2012 Fiscal Year Research-status Report
複合励起形沿面放電発光デバイスの可能性に関する研究
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23560336
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
上野 秀樹 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90301431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 翔 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90633123)
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Keywords | 沿面放電 / 希ガス / ディスプレイ / 電力工学 / 電気機器工学 |
Research Abstract |
本研究では,沿面放電の制御技術を検討し,照明やディスプレーなど面発光デバイスへの応用を目指し,応用可能な輝度を有する均一な面状沿面放電を安定に発生させることを目標としている。ガス誘電体としてネオン(Ne)とキセノン(Xe)混合ガスを用いて行ってきており,沿面放電の発生時においては,Xeの混合により,比較的強い紫外域の発光スペクトルを得ている。また,発光のスペクトル強度は沿面放電によって流れる放電電流に関係していることが考えられる。平成24年度においては,前年度に得られた結果をもとに検討を進めた。 放電電流や発光の状態から,ガスの電離過程のみならず,その電離気体と固体誘電体との相互作用が関係しており,昨年度の研究から,この詳細解明が,面状沿面放電の発生・進展メカニズムおよび放電発光メカニズムを正確に把握することが必要あることが示された。本年度は,沿面放電進展過程について,実験的手法により放電電流等の電気的計測,発光計測とその対応を,昨年よりさらに詳細に検討を行った。その結果,沿面放電の進展においては,負極性沿面ストリーマの進展速度が,正極性沿面ストリーマの進展速度に比べて,大きくなる条件が,実験的により明確に示された。また,これは負極性ストリーマの進展において,固体誘電体から,電子が供給されることで説明できる。 さらに,XeやNeガス中の電子の平均自由行程,先端電界などのパラメータについて理論的考察を実施し,これらのガス中での沿面ストリーマ先端の電子が,固体誘電体からの電子放出を引き起こすことが可能なレベルのエネルギーを持つ可能性も示唆された。 また,印加電圧パラメータ(パルス幅,波高値,休止時間)によって,放電発光波長領域を選択的に取り出すことができる可能性も示唆された。 以上の実験的,理論的検討より,紫外光励起および電子励起の複合励起の可能性が示唆されたとと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
効率的な紫外発光と封じ込め効果を実現するには,電離気体と固体誘電体との相互作用の実体の解明を図り,面状沿面放電の発生・進展メカニズムおよび放電発光メカニズムを正確に把握することが重要と考え,実験的手法により放電電流等の電気的計測,発光計測 とその対応を,従来より時間分解を高めて行った。その結果,一般に知られているガス中放電とは異なり,沿面放電の進展においては,正極性沿面ストリーマのに比べて,負極性沿面ストリーマのの方が,その進展が速いことが実験的に明らかになった。 これは,負極性ストリーマ進展過程において,ストリーマ先端の比較的高いエネルギーを持つ電子の固体誘電体に衝突することで,ストリーマ先端近傍に電子供給が行われることで,効果的な紫外光励起および電子励起が生じていることで説明できる。 また,沿面ストリーマ先端部の電子が持つエネルギーについて,検討した結果からも,電子線励起の可能性も示唆された。このことは,本年度目的とした,沿面放電による効率的な紫外線励起や封じ込め効果についての検討に関して,順調に実験的,理論的検討の遂行されたと考え,おおむね目標とした成果が得られているものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度および平成24年度の検討は,必ず完了するものではなく,特に電子線励起の可能性にに関する検討は,今後の研究の展開において基礎的かつ重要のものであり時間をかけて行う必要があるゆえに,平成25年度においても,十分な検討を続ける。 さらに,沿面放電はそのメカニズムから考えて,電極から固体誘電体への放電進展,および固体誘電体上での放電進展は固体誘電体の物性,固体誘電体上の蓄積電荷ならびに固体誘電体に隣接する空間における空間電荷の状態の影響を大きく受ける。したがって,蓄積電荷や空間電荷の影響により沿面放電の発生および進展状況は大きく変化する。これは,沿面放電による紫外線の発生や高エネルギー電子の生成とも密接な関連がある。それゆえ,次なるステップとしてこの蓄積電荷や空間電荷の問題に対して,交流電圧,繰返しパルス電圧などの基本電圧波形による沿面放電特性,任意の逆極性電圧印加時の沿面放電特性を調べ,蓄積電荷や空間電荷の影響を明らかにする。これは高エネルギー電子による励起において得に重要であるが,沿面放電による紫外線発光との関連も深く,電子線励起が十分得られず,紫外線励起が主体となる場合において,上記問題について知見を得ることは,効率的な紫外領域の発光とそれによる励起にも重要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は本研究の最終年でもあり,実験的,理論的検討を精力的に実施するとともに,得られた結果を総括する計画である。本研究の実施に当たり重要である高時間分解能の波形観測装置は,平成23年度に導入済みである。したがって,平成24年度は研究を精力的に実施するのに当たり不可欠な希ガス,電極用金属等の消耗品の購入や電極の加工等の物品費,成果発表のための学会発表や論文投稿を積極的に行うための費用を計上しており,計画通り使用する予定である。 また,平成23~24年度は研究計画どおりに実施し,順調に成果が得られている。平成24年度までの研究費の収支の差異はほとんどなく,計画的に使用されている。実感生じた残額については,平成25年度は本研究の最終年であり,実験的,理論的検討を精力的に実施するするに当たり必要な物品購入,研究発表の旅費等にて有効に使用する。
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