2012 Fiscal Year Research-status Report
ポータブルNIRS計測装置を用いた実利用型ブレイン・マシン・インタフェースの構築
Project/Area Number |
23560286
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
伊藤 友孝 静岡大学, 工学部, 准教授 (00283341)
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Keywords | 脳情報 / ロボット / ブレイン・マシン・インタフェース / NIRS / 思考識別 |
Research Abstract |
本研究は,脳機能計測装置を用いて人の脳活動を計測し,その情報を利用して,ロボット等の各種機器の操作や外部との直感的コミュニケーションを可能にする「ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)」を構築することを目的としている.平成24年度は,申請時の計画に従って,ポータブルNIRS計測装置(脳血流計測装置)を用いて被験者の思考や感情を識別する際の精度(正答率)を高めるための手法の改良を行った.特に,実際の生活環境での使用を考慮して,ノイズの影響や計測プローブの付け外しの影響,呼吸や思考状態の変化の影響などを減らすための工夫について検討した. 上期には,昨年度末に効果を確認した「独立成分分析」を取り入れた環境外乱の低減手法についてより詳細に議論し,ブレイン・マシン・インタフェースとしての正しい識別出力の持続性を評価する「安定性」の指標を導入して,性能の向上を行う方策を調査した.下期には,それらの検討結果を踏まえて,思考識別器(思考学習器)の複雑さ(ニューロン数)を課題に合わせて自動的に調整する自己増殖機能付き追加学習法を構築し,追加学習により識別率や安定性が向上する様子を確認した.また,次年度に計画しているロボットを使ったコミュニケーション試験の実施に向けて,ブレイン・マシン・インタフェースからの識別出力に従って小型ヒューマノイドロボットを動作させるシステムを構築し,リアルタイムに計測・識別・動作を行えるよう準備を行った.本年度の成果により,次年度の研究計画が効率的に遂行できると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初の研究計画に基づき,被験者の思考や感情を識別する際のブレイン・マシン・インタフェースとしての精度(正答率)を高めるための手法の改良を実施した.プローブの付け外しや環境条件の違いなど,実生活環境での使用で生じる環境外乱の影響を低減する方法を検討しその効果が確認できたことで,最終年度(25年度)の研究計画を効果的に遂行する準備が整ったと考えている.ここまでの成果は国際会議で発表し,ジャーナル論文も投稿中(査読中)である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度上期は,構築した小型ヒューマノイドを用いたブレイン・マシン・インタフェース実験システムを用いて,今回の研究課題の最終目標である実利用型ブレイン・マシン・インタフェースのコミュニケーション試験とインタラクティブ性試験に向けた手法の改良を実施する.現状では,被験者によってはプローブの付け外しや計測日が変わることによる脳血流変化のばらつきが大きく,追加学習の効果が出るまでの学習用データが増えてしまうなどの課題がある.そのため,それらの課題をクリアするための改良が上期の重点テーマとなる.また,下期にはこれまでの研究成果を統合したデモンストレーションシステムを構築し,一般の被験者を増やしてシステムの総合評価を実施する.また,研究期間を通じて得られた研究成果は,国際会議および学会誌論文にて公表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定に基づいて,小型ヒューマノイドロボットを用いたコミュニケーション試験およびインタラクティブ性試験に用いる実験治具の製作・材料費のほか,試験時の一般被験者の謝金や学会での成果公開の旅費等に用いる予定である.なお,次年度使用額(25年度への繰り越し額)が生じた理由は,24年度末に実施したシステムの性能試験において,手法を改良しながら効果を逐次確認する方法をとったため,今回は一般の被験者に協力を求めず,当該研究に携わった学生が交代で被験者となって実験を行ったためである.25年度は,様々な環境での性能試験を行う目的で一般被験者数を当初よりも増加させる計画であり,繰り越し額はその謝金として効果的に充当する.
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