2011 Fiscal Year Research-status Report
対向Φ型コロナ放電電極対を用いる高密度正負イオン群の生成と応用
Project/Area Number |
23560311
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
杉本 俊之 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (10282237)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | コロナ放電 / イオナイザー / 高速・高密度除電 / 対向Φ型電極 |
Research Abstract |
高密度正負イオン群を形成する方法として、対向Φ型電極系を用いる方法について実験的に検討した。Φ型電極系とは、接地電極の開口部を高電圧針電極が貫通する電極系であり、正極性針電極を持つΦ型電極と、負極性針電極を持つΦ型電極を対向させる構造を持つ。単純に正極性針電極と負極性針電極を対向させる電極(針対針電極)と対向Φ型電極を試作し、正負のコロナ放電を同時に起こして気流で正負イオンを運んだときの除電速度を測定した。対向Φ型電極系の方が、除電速度が50%以上速いことを確認した。これは、針電極間の電界が弱められ、正負イオンの再結合が抑制されること、また、接地電極が近くに存在することで同じ電圧でも生成イオン量が増大することが原因と考えられる。 除電速度をさらに短縮する方法として、針電極の数を増やす方法と、接地金網電極を用いる方法について検討した。針電極の本数を増やすほど、除電時間は短縮されたが、増やした本数と除電時間との間に比例関係は見られず、除電時間の短縮には限界があった。一方、生成された正負イオン空間に接地金網を設け、その開口部から正負イオンを噴出させ、近接させた除電対象物を除電する方法(近接設置法)は、接地金網と除電対象物との間に形成される静電界を利用することができるため、除電時間が大幅に短縮できることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、針電極の本数を増やすことで単純に高密度化が測れると考えていたが、正負電極間に形成できる空間電荷密度には限界があることが分かり、除電に利用するためにはさらに工夫が必要となった。そこで、正負イオン空間を囲む容器の一部を接地金網電極とし、この金網部分を除電対象物に近づけて除電する近接設置式を検討したところ、良好な結果が得られた。これは、生成された正負イオン群が再結合する前に電荷密度が高いまま除電に使用されることと、接地金網電極と帯電物との間の静電界でイオンが金網の開口部から引き出されることが原因と考えられる。 接地金網と帯電物との間の静電界を使うメリットはもう一つある。当初はイオン生成時に正負のバランスを取ることで、除電時のイオンバランスを図ろうと考えていたが、近接設置法では、帯電体の電位がゼロになると、接地金網と帯電物との間の静電界が働かなくなるため、余分な除電イオンの供給が抑制される。結果として、イオンバランスが向上し、除電対象物の電位を小さくできる効果があることが判明した。最終目標とするミリ秒、ミリボルト高速除電の可能性が見出されたため、順調に進んでいると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
従来のイオナイザー評価法は、1000Vの電圧が100Vまで減衰する時間を測定するものである。しかし、本研究で開発する高速・高密度除電法では、電極電圧、気流流量、接地金網開口径、接地距離などの多くの設定パラメータが存在し、それらの中で最適パラメータを探求する上では、従来の減衰時間だけの評価では、不十分である。帯電物を除電するという系において、イオナイザーの性能を表現する等価回路を構築し、回路上での最適パラメータ設計が必要となる。そこで、近接設置法の除電モデルを構築し、最適パラメータ設計に必要な等価回路の解析解を導くとともに、回路変数の測定法について検討する。 具体的には、帯電電圧を除電時間で除した「簡易除電電流」という概念を導入し、帯電電圧と簡易除電電流との相関関係から、そのイオナイザーの性能を表わす回路定数、即ち、コンダクタンスを算出する。上記の各パラメータを変化させたときのコンダクタンスを実測することによって、高速・高密度除電に必要な設定パラメータを明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
測定に必要な機器は既に所有しているので、実験の遂行に必要な消耗品と情報収集に必要な旅費が主な用途となる。
|