2012 Fiscal Year Research-status Report
超分散意思決定要素を含む大規模電力システムの安定性理論の構築
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23560310
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
斎藤 浩海 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10202079)
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Keywords | 電力システム / 需要応答 / 安定性 / 電圧制御 / 遅れ時間 / シミュレータ / 蓄電池 / 価格弾力性 |
Research Abstract |
本研究では、電力消費者を電力システムの新たな制御対象要素とみたときの電力システム安定性理論を構築することを目的として、電力消費者の需要応答のモデル化を試みている。 平成24年度は、23年度に実施したアンケート調査の結果から、電気料金の変更による電力消費の変化の仕方、すなわち電力の価格弾力性を推定した。推定の結果、電力量単価が2倍になると消費電力量が約10%減少し、この値が過去の調査結果と大きくかけ離れていないことが分かった。なお、この電力価格弾力性の推定結果を平成25年3月に名古屋大学で開催された電気学会全国大会で発表した。 また今年度は、電力消費者の需要応答特性を計測するための簡易電力シミュレータを開発した。シミュレータは配電系統の電圧変動を模擬する計算モジュールと、電力消費者と配電系統計算モジュールの間のマンマシンインターフェース、および電力消費者の需要応答を記録するデータベースから構成されている。年度内に開発したシミュレータを用いて需要応答の計測を行う予定であったが、シミュレータの製作に手間取り計測は行えなかった。 需要応答と強い相互作用を持つ電力システム動的特性の同定に関する研究項目については、需要側に導入された蓄電池群の充放電による配電電圧制御の安定性を検討した。典型的な6.6kV配電系統モデルを用いた時間領域シミュレーションと固有値解析を行った結果、蓄電池制御系の通信時間と制御時間遅れ時間が長くなると、配電電圧が振動し、最悪の場合は発散振動する可能性があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電力消費者の意思決定メカニズムの調査研究については、平成23年度に実施したアンケート調査の結果から電力の価格弾力性を推定し、その推定結果を学会で発表したので、ほぼ当初の予定通りに進んでいる。需要応答のモデル化については、需要応答を計測するための簡易電力シミュレータを開発したので、平成25年度はじめに多数の被験者を対象に計測を実施すれば、需要応答時間などの特性を同定・モデル化できる段階にきている。需要応答と強い相互作用を持つ電力システム動特性の研究については、需要側蓄電池による配電電圧制御での時間遅れが、秒オーダーで電圧を不安定にする可能性があることを明らかにできたので、この研究についても予定通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
アンケート調査から得られた電力の価格弾力性と簡易電力シミュレータから同定される動的な需要応答特性を統合して数学モデルを作成する。また、秒・分・時間オーダーの現象を模擬できるマルチタイムスケール電力システムモデルを作成し、需要応答モデルと一体化して数値シミュレーションと理論解析を行い、現実の電力システムに近い状況で需要応答に起因する不安定現象を発見する。 また今年度は最終年度であるので、本研究の成果をまとめた報告書を作成するとともに、国際会議での発表や学術誌への論文投稿を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(20 results)