2011 Fiscal Year Research-status Report
線形行列不等式応用が拓く高精度2自由度位置決め制御系設計の実用化展開
Project/Area Number |
23560288
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩崎 誠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10232662)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | メカトロニクス |
Research Abstract |
平成23年度には,終端状態制御に基づく2自由度位置決め制御系を前提に,与えられた制御仕様・目的を満足するFF補償入力生成を,FF補償器設計として実施した。従前の終端状態制御によるFF制御入力生成では,所望の位置決め応答時間(応答ステップ数)の指定の他,入力の高周波成分除去を目的とした入力の二次形式評価指標(等式制約条件)の下で最適化問題を扱っていたが,本提案手法では,任意に与える制御仕様を不等式で表現して従来からの入力二次形式指標と連立することで,LMI表現としての制約条件(不等式制約条件)の一般定式化とした。そして,定式化された制約条件下で最適化問題を解くが,その不等式条件下では従前の線形最適化手法を適用できないため,Schur ComplementによるLMI表現に変換し,FF補償器設計論を展開した。本提案手法の実機基礎検証として,申請者研究室所有の加振試験用油圧振動台に搭載したボールねじテーブル位置決め装置を用い,機台振動抑制を考慮した高精度位置決め制御実験を行った。そこでは,テーブル駆動モータで決まる制御入力飽和値と,振動台によって任意に再現されるテーブル機台振動振幅値及びテーブル位置決め精度のそれぞれを,LMIによって制約条件として提案手法に従い定式化した。実験に際しては,振動台をインピーダンス制御することで,テーブル位置決め装置の機台設置床面を任意の剛性で模擬した。この基礎検証では,本研究費の設備備品として購入したDSPコントローラに提案アルゴリズムを実装して実機実験を行った。駆動モータの飽和範囲内で,所望のテーブル位置決め精度と機台振動振幅の満足を両立する位置決めが実現できるかを,同様に設備備品として購入したサーボアナライザによる周波数領域での評価も併せて,提案設計論の有効性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の平成23年度研究計画・方法に従って,制御系設計論及びその基礎検討実験が順調に実施され,実機検証によって制御目標・仕様を満足することで提案手法の有効性を示すことができた。これら一連の設計論と実験検証に対して,以降に示す学術論文や学会口頭発表により,その成果を公表した。さらに,平成24年度の研究計画に挙げられている,ロバスト補償器設計への展開に関しても,制御系CADベースの数値シミュレーションによって,設計論の基礎検討を年度前倒しで実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には,本設計手法の応用検証として,プラントにパラメータ変動が生ずる場合にも所望の位置決め性能を保証する,ロバストFF補償器設計を行う。具体的には,プラント変動を有する2自由度制御系モデル出力を制約条件に加えることで,想定するプラント摂動範囲内で所望の位置決め精度を担保するFF補償器設計を実現する。その実機検証に際しては,研究室現有の恒温恒湿ルーム内で温度設定を可変して,実機パラメータを直接変動させてロバスト位置決め制御性能評価を実施する。更なる応用検証例として,位置決め装置から発生する駆動音レベルを制約条件に組込み,所望の騒音抑制を併せて実現可能な高精度位置決め制御系設計を試みる。そこでは,騒音測定システムによって実際の騒音レベルも評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に位置決め時の騒音抑制を考慮した設計の実機検証を実施する際,可聴領域からアクチュエータスイッチング領域に至る周波数範囲の騒音を所望のダイナミックレンジで測定可能な騒音測定システム,並びに測定装置と制御用DSPとのインターフェイスボードを購入する。本システムにより,人間の騒音感覚に応じたA補正も測定と同時に簡便にでき,実用性の高い騒音抑制評価が可能となる。さらに,機構系に対する有限要素解析ソフトを導入する。
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