2013 Fiscal Year Research-status Report
反磁性グラファイト板の形状設計による高効率非接触駆動に関する基礎研究
Project/Area Number |
23560307
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 晴彦 福島工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30201578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 淳 福島工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70193472)
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Keywords | マイクロ・メカトロニクス |
Research Abstract |
反磁性グラファイト(PG:Pyrolytic Graphite)は、そのPG板試料の形状(特に端部形状)と周辺の磁場(磁場勾配)に依存した反磁性磁気反発力が誘導され、PG板試料は室温で非接触に安定な磁気支持と、非接触駆動・変位を実現する。この反磁性磁気反発力は、静磁界中でも起こる現象であることから、これまでに我々独自の準静的な観測方法によって、PG板試料に誘導される反磁性磁気反発力を計測してきた。このような研究背景を経て、本申請研究では、PG板試料端部を特殊な形状に加工すること、また磁場環境との相互関係により、PG板試料端部に作用する反磁性磁気反発力が、消失・減少・増倍していくことの特性観測を、本申請研究の初期実験により観測している。 当初計画では、平成25年度までに、以下の5項目の実験計測を予定した。(A)「PG板試料端部形状に依存した反磁性磁気反発力精密計測」、(B)「PG板試料の厚み方向の形状加工による反磁性磁気反発力の特性観測」、(C)「永久磁石軌道上の異なる磁場勾配に依存したPG板試料の反磁性磁気反発力の観測」、(D)「連続に配置した永久磁石小片によって形成される磁場における、端部形状の異なるPG板試料、および連結するPG板試料に作用する反磁性磁気反発力の観測」、(E)「同心円状永久磁石上に連続配置した永久磁石小片によって形成される磁場における、弧状PG板試料の非接触駆動の観測」。途中、東日本大震災による実験設備環境、ならびに研究代表者への影響などがあったが、25年度末の段階で(B)、(C)、(D)の実施までに至った。 平成25年度の研究実績:上記(C)、(D)の実験を主に進め、24年度に計画していた「長尺ハイブリッド型永久磁石軌道の設計・製作」を実施した。また(C)、(D)に関する研究成果の一部を、電気学会にて口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年3月11日の東日本大震災、同年4月11日の巨大余震により、既設計測機器に破損と不具合を生じ、初年度は、これらの機器の復旧・調整に相当の時間を要した。また翌平成24年度は「PG板試料の厚み方向の形状加工による反磁性磁気反発力の特性観測」を継続観測し、PG板試料の厚み方向に加工した試料による、高効率な非接触駆動の可能性を示唆するデータが得られるようになってきた。しかし、津波による被災地に居住する研究代表者が、平成24年後半より体調を崩してしまい、研究遂行の指示、および、それに必要な時間を確保できなくなり、計画していたPG板試料の特殊加工、長尺永久磁石の設計・製作が取りかかれず、24年度内の実施を見送らざるを得ない状況であった。 平成25年度は、長尺ハイブリッド型永久磁石軌道(400mm)を設計・製作に着手し、25年度後半に、磁場シミュレーションと同等な磁場特性を持つ長尺永久磁石軌道を入手した。しかし、長尺永久磁石軌道の重量が増加することから、従来の計測システムを改良する必要があり、自動送り機能のある計測ステージを構築している。 その一方で、「厚み方向に形状加工したPG板試料」による「磁場勾配条件に依存する反磁性磁気反発力の計測(研究計画C)」および、「連続に配置した永久磁石小片によって形成された磁場における、端部形状の異なるPG板試料、および連結するPG板試料に作用する反磁性磁気反発力の観測(研究計画D)」を継続実施した。25年度に実施した計測実験により「高効率に非接触駆動させるための効果的なレイアウト」に対する有効なデータを得るに至り、その成果の一部を国内学会で発表した。しかし、その特性を応用して、「同心円状永久磁石上に連続配置した永久磁石小片によって形成される磁場における、弧状PG板試料の非接触駆動の観測(研究計画E)」までには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度後半に製作した長尺ハイブリッド型永久磁石軌道を用いて、「連続に配置した永久磁石小片によって形成された磁場における、厚み方向に端部形状の異なるPG板試料に作用する反磁性磁気反発力」の詳細な計測を、平成26年度初期に行う。また同時に、高効率に非接触駆動するモデルを、計測データと磁場解析によって設計し、その初期実証実験を長尺永久磁石軌道と同心円形状のHalbach(ハルバッハ)配列永久磁石によって行う。 これまでの研究データの一部をまとめ、2014年8月にリンツ・オーストリアで開催される第14回磁気軸受国際会議(LSMB14:International Symposium on Magnetic Bearings)にエントリー済みであり、投稿論文を作成中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の震災による測定機器の破損と不具合に加え、津波被災地に居住する研究代表者が体調を崩し、平成24年度後半において研究の一部が滞った状態にあった。平成25年度は、前年度に着手できなかった「長尺のハイブリッド型永久磁石軌道(400mm)」の設計・製作を進め、特性調整などに時間を要し、1月末にようやく入手となった。この新たな長尺永久磁石軌道を用いることで、「高効率なPG板試料を用いた非接触駆動メカニズム」の応用へつなげるための磁気特性計測が可能となるが、計測システムの調整と計測データ検討には、約8ヶ月間が必要となるため、次年度への延長を計画した。 「長尺のハイブリッド型永久磁石軌道(400mm)」を入手したことから、PG板の連続駆動に関する計測を進める。これらの計測データをもとに、「PG板試料形状による高効率非接触駆動」の技術要素を検討し、本研究の延長にある「同心円状Halbach永久磁石上でのPG板試料の高効率駆動」への展開を進めたい。 なお、26年8月には、オーストリア・リンツで開催される「磁気軸受国際会議(ISMB14)」に参加予定であるので、その国外発表経費、および国内発表の経費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)