2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560302
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
鳥井 昭宏 愛知工業大学, 工学部, 教授 (70267889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道木 加絵 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (00350942)
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Keywords | 圧電アクチュエータ / インチワーム / 精密位置決め / 多自由度 |
Research Abstract |
1.電圧印加によって数ミクロンの変形が得られる圧電素子を用いた超精密位置決め技術が注目されている。圧電素子は超精密微動が可能であるが、その動作は数ミクロン以下の1自由度に限られる。解決策として、複数の圧電素子を組み合わせて多自由度動作を実現し、圧電素子と電磁石を組み合わせたインチワーム機構を用いて大きな変位を得る。 2.圧電素子と電磁石を組み合わせた自走式スチュワートプラットフォームを開発した。インチワームの原理を用いて並進2自由度、回転1自由度の動作を可能にした。パラレルメカニズムの原理を用いてプラットフォーム面の並進3自由度微動、回転3自由度微動を可能にした。しかしプラットフォーム面の動作は圧電素子の変形量程度と微小であった。そこで、プラットフォーム面の並進・回転動作に、インチワームの原理を適用し、プラットフォーム面と圧電素子の相対位置を電磁石によって保持する構造にした。これによりプラットフォーム面の移動範囲に制限がなくなる利点がある。実験により、インチワームの原理による動作を確認した。 4.一方、圧電素子の変形の検出には変位センサが用いられるが、変位センサを用いない変位検出が望まれる場合がある。そこで、変位センサから得られる圧電素子の変形量と、入力電流と入力電圧の関係を明らかにした。その結果から、入力信号を用いた変位量の推定が可能であることを示した。 5.圧電素子を用いて、物体を浮上させることができることを示した。圧電素子の鉛直方向振動を用いて浮上する機構を明らかにした。浮上機構を水平方向に連結し、浮上機構を順番に浮上させ、浮上している浮上機構を順に水平方向に移動させるインチワーム型の移動機構を開発した。水平方向の変位には同じく圧電素子を用いたため、数マイクロメートルの微小動作が可能となった。移動する部分は浮上しているため、摺動摩擦の無い移動が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.平成24年度までに、多自由度位置決め機構を製作し、自走式スチュワートプラットフォーム機構として並進動作・回転動作を行った。そのうえで、プラットフォーム面の移動にインチワームの原理を適用し、プラットフォーム面の平面移動と回転移動(角度変位)を実現することができた。電磁石のインオフのタイミングと圧電素子の伸縮のタイミングを制御することで、インチワーム動作の基本性能を明らかにできた。 2.プラットフォーム面の姿勢変化による重力の影響の評価を行う予定であったが、現在のところ重力の影響よりも、摩擦の影響による繰り返し誤差の影響が大きいことが明らかになった。プラットフォーム面のPoint to Point制御とContinuous Path制御を行う予定であったが、位置決め性能に摩擦の影響が大きいことが明らかになった。 3.そこで摩擦の影響を受けない移動原理を提案し、その可能性を明らかにできた。対向する平面の間隙が周期的に変化するとき、その間隙には正の圧力が発生し、非接触状態をつくることができる(スクイーズ膜効果)。この原理を用いて非接触状態を作り出し、インチワーム機構を非接触状態にして移動させる。これまでに、スクイーズ膜効果による非接触状態を用いたインチワームを開発し、その基本的な動作を明らかにできた。 4.さらに、非接触状態をセンサレスで推定するための推定法を提案し、圧電素子への入力電圧と入力電流から負荷の状態を推定し、負荷の状態から接触・非接触を判別する制御アルゴリズムを明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.振動により生じる非接触状態を用いたインチワームの特性を明らかにする。長時間駆動による直進性や、インチワームとしてのステップごとの変位のばらつきや、動作速度を明らかにする。Point to Point制御やContinuous Path制御の基礎となる直進性能やステップ変位のばらつきを明らかにする。 2.圧電素子が発生する非接触状態の推定法を明らかにする。変位センサを用いることなく非接触状態を検出することができれば、システムの簡素化が可能になるだけでなく、非接触状態を検出したうえでの制御信号の生成が可能になる。 3.一方、従来の電磁石を用いたインチワームの動作特性の改善を行う。電磁石を用いたインチワームは、電磁石による位置保持が重要な役割を果たす。電磁力を改善するために、これまでは直流電磁石を用いてきたが、交流電磁石の適用を検討する。交流電磁石によって磁力が改善できれば、摩擦による動作のばらつきを改善できる可能性がある。 4.これまでに開発した6自由度インチワームは、パラレルメカニズムの原理と、インチワームの原理を用いている。前者は6自由度微動を可能にした。後者は原理的に移動範囲に制約のない広い動作範囲を実現した。鉛直方向変位を除く5自由度動作はインチワームの原理に基づき動作範囲に制約はないが、鉛直方向の変位は圧電アクチュエータの伸縮量に制限される。そこで鉛直方向のインチワーム動作を可能にする構造を採用する。具体的には、電磁石の接触面を球面状に加工し、圧電素子の組み合わせ角度を変更し、鉛直方向に移動するインチワームを実現する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.前年度までに、圧電素子(容量性負荷)駆動用の電源ならびに顕微鏡を用いた拡大観察用の環境が整った。精密計測用の変位計も整った。 2.非接触状態を推定するための制御回路の開発に関しては、これまでに充実させた電気回路部品などで対応可能である。 3.本研究で開発するインチワームは、圧電素子と電磁石を用いたものである。そのため、消耗品としての圧電素子および電磁石用の磁性体コアを購入する。 4.電磁石の再設計などを行い、電磁力の評価を行う必要がある。誘導性の負荷である電磁石の駆動を行うための電源を導入予定である。 5.次年度は研究の最終年度である。これまでの研究成果をまとめて発表するための、学会参加費・旅費が必要である。
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