2012 Fiscal Year Research-status Report
アルカリイオン混入シリコン酸化膜を用いた超小型振動発電素子の開発
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23560287
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
橋口 原 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (70314903)
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Keywords | エレクトレット / MEMS / アルカリイオン / 振動発電 / 静電トランス |
Research Abstract |
本研究開始初年度に、アルカリイオンエレクトレットにより200V以上の帯電を確認した。しかし帯電電圧が大気中では劣化してしまい、実用化のための最大の課題となっていた。今年度は帯電電圧を長期安定化させることを最大の目標におき研究を実施した。真空中での帯電後、そのまま真空中に素子を保管した場合は帯電の劣化はほとんどおこらない。しかし大気中では劣化がおこることから、帯電劣化の主たる原因が大気中の水分にあると考え、単分子撥水膜を導入する実験を行ったところ、3ヶ月以上帯電の劣化がおこらないことが確認できた。文献調査では、20年以上前に撥水膜による表面保護によってエレクトレット膜の帯電劣化が改善されることが記載されており、アルカリイオンエレクトレット膜でも同様の効果が確認できた。 一方、アルカリイオンエレクトレット膜を用いた新規デバイスの開発も実施した。振動発電素子では、櫛歯型振動子をアルカリイオンでエレクトレット化し、外部から微小振動を加え発電させることで、発光ダイオードの間欠点灯を実証した。また櫛歯型素子では、帯電電圧を大きくすると隣り合う櫛歯間に働く大きな静電力により櫛歯電極同士が接触して帯電がうまくいかなくなるという問題があるので、新たに振り子型振動発電素子を開発した。この構造ではバネが柔らかい低い共振周波数を有する振動子でも、200V以上の高い帯電が可能であることを実証できた。 さらに今までにない新機能デバイスとして、静電トランス素子を開発した。等価回路モデルから、理論的に3倍の電圧変換比を有する素子を作製し、理論どおり3倍の昇圧を確認した。本素子は世界初の素子であり、トランスの小型化・軽量化によりシリコンMEMSの新たな用途を拓くものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究2年度終了時までに、アルカリイオンエレクトレット膜の実用化にメドをつけることが目標であったが、帯電電圧の大きさ及び帯電電圧の長期安定性について、計画通りに目標を達成することができた。特に帯電電圧では、250Vまでできることを確認しており、研究開始当初の10Vに対して飛躍的に大きな電圧を得られるようになった。さらにアルカリイオンエレクトレット素子による発光ダイオードの点灯、静電トランス素子など、エレクトレット素子だからこそ実現できる素子の実証に成功した。以上の理由により、当初の計画以上に研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載した目標のうち未達成であるのは、1μW以上を発電する振動発電素子の開発である。今年度はこの目標を達成することに注力する。既に等価回路モデルにより、構造パラメータと発電電力の関係は明らかになっているので、設計の最適化を行い上記目標を達成する。ポイントは電気・機械系のエネルギー変換の効率を表わす力係数の大きさを大きくすることと、振動子の質量を大きくすることにある。この点に留意して素子を作製し、大きな発電電力を有する素子を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(12 results)