2011 Fiscal Year Research-status Report
複合励起形沿面放電発光デバイスの可能性に関する研究
Project/Area Number |
23560336
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
上野 秀樹 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (90301431)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 沿面放電 / 希ガス / ディスプレイ / 電力工学 / 電気機器工学 |
Research Abstract |
本研究では,沿面放電の制御技術を検討し,照明やディスプレーなどの面発光デバイスへの応用を目指し,応用可能な輝度を有する均一な面状沿面放電を安定に発生させることを目標としている。 ガス誘電体としてネオン(Ne)とキセノン(Xe)混合ガスを用いて行ってきており,沿面放電の発生時においては,キセノンの混合により,比較的強い紫外域の発光スペクトルを得ている。また,発光のスペクトル強度は沿面放電によって流れる放電電流に関係していることが考えられる。平成23年度においては,まずより効率的な紫外発光の条件を探索するとともに得られた紫外光の増強について検討を行った。 放電電流や発光の状態から,ガスの電離過程のみならず,その電離気体と固体誘電体との相互作用(固体誘電体表面における電荷のトラップや電荷蓄積,光学的特性等)が関係している。したがって,効率的な紫外発光と封じ込め効果を実現するには,電離気体と固体誘電体との相互作用の実体の解明を図り,面状沿面放電の発生・進展メカニズムおよび放電発光メカニズムを正確に把握することが必要と考え,実験的手法により放電電流等の電気的計測,発光計測とその対応を,従来より時間分解を高めて行った。その結果,一般に知られているガス中放電とは異なり,沿面放電の進展においては,正極性沿面ストリーマのに比べて,負極性沿面ストリーマのの方が,その進展が速いことが明らかになった。このことは,負極性ストリーマの進展においては,ストリーマ先端の電子と固体誘電体間の相互作用により,電子が供給されやすい状況になっており,紫外光励起および電子励起の複合励起の可能性を示唆していると考えられる。 さらに,固体誘電体間の制限された空間内での沿面放電についても検討し,放電開始電圧や放電進展過程について検討を行い,紫外線励起や固体誘電体との相互作用に関する現象の解明を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
効率的な紫外発光と封じ込め効果を実現するには,電離気体と固体誘電体との相互作用の実体の解明を図り,面状沿面放電の発生・進展メカニズムおよび放電発光メカニズムを正確に把握することが重要と考え,実験的手法により放電電流等の電気的計測,発光計測とその対応を,従来より時間分解を高めて行った。その結果,一般に知られているガス中放電とは異なり,沿面放電の進展においては,正極性沿面ストリーマのに比べて,負極性沿面ストリーマのの方が,その進展が速いことが実験的に明らかになった。 このことは,負極性ストリーマの進展においては,ストリーマ先端の電子と固体誘電体間の相互作用により,電子が供給されやすい状況になっており,効果的な紫外光励起および電子励起の可能性を示唆している。このことは,本年度目的とした,沿面放電による効率的な紫外線励起や封じ込め効果についての検討に関して,順調な実験の遂行により,おおむね目標とした成果が得られているものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の内容に並行して,当該年度では,面状沿面放電デバイスとしての高輝度を実現するための第2の方策について検討を行う。すなわち,かかる年度では,より強い沿面放電による発光を実現するための手法として,紫外線のみならず,沿面放電によって生じる高エネルギーを持つ電子を励起源とする可能性について検討を行う。 特に,かかる年度では,この高エネルギー電子を励起源として活用する可能性について検討を行う。先ず本研究との対象である大気圧以下のNeやXeおよびNe/Xe混合ガスにおいて,具体的,定量的に臨界電界や平均自由行程について理論面から検討するとともに,必要に応じて沿面放電電圧などの電気的測定や光学的測定による実験的検討を行い,電子線励起の可能性について調べる。さらに,その結果を基に,適切な電子線励起蛍光材料との調査,選択を進め,電子線励起発光の実現に向けた検討を進める。これにより,沿面放電の直接可視光,紫外線励起,電子線励起による複合励起形沿面放電発光デバイスの実現に向けた基礎技術の開発を進めるための知見を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は本研究の中間年でもあり,実験的,理論的検討を精力的に実施する計画である。本研究の実施に当たり重要である高時間分解能の波形観測装置は,平成23年度に導入済みである。したがって,平成24年度は研究を精力的に実施するのに当たり不可欠なネオン,キセノンなど希ガス,電極用金属等の消耗品の購入や電極の加工等の物品費,調査研究,成果発表のための学会参加旅費を主として研究費として計上しており,計画通り使用する予定である。特に,国際学会(International Conference on Gas Discharges and Their Applications,2012年9月中国・北京にて開催予定)で本研究の成果の一部を発表する予定であり,そのための旅費を計上,使用予定である。 また,平成23年度は研究計画どおりに実施し,順調に成果が得られている。平成23年度の研究費の収支の際は,当初経費に計上していた調査研究旅費の使用がなかったためである。なお,調査研究は学内の経常的な研究費で実施しており,平成23年度については研究計画どおりに実施されている。生じた際の分については,平成24年度は本研究の中間年であり,実験的,理論的検討を精力的に実施するするに当たり必要な物品購入,調査研究・研究発表の旅費,実験の補助者の人件費として有効に使用する。
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