2012 Fiscal Year Research-status Report
超短パルス高電界がん治療法のための高強度バーストパルス列電磁波の生成と効果の研究
Project/Area Number |
23560312
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
南谷 靖史 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (10323172)
|
Keywords | がん治療 / 高周波バーストパルス / 非線形伝送線路 / 磁気共鳴 / 分散 / アポトーシス / がん細胞 / パルス電磁波 |
Research Abstract |
本研究課題ではがん細胞にナノ秒の高電界を印加して,細胞にアポトーシスを再生させ,がんを治療する超短パルス高電界によるがん治療法におけるパルス高電界印加方法を確立するため,患部に高電界パルスを印加できる高強度高周波パルス電磁波放射装置の研究,細胞へのパルス電磁波による高電界印加実験を行うことを目的としている。 24年度では周波数を200MHzまで上げて、さらにパルス列を500nsの間、連続して出力できるようにすることを目的としていた。23年度と同様,フェライトコアを用いた非線形伝送線路によるパルス発生方法とSOSダイオードと可飽和リアクトルを用いた方法の2つ検討した。非線形伝送線路によるパルス発生方法では磁気歳差運動を用いるものと新たに分散を用いるものの2つの方法を検討した。磁気歳差運動を用いるものは装置の理論的検討と試作装置の設計を部品の発注を行った。製作は25年度に行う。分散を用いるものは理論的検討と実証実験を終え,パルス列が発生可能であることを確認した。SOSダイオードを用いた方式では磁気スイッチのフェライトコア材料を見直し,23年度の2倍の電圧出力が得られるようになった。 200MHz,30kV/cm単極性パルス高電界と電磁波による大腸菌,真菌,がん細胞の挙動実験は,パルス列数は少ないが,250MHzまでの,100kV/cmの両極性パルスで子宮頸がん細胞であるHeLa細胞について検証した。パルス列が3~4程度と少なかったためか25MHz以上では細胞死は確認できなかったが250MHzの周波数で細胞の形態変化は観測され,PCR解析でアポトーシスの発現の有無を検出中である。 がん細胞のモデル生物である真菌の出芽酵母については70MHz,200kV/cmのパルス電界によってアポトーシス現象の確認をAnnexin-Vでも行い,アポトーシス現象が確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度では周波数を200MHzまで上げて、さらにパルス列を500nsの間、連続して出力できるようにすることを目的としていた。これについては,24年度は非線形伝送線路歳差運動方式の装置試作の設計,部品発注までを行ったので,25年度に動作確認を行う。SOS方式ではとびとびのクラスタ状ではあるが既に2000nsの連続したパルス列が得られており24年度では出力電圧の向上が図れた。高強度高周波パルス電磁波放射装置のバーストパルス発生方法において2つの方法それぞれで目標値を上回る成果を得られた項目があった。 細胞への影響についてはパルス列数の多いパルスでは実験を行えていないが250MHzの周波数の両極性パルスで実験を行い,その効果を検証するところまで実施できている。その結果アポトーシスの兆候の形態変化の発現を確認し,アポトーシスを得られる条件の装置へのフィードバックを可能にした。 電磁波発生の確認は,装置の製作が25年度と変更になったため25年度に行う。電極間で直接高電界パルス列を印加した場合と,高強度電磁波パルス列で電界を印加した場合に細胞の挙動に違いがあるかどうかについては25年度実施する。 以上のように進捗が遅れている項目もあるが予定以上に進んでいる項目もあり総合的にはおおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
25年度では24年度に設計,手配した歳差運動式の非線形伝送線路の動作確認および200MHzの単一周波数で,±10kVの両極性極性高電圧パルス列を得られるよう改良を行う。分散式の非線形伝送線路を用いた装置は500nsの間,連続して発生する装置の試作を行う,SOSダイオードを用いた装置ではバーストパルス列の大きさを±10kVとなるよう回路構成を見直す。その後これらの方式で電磁波発生を確認し,集束点での電界強度を測定する。 そして200MHz,100kV/cmまでの電界がモデル細胞である出芽酵母,がん細胞に与える影響について観測する。この影響については,電極間で直接高電界パルス列を印加した場合と,高強度電磁波パルス列で電界を印加した場合それぞれで実験を行い,細胞の挙動に違いがあるかどうかに着目し調査を行う。 また研究動向調査をアメリカで開かれるIEEE Pulsed Power Conferenceにて行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度はさらに分散式非線形伝送線路でバーストパルス列を発生する方式を追加して開発したため,3つの方式の予算が必要となり当初購入予定であったインキュベータの予算をこれに割り当てた。25年度に3つの方式の統合を図る予定であるが,それまでも3つの方式の開発が続くため,25年度の予算に加え24年度分のインキュベータの予算の一部を繰り越し,充てることとした。25年度の予算はこれらの3つのバーストパルス列電磁波発生装置を引き続き開発した後,統合を図るが,大目の予算が必要になるため超低温フリーザの予算を一部使い40万ほど割り当てる。 バーストパルス列によるパルス電界がモデル細胞である出芽酵母,がん細胞に与える影響についての観測では培地,ピペット,キュベット等の多くの消耗品が必要なため40万ほど割り当てる。またこの実験に必要な超低温フリーザは他予算との合算で購入する。これに20万ほど割り当てる予定とする。 研究動向調査をアメリカで開かれるIEEE Pulsed Power Conferenceにて行うためその旅費として30万ほど割り当てる。 他の消耗品,その他,研究発表旅費に15万ほど割り当てる。
|