、その他の項目としてそれぞれ予算執行を予定している。また,測定用の回路および1自由度運動機構の製作と改造が必要であるため、回路および装置改造のための電子部品、材料、工具、加工費用を物品費として予算執行する。なお,24年度に製作した回路の動作状況と研究実施の状況が良好であったことから電子回路の一部の製作と改造が次年度に回すことが可能となった.そのため24年度予算に次年度使用額が発生したので,その分は25年度の電子回路製作・改造のための物品購入費(電子部品)に追加する. さらに25年度は本研究助成の最終年度であるため、これまでの成果を国内外の学術雑誌や学会にて公表するとともに最終取りまとめに向けた情報収集に努める予定である。精密工学会秋季大会(大阪市)、日本機械学会年次大会(岡山市)等での成果発表と情報収集のため、旅費および参加費を予算計上する。
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