2011 Fiscal Year Research-status Report
光融合型マイクロ総合分析システム(μーTAS)構成法の研究
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23560299
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
大久保 俊文 東洋大学, 理工学部, 教授 (60349933)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | TAS / マイクロ流路 / 光導波路 |
Research Abstract |
本研究の狙いは、血球程度の寸法を有するマイクロ流路と同オーダの断面寸法を有する光導波路とを組合せ、血球に照射したレーザの散乱光を検出・分析することで、血液の生理学情報を採取可能な総合分析チップを開発することにある。 前年度までにチップ面内のみにおいて前方・側方散乱光を検出可能な改良型チップ製作を完了し、当該年度はすでに製作済みの人工欠陥付き導波路流路チップと併せ、冶具、導入光ファイバ用位置決めステージおよび上記2種のチップの光散乱モデル化とシミュレーション準備に注力した。改良型チップについては、光の導入と2種の散乱光検出全てを光ファイバで行うこととし、独立した3台の3軸ステージを用いて光ファイバとチップコアとの位置決めを目指した。これには高倍率の顕微鏡2台によるチップとファイバ間の位置確認を要するために、占有体積が小さく移動ストロークがmmオーダの精密ステージを要した。そこで超音波アクチュエータに着目し、比較的大推力品の入手タイミングと相俟って、40mm立法程度の体積をもってサブミクロンの位置決め精度(冶具等実装状態で)が実現できた。このステージを用いて、コア幅12um、コア厚1umの人工欠陥付き導波路流路チップへのレーザ光の導入を試みた。同チップは導波路コアと流路が数umの距離を介してねじれの位置関係に配置されたもので、コアの流路との交叉部直下相当位置に人工欠陥パターンが形成されている。今回、コア径10umのマルチモードファイバを用いて位置決めし、流路交叉部直下のコアを発光(約10um x 10umの範囲)できることを確認した。 改良型チップの光散乱の解析については、FDTD法をベースとした2次元のモデルリングと解析に着手した上でさらに3次元化を進め、光源と細胞、細胞と検出器間の長距離の伝搬については、ビーム伝搬法を組み合わせた複合解析化を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の基本計画においては、(i)導波路とマイクロ流路が直接交叉するタイプのチップと、(ii)人工欠陥を導波路コアの一部に形成し流路とねじれの位置に配置して流路を局部照明するタイプのチップの2本立ての検討を標榜した。前者のチップについては光の導入と、異なる2カ所(2方向)からの散乱光の検出を、全て光ファイバを用いて行うこととし、また後者についても、特に1um x 12umの超扁平コアに光ファイバを用いて直接光を導入し、コアの人工欠陥部を発光させることを具体目標とした。これらの達成に不可欠な超小形・3軸精密ステージを、「超音波リニアアクチュエータ」を用いて構成し、基本動作の確認を行った後、かなり難度の高いと思われた超扁平コア(後者のタイプのチップ)への導入に成功し、人工欠陥部における発光を確認できた。これにより、人工欠陥部を微小光源として検体細胞を照明し、その応答を観るとの後者のタイプの検出法に基づく動作検証に向けて、大いに弾みがついた。前者のタイプのチップについては、当該年度(平成23年度)中の基本動作検証には至っていないが、これはチップの冶具自体が、光の導入・検出部が増えたことで複雑化し、設計や製作に予想外の時間を要したことに加え、当初計画になかった蛍光検出も可能な光学系の追加や高感度センサ(光電子増倍管モジュール)の導入なども併せて行ったことによる。ただし、早晩必須となる重要機能の立ち上げを前倒しで進めた点は、極めて有益であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、導波路とマイクロ流路が直接交叉するタイプのチップについては、平成23年度中に行えなかったオール光ファイバによる「光の導入と散乱光の検出」の基本動作を早期に確認し、疑似検体粒子を用いた光応答実験を最優先課題として進める。また散乱光の実特性の確認に並行して、有限時間差分(FDTD)法、ビーム伝搬(BPM)法に基づく数値解析との比較対応を進め、モデル化へのフィードバックを含め光散乱特性の「本質的な理解」を進める。人工欠陥による流路の局部照明タイプのチップについても、難題と思われた超扁平コアへの光の導入とこれによる人工欠陥領域の発光化が、思いの外の外早期に実証・確認できたことから、流動粒子の人工欠陥照明とその光応答検証を画像採取実験によって進め、検体(細胞)に近接した微小光源としての輝度領域寸法、輝度、輝度分布などの制御性に関わる情報を得る。 これらの両タイプのチップによる実験結果、並びに解析結果に基づく知見の整理・分析を、次年度(平成24年度)の早い段階で行い、a)微細粒子、混成粒子(細胞)の応答分離、b)粒子(細胞)内構造の分析・推定が可能な高空間分解能化、c)蛍光等の超微弱光の高S/N応答化、d)人工欠陥(パターン)による発光域の狭小化と高輝度(強度)化、などの観点から新創案を込めたチップの新規試作を行う。なお、現状で一番性能向上の余地やコストパフォーマンスの良好な方向性としては、コア断面サイズを50~60%程度に小形化した準シングルモード導波路と流路との交叉型チップの試作とこれに基づく実験検討であると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度については、上記記載の通り当年度の研究成果(結果)、および次年度早期に実施の継続検討課題である高分解能(含む高S/N)化、新規(検出)機能化の実験結果や解析等の知見を受けて、できるだけ早期にこれらの具体創案を検証できる新たなチップの試作を行う。なお、これについては、当初の科学研究費申請時点の研究スケジュールの通り、次年度受領(予定)の研究費の大方を試作チップの製作に充当する予定である。
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